6 王様
はて。
アマノ王女(本人)に王女の仕事を押し付けられ・・・。
困るのが現状。
まだ朝にもなっていない。
一応、ベットにはもぐりこんだが・・・・
・・・・う~ん・・・、眠れない・・・。
「アマノ王女様?」
部屋に怪しげな黒い影が浮かぶ。
・・・誰だ?
かろうじて寝返りを打つと。
「メアイ?」
「・・・まだお眠りになっていないのですか?」
メアイはまだ仕事中らしく、銀のお盆を持っている。上には何かが乗っていたが暗闇で何も分からない。
「まあ・・・。」
私はメアイの言葉にうなずいた。
「もう、なんで王様に引き続き・・・王女様も・・・。」
ガシスも眠れないらしい。
メアイは近くのところにお盆を置き、エプロンのポケットから丸い入れ物を取り出した。
「これは・・・・?」
「ふう・・・」
メアイはため息ともいえる声を出した。
「私が発明したよく眠れる、クリームです・・・、真っ先に王女様にお見せしたのに覚えていませんか?」
覚えてるわけがない。
メアイは蓋を回して取り出した。指にふんわりと巻き付くクリーム。それは謎に緑色をしていた。
「そうだ。」
「??」
メアイがクリームを指につけたまま動きを止める。
「王様が明日・・・というか今日ですけど・・・朝ごはんが終わったら、また王様の玉座で話したいと
おっしゃっていました。」
え・・・また・・・?
そしてそして・・・ぐすりと眠った私であった。メアイがクリームを塗った直後、すぐにさっていったのに
気が付いていなかった。
また新しい朝が来た。
朝ごはんなんて本当は食べたくない。なんか異世界のご飯はまずいような・・・。
恐る恐る、足を床につけた。
「アマノ王女様っ!!」
「何いいい?」
つい、現代のテンションで聞いてしまった。なんか異世界の時といつもの時は分けたい、態度は。
朝から大急ぎでなんだか・・・うるさい・・・。
「アマノ王女、朝ごはんを持ってきました。」
メアイはそんなの態度に構わず、お盆を私の膝の上に置いた。
やはり、王室の食事は多く、異世界だからその上、まずい。
ただ、お盆にはちょうどいい具合の量の朝ごはんが乗っていた。
・・・しっかり気持ちが分かってる・・。
「ありがとう・・(ちょうどいい・・!)。」
「どうも、それが仕事ですから。」
メアイは会釈を軽くすると、部屋を去っていった。
キトワに襲い掛かっていたのはまるで嘘のようだ。
「・・・さて。」
目の前の朝ごはんに手をつけた。
10分後。
「おう。来たか、アマノ。」
「・・・はい、来いといったのは王様の方じゃないですか??!」
ガシス、いわいる、王様はいつものように大きな玉座の背もたれに背中を任せていた。
・・・希望として、玉座に座っているだけでなく、きちんと体を動かしてほしい。
「さて・・・アマノ、聞いておくれ。」
「?」
意味が分からない、きちんと静かにしているのだが。
「王の仕事があるのだが、例えば村人の言うことを聞く・・・だとか。
条約にサインをする・・・だとか。」
「・・・はああ。」
この王様はついに私を侍従として見始めたのか?
ここまで・・嫌なかっこうさせられて、ついに愚痴を始めたのか・・・・?
「それで・・・未来の女王候補であるアマノに、一日・・・王の仕事を任せようと・・・思う。」
「・・・・はあああ・・・はあああああああああ???」
ガシスは人の話を全く、聞いてないと思う。
人が「私は○○○○!!」と何回も主張しているのに、こいつって奴は(失礼だったか・・)・・・ガシスって
奴は、なぜ□□だと勘違いしているのか・・・!これはあくまでも比喩である、多分。
しかも私は王女じゃない。
そおおおおおんな、なにも知らない外部の人が王室のことをするなんて無理な話だ。
第一、私は旅で疲れていると勘違いされているばかりに、お手伝い一つもしていない。
「無理です!無理です!私のこと分かってるんですか!その前に!」
ああ、つい本音が。
「はっはっは!」
ガシスは大きなひげを震わせた、笑っているのだ。
「そりゃあ分かっとるぞ、アマノ。」
いやこいつ、絶対分かってねえー。
「それにずっといたではないか。」
いやそれは、私に丸投げしたアマノ(自称、アーマー?)のことですが。
「大丈夫だ、アマノ。わしが説明するから。」
いいえ、それでも大丈夫ではありません。
「それなら、ずっとついてるか?」
それなら王様がやればいい。
一日女王の意味は・・・ない。
「はっはっは!冗談だよ、アマノ。」
どうやらあっち側には心配性のアマノ王女だと思われているらしい。
冗談の使い方、あなた勉強した方がいいですよ・・・・?
「まああ、とにかくやってみるといい。」
全く、親子は似るもんだ。
・・・・丸投げしてくる。
「あのう、一応聞いておきますが。」
「なんだ、アマノ。」
少し不機嫌そうな王様。なんで?
「これってやるかやらないか選べるんですよね?!」
「NO!」
「え?」
まさかの即答、しかもここに英語が実在してたとは・・・!
「だめか?」
「だめです。」
私も即答。
「そうか・・・わしが言うとだめなのか・・・!?」
「は?」
ガシスは何かを勘違いしている。
「・・・・いや、アマノが異世界の言葉は面白いと言って、わしも使ってみたんだが・・・だめか・・。」
ガシスはどうやら私が「だめ」と言ったのは英語の方だと思ったらしい。
いや、私まあ思ったにゃあ、思ったけどそっちじゃなくて・・・!
「いや、私が言ったのは王室の仕事のことで。」
「無理だ。」
「え?」
この質問もまさかの即答。
この国には自由がないのか・・・自由党作ってやろうかな・・・。
「・・何でですか、私にも選べさせる権利はあると-、」
「だめだ。」
即答?!
「この国には自由はないのでー、」
「そうだ。」
先を読んでの即答・・・。
他にその能力、活かした方がいいって・・・!
「私ここのこと何も知らな-、」
「演技か。」
このままだと、時間が経つし、疲れるから。
決着。
「やめてください!」
ガシスがピクッっと動いた。
私、ずっとここにきてから叫んでるから慣れているはずだと思うが。
「とにかく私、やりたくないです。
それに王室の人間じゃないですし!」
「ああ、アマノ。またいつもの手か。」
いつもの手・・・!?
ガシスはやっと玉座から立ち上がり、一人拍手をした。
「そういえば、アマノはそう言っていつもごまかしていたなあ。変わらんなあ。
自分は『異世界の人間なの、全く分からないことを投げかけないでえ!』って言って逃げて。」
「え?」
ガシスは私の存在を知ってたの?
全く、アマノはなんてややこしいことを・・・!
「でもな、アマノ。そうやって逃げても意味がないぞ。」
「はああ。」
そうですね、アマノのせいで・・・・・。
なんて運命・・・、数学の時間に戻してほしい。
ということで・・あーあ、王室の勉強が始まった。




