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42 【その頃お城では・・・】

「ん?何か、おかしいなあ・・・まだ来てないなあ・・・」

その異変にいち早く気が付いたのは・・・キトワだった。

全く・・・キトワはこういうことにはすぐ気が付くのだ・・・。

キトワはたまたま、廊下ですれ違ったレイチェルに「おい」と声をかけた。

レイチェルはアマノ王女の新しい侍女なのだ。

「何ですか」

なぜか、レイチェルはキトワを見て不機嫌だった。

(それが年上に対する態度か?・・・・・はあ・・・全く)

「アマノ王女、知らないか」

「知りませんよ」

そう言ってそのまま通り過ぎようとするレイチェルにキトワは「待て待て」と止めた。

レイチェルは止められて、そのきつい目をさらにきつくして、キトワを睨んだ。

(冷たいなあ・・・)

「ま、まだ話、終わってないぞ」

「何ですかっ!!今、急いでいるんですっ!!」

レイチェルは怒りを爆発させて、キトワの手を振り払った。

しかし、それでさっきのように通り過ぎることはしないのらしい。

(・・・ちっ・・なんでこんな感じ、悪い人を王様は採用したんだろう・・・ま、その前のメアイも感じ悪かったけど・・)

「他に何か知らないか・・・?例えば何時何分にどこどこに行ったとか」

「知らないって言ってるじゃないですかっ・・・ストーカですか?」

レイチェルはムッとした顔になった。

(この訊き方はさすがに過保護だったか・・・)

「これから、王族みなで食事するのだが、アマノ王女は予定よりも30分も遅刻しているぞ。ちゃんと呼びに行ったか?レイチェル」

「いいえ」

「はあ?!はあ・・・」

涼しい顔できっぱり言うレイチェルにキトワは一瞬腹が立った。

(お風呂や食事、大事な時に呼びに行くのが・・侍女や侍従の仕事なのに・・・あの・・、()()!メアイでさえもきちんと守ったのに)

ここにもしメアイがいたら、今すぐにでもキトワは怒鳴られそうだ。

「私は王女様、自らが緊急の時のみ、駆けつけます。王女だからといって、ずっと甘えたりして、自分で動けなくなったりしたら、困りますから。今からでも叩き込まないと」

「しかしだな!もし彼女に何かあったらどうする?!」

「何か・・・と言いますと?」

(これが年上に対する態度か?)

そのレイチェルの言い方でまたキトワは腹が立った。

「知らないのか?・・・前、アマノ王女が逃亡して帰ってきたんだが、またアマノ王女ったら、逃亡して・・・それもまた連れ戻したが・・そんなことをしたら隙を狙ってまた逃げてしまうかもしれないじゃないか!!」

「そうなんですか?」

さすがにレイチェルは予想外らしく、困った顔をして、高い声を出した。


レイチェルは急いできた道を戻り、アマノ王女の部屋にノックなしで入った。

(なぜ、ノックをしない・・・)

そう思いながら、あとにキトワが続いた。

「まさか・・・・」

アマノ王女の部屋には、アマノ王女・・・・いや、正しく言うと帰って来たばかりの天野てんやひめの姿はなかった。

(やっぱり今回も逃げてしまったか・・・)

キトワはベランダに出て、「あ」と声を漏らした。

「これは・・・・ひもか・・・・」

(そういえば、二回目の逃亡の時も・・ベランダにひもを結び付けて、逃亡していた・・・・)

レイチェルとキトワはしばらく立ち尽くしていた。


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