56 【メアイの視点】テンヤさん探し
※今回の話では、主人公がメアイになっています。
ご注意ください。
「メアイ」
振り向くと、肩に手を置くフイザーがいた。
「・・・フイザー・・・かなり久しぶりね」
「そうかな?」
私は思わずフイザーを上から下までジロジロ見てしまった。
なんか・・・癖なんだよね・・・。
久しぶりにあった人のファションチェック!!・・・的な?
やっぱり相変わらず、フイザーは上から下まで真っ黒な衣装。
ただそのせいでやっぱりフイザーの金髪は映えるけどね・・・。
本当にうやさやまし・・・・金髪とか・・・。
「それより・・・ほら」
フイザーがメアイを見た後、ガシスに向かってあごをしゃくった。
ガシスは、フイザーのことに気づかず、お城の者と楽しくおしゃべりをしていた。
・・・・あ、そっか。
「王様」
「あ?なんだ、メアイ」
「テンヤさんを起こしに行ってもよろしいでしょうか?」
「おお、それはありがたい。頼む」
私は席をギギギ・・・といわせながら立ち上がり、静かに退出した。
・・・・さあて、テンヤさんを起こしに行こう・・。
「・・・・ちょっと、肝心なあたしを忘れないでよ」
「あっ!!」
後ろを向くと、いつの間にかフイザーと私にはかなりの距離ができていて、フイザーを置き去りにしていた。
「ごめん・・・・」
「・・・・なんで?」
私はフイザーとテンヤさんの部屋に行った。
が・・・・そこにはテンヤさんの姿はなかった。
ベットにもベランダにもドレッシングルームにも!
何回も何回も、探した。
ついには声をあげながら。
でもやっぱりいなかった。
「・・・どういうこと・・・?」
「テンヤはどっか行ったんじゃないの?」
フイザーはそれでもなぜか平然として訊いてくる。
なんで平然としてられるの・・・・?
「・・・だって今日一度もテンヤさんの姿見てないよ?朝食にも出てなかったし」
「・・・・・」
フイザーは黙ってしまった。
今日、フイザーと私とテンヤさんでどうやって戻るか、話し合おうとしてたのに・・・。
なんで・・・?
戻りたくないの・・・?
あんなにゾルランを嫌って何回も逃げ出したのに・・・?
ひとまず私達は、しょんぼりしながらテンヤさんの部屋を出た。
すると、前の方に地図の前で立ち止まっている、アマノ王女の姿があった。
でも、アマノ王女にしては少しおかしい。
あの長い黒髪はみつあみにしてあるし、王女なのになぜか農民らしい服を着ている。
「・・・・アマノ王女様?」
声をかけると、アマノ王女は振り向いた。
・・・・・・いやでもアマノ王女ではなかった。
「・・・・メアイ?」
あっちもびっくりするように訊いてきた。
「・・・・テンヤさん!?・・なんでここにいるんですか!!!」
「知らないよ、だって朝起きたらアマノ王女の部屋にいたから」
・・・・起きたらアマノ王女の部屋にいたとはどういうことだろう?
そんなマジックみたいなこと、起こるのだろうか?
「じゃあ・・・アマノ王女はどこにいるんですか?!」
「それも知らないよ、朝いなかったし」
・・・ということはテンヤさんが行方不明ということではなく、アマノ王女が行方不明だということなのか・・・。
アマノ王女ならやりかねないけど、まさかここまでとは・・・。
・・・・・それにしても・・・。
「・・・・・その格好でテンヤさんって気が付かれなかったんですか?」
「びっくりするぐらい気が付かれなかったけど」
ええっ・・・ここに人、どんだけ鈍感・・・。
とはいえ、さすがにこれを放置しては誰かにバレる。
私はテンヤさんの腕を引っ張り、すぐ一階下の小さな化粧部屋に連れて行った。
フイザーにテンヤさんの衣装を変えさせてもらうのだ。
ドレスに変えさせれば、ちょっとはバレない。
「ええっ!なんでよ・・・メイクさせてもらえないの~?」
出た、フイザーの語尾を上げる癖。
こういうことをするのは大体、おねだりをする時か、王様に気に入ってもらいたい時。
「しょうがないって。ガマンして」
フイザーにはそう言い聞かせ、テンヤさんの服を変えさせてもらった。




