7 王室の仕事(1)
徹底的に、私の頭を王女仕様にしてしまった。
あの人たち。
私は「嫌」だと言ったのに、姫感が日に日に増えていった。
条約のサインの仕方、ゾルランのルール、外交、ゾルランの勉強。
強制的に叩き込まれていく。
私は・・・数学をしたいだけなんですけど・・・!?
「アマノ王女、日に日に上手くなっていきますね!理解が早いいい!!」
私のいわゆる、家庭教師担当は、フイザー。メイクしかできないのに、軽々と引き受けたらしい。
フイザーはパチパチと、一人拍手をする。
私は、そんな行動に、いろんな人へのイライラも含め、フイザーを睨みつける。
「ひいいいい!怖ーーーいっ!睨めつけないでくださああいっ!!」
特に睨めつけることしかしていないのに、フイザーはぶりっ子ぽく怖がる。
「はああ、何よ、イライラしてるの。」
「ドン!!」
「??」
フイザーは机を大きくたたいた。しかもなぜか生意気そうな表情を浮かべる。
「私にイライラを発散しないでください!ほら、勉強しろ!」
「はあああああああああ・・・?!」
なぜかここの人は妙に命令主張の気がする。
ひどすぎると思う。誘拐された上に命令は。
「アマノ~?」
聞きなれた声。だとしても一生、「父上」とは呼ばない。絶対に。
「王様っ!なんでここに来たんですか?邪魔しないでって言ったじゃないですかあっ?!」
「いやいや。」
王様は手を横にふる。
「見に来ただけだ、ちゃんとはかどっているか。」
「はいいいっ?そう言って一時間前にも来たじゃないですか?!
それに、アマノ王女様は勉強がすごく・・すごく!できるんですから、心配しないでください!!」
フイザーは無理やり、図書館からガシスを引き上げる。
王様は「うん?」となんだか気がかりなことがあるらしく、フイザーの押す力を必死に止めた。
「でも、おかしいぞ。アマノは勉強嫌いだったぞ?!」
それは私がアマノじゃないから。
本人は逃げています。
「どうでもいいです!とにかく出てって!!」
「おい、それは王様に対する態度かあ?!」
なんでだろう、この二人は喧嘩が起きやすい。
「喧嘩するほど仲がいい」のだろうか?というか、そう思いたい。
「もういいです。」
「「え?」」
私の声に二人の声がシンクロ。
立ち上がって、片付けを始める。
「え、待ってください、アマノ王女っ!」
フイザーに声をかけられたが、無言で図書館を去る。
もうゾルランの、異世界の勉強はごめんだ。
部屋へと向かった。
「アマノ・・・アマノオオオッ!!」
「えっ?!」
いつの間にか私は寝ていたらしく、その上、朝になっていた。
それだけじゃない。
私の名前・・・ではない名前を呼んでいたのは・・・・メアイー、
ではなく、ガシスだった。
「王様ああっ?!なんでいるんですか!メアイに伝言してくださいよお!!」
慌てて、ベットの布団(?)を引っ張り込み、体を隠す。
なんだか自分のプライベートに踏み込まれた気がして・・・気持ち悪い・・・。
「いや、そんなのは関係ない!」
いやいや関係あります!!プライバシーがない!
「さあ行こう、村人の悩みを聞き解決するんだ!」
ガシスに手招きされた。
でも・・・私が行くわけないやろおおおおおお!!
「嫌です。」
つい、手招きで行きそうになった、ガシスと自分をしっかりと止めた。
「なんでだ、行くんだ。これは王からの命令だ。」
「はあああ??」
なぜ命令発言をするの・・・?
そんなの不公平じゃん、人としてどうなの・・・この王様・・・そしてそれでも国として成り立つゾルラン
がすごいような・・・・。
「さあ行くんだ。」
「うわあああああ、嫌ですうううううっ!!!」
ガシスに強制的に手を掴まれ、引っ張られた。
この王様、そこそこ高齢なはずなのに・・・スピードが速い・・・・。
ジェットコースターに乗った気分だった・・・うぇええ・・・。
王様に連れられたのは「王様の玉座」。
もうたくさんの人だかりができていた。個人で私が呼ばれたときはこんな列なかったはずだ。
そしてちょこんと、小さな王様の玉座同様、真っ赤な玉座が横に置かれていた。
「さああ、やるのだ。アマノ」
私は強制的に座らされた。
私、いいって言ってませんけど・・・?!
それに列に並んでいる人たちが怪訝な顔で睨む。
「あはあ、どうも・・・!」と、無邪気に笑って見せるが対応は変わらなかった。
「皆、こんがらがってると思うがー、」
いつの間にか、ガシスは玉座に腰を下ろしていた。
動きが静かすぎると思う。
「アマノ王女が帰ってきたんだ。お知らせが遅くなって申し訳ない。」
どっと静かになった玉座の間で一人の「いえいえ!」という声が響く。
しかしガシスはその人は眼中にないようで、話をさらに進めた。
「今日は皆にそんなアマノ王女をお披露目しようと思ってな。今日の相談の回答はアマノに任せようと思う。」
え?嫌なんですが。
私は瞬時にカッと目を見開いて、ガシスを睨みつけた。
でも、時すでに遅し。列に並んでいた人の拍手が巻き起こる。
親子って似るもんですね・・・今度は異世界の王様に仕事を丸投げされた・・・・。
「アマノ王女、聞いてください。」
「はい・・・。」
ということで強制的に丸投げされた王様の仕事をやっている。
そして・・・私はずっと黙って聞いていますがっ?!
「私、大事なぬいぐるみを失くしてしまったんです。」
「はああ・・・。」
なぜ、それを私に?
「探すコツを教えてくださいっ!!」
「(はあああああ??!)はあ・・・。」
意味が分からん、なぜそれを聞く?それは誰でも分かる・・・あなたのその無駄な頭を使えば分かる・・
ことである。
「こ・・、心当たりがある場所を探せばいいんじゃないですか?記憶を頼りに探せば・・・?」
その子はガバっと私を見上げ、漫画で出てきそうなうるうるな目をしてきた。
な、何・・・?
「あ、ありがとうございますっ!!とっても参考になりましたっ!!」
その子は私の手を握った。
え?
「やっぱりアマノ王女は賢いですっ!!」
いやいや頭使えって。
「こらっ!」
後ろの人がその子を睨んだ。
「そうやって、王女様の手を握るんじゃないっ!」
「あっ、すみません・・!」
その子は後ろの人だけでなく、私にもぺこりとお辞儀をした。
その子が去ると後ろの人は歩み出た。
「まったく・・、最近の若いのは・・・ねええ?」
「は、はああ。その通りですね・・・・・。」
この国ではそんな軽い気持ちで相談をするものなのか。
ここは呆れる・・・・。




