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31 【メアイの生活 その1】

メアイは、姫を逃がさせた時、お城で姫の後姿を見送った。

(おそいなあ・・・・アマノ王女とは全然違うなあ・・・当たり前だもんなあ)

と呑気に考えていた。


しかし、呑気に考えているどころではなかった。

お城のなかでは、舞踏会肝心の主役がいない!ということで、大パニックになっていた。

そして、メアイがそう呑気に思っていても、メアイを取り巻く現実ではもう呑気どころではなかった。

見送りはしたものの、その見送り方は平和なものではなかった。


「んっ!あにうるんえすかっ(何、するんですかっ)!」

「メアイ、話をじっくり聞こう」

メアイはガシス王に取り押さえられていた。

しかし、あまりにもメアイがベランダから離れようとしないので、王様が侍女を引きずるというなんともひどいような画になっていた。


王様がようやく手を離したのは、二人が王様の玉座に着いたときであった。

「何なんですか?」

メアイはもちろん不満げであった。

「ちょっとね」

といって、いかにもおじいさんそうにガシス王はこの広間にあるたった一つの玉座に腰を下ろした。


この王様の玉座は、スタンドガラスが天井にちりばめていて、とっても美しいが、ゆういつの弱点は、玉座が一つだけで、とってもさみしいことである。

メアイは今の心情も含め、王様にも玉座にもイラついていた。


(・・・・そうだ、ここで逃げ出せば・・・)

しかし、そんなことをやっても引き止められるだけである。しょうがなく、メアイはなんだか、ためているガシス王に話を進めさせようと、

「何ですか?ご用件は?私はどうして呼ばれたんですか?」

と質問攻めで、言った。

しかし、ガシス王が何か言うとして口を開きかけた時、

「王様っ!大変ですっ!」

と侍従キトワがやってきた。


「どうしたんだ、侍従」

「アマノ王女がいなくなっていましたっ!」

「何だと?」

もちろん、王様とキトワの目線はメアイに行った。

メアイは特にキトワを睨めつけた。

(この侍従め・・・もう少し遅ければ、事情は悪くならなかったっていうのに・・・)


本当にタイミングが悪い。

しかし、あっちの王様とキトワ側にすれば、とってもタイミングが良いと思ってでもいるだろう。

「メアイ、どういうことだ?」

「何がですか?」

至って平然と答える。

「何がって・・・・アマノのことだよ・・・」

「あの人は逃げています」

「はあああ?!何だと?」

メアイは勝手に本人、アマノ王女のことだと思って答えたが、

どうやら、あっち側では、テンヤさんのことを「アマノ王女」だと思っているらしい。

「お前、アマノを逃がすのを手伝ったな?」

「いいえ」

「嘘つけ。それにお前、私とアマノの会話を盗み聞きしたな」

(なぜ、それを・・・!)

メアイは一瞬顔が青ざめたが、すぐに真顔に戻った。


しかし、キトワはその変化を見逃しやしなかった。

「王様、本当だそうですよ。顔が青ざめましたもの」

「王と王女の会話・・・だけではないが、王族の会話は盗み聞きをするなと言っただろう。

 この際、ちょうどいい。二つの罪を犯したので牢に放り込む」

「なぜ、そうなるのですか」

メアイはかろうじて冷静に言った。

逆に、感情を丸裸にして、言ってしまうと、「はい、私はやりました」と罪を肯定してしまうことになってしまうと思ったからだ。

「証人はここにいるぞ。キトワがアマノ王女の話をメアイから聞いたって言っていたんだ」

「そうだぞ」

「だから、今日からお前は侍女ではない!」

「そうだ」

キトワがニヤニヤといやらしい笑顔を浮かべて、メアイを見た。

本当に王様がいる前では自分が王様の侍従だからとっても偉いと錯覚しているのだ。

(キトワは、テンヤさんが「キトワ」って言ってくれただけで泣くってやつなのに・・・)


事実、それにキトワは侍従歴、二年。そしてメアイの方は侍女歴、十年とメアイの方が年上なのだ。

王様は座り込んでいる、メアイを無理やり立たせ、また引きずりながら、王様の玉座を後にした。



その時、メアイが見たのは、


残ったキトワが声を出さずに口だけで




お・れ・の・か・ちっ


とニンマリとした笑顔を浮かべたところだった。

(覚えてなさいよっ・・・あんたにぎゃふんと言わせてやるんだからっ)

メアイは幼稚なキトワに荒い鼻息をかけて引きずられていった。




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