26 イン森
「いたっ・・・・はあもう・・・」
一人でぶつぶつ独り言を言いながら、木と木の小さな隙間に手を突っ込み、かき分けて進んでいる。
なぜこの木はこんなにトゲトゲしてるんだろう?
そして、ゾルランにはこんな森が存在しているのだろう?
木が詰め込みすぎて、道がない。前が見えない。痛い。進んでいるか分からない。
迷い込み始めて何分経っているかも分からない。
というか、ここに来てからまともに時計を見ていない。
「はあ・・・お腹すいた」
そう言えば、今日なんにもお腹の中に食べ物が入っていない。
お腹がすくのも当然。
と、やっと木が詰め込んでいたゾーンを抜け、道らしきものも見つけ、光も見えてきた。
そこは大きな広間になっていて、切り取られたあとの切り株もぼちぼち所々にある。
「ふうううう」
大きな声をたてて、切り株に座り込んだ。
ここで、おさらいをしておこう・・・混乱を招きそうだから・・。
ええ、まずはアマノ王女に似ているという理由だけで、ゾルランのお城に連れてかれた。
で、お城で王国の仕事をちょびっとしたり、アマノ王女にあったりして、しかし私は侍女メアイの手を借りて、逃亡を試みた。
しかし、王様に気づかれ、護衛に追われ、「レヴィリディ」で店主のリディアに守ってもらい、なんとか逃れた。で、その倉庫を掃除して、二泊泊めてもらって、三日目、暇になって息苦しくなって城下町探索。
「ミスター」で三点のお買い物をしたら、お金のあまりの多さに店長に疑われ、ついにはアマノ王女に似ている・・・いや、アマノ王女と誤解され、野次馬と店長に追われ、今ここに逃げ切り、森にいる・・・。
「もう、疲れる・・・」
ここに来てから休めると思ったら精神的に疲れさせる(王室のこと)。で逃げて、休めると思ったら、野次馬たちに追われ、体力的に疲れさせる・・。
なんだよ、もう・・・。
休ませてよ、そもそもここの人じゃないのになあ・・・。
森には木々が生い茂り、所々に川が流れ、動物たちが生きていて、森の空気が美味しいとかが普通だと思うのだが・・・・。
この森は窮屈の木々が生い茂り、川なんぞ流れず、森の空気は美味しくもない。
テレビで見たことがあるのだが、水だけを飲んで生き延びた人がいたそうだ。
しかし、ここには川がないから水なんてない・・・だから結構お腹すきすぎてヤバいかも。
しょうがなく、とりあえずずっと持っていた「ミスター」で買った服を着ることにした。
だって、買ったのに意味がない。
ストール、コートをさっき座っていた切り株に置いて、とりあえず、高かったワイドパンツに麻の服をはさみはきした。
そして新しいコートを着、ストールをぐるぐるに巻いた。
「やっぱりワイドパンツは楽だね」
ここにも、私のいるべき世界にもあるものってなんだか落ち着く。
まあ、ワイドパンツがピチピチ系の服ではないのも落ち着く理由かもしれないけど。
「・・・・・・・これからどうしよう・・・」
このまま、進むべきか。それとも、ずっとここに居座るか。
しかし、ここにずっと居座っても、ここで餓死するだけである。
それよりも前に進んで、この森は何なのか探した方がよさそう。
もしかしたら、川があるかもしれないし、宿泊施設もあるかもしれない。
可能性は低いけど。
「さあ、行くか」
私は使わなくなったストール・コートをキレイに畳み、手に持ちながら、大きな広間を過ぎてまた木々がぎゅうぎゅうに詰め込まれた森を再び進んだ。




