19 翌日、ゴミの山から
「朝だよ~さあ、おきて~」
「・・・ふがっ!」
勢いよく、ゴミのふとんを投げてしまった。
「・・・・あっ・・・」
「大丈夫、大丈夫。慣れたもんだから」
つい、慣れで・・・・。ここはまだ異世界だった・・・・。
それでも慣れてるリディアがすごいけどね・・・。
「朝ごはん、持ってきたんだよ~・・・食べてね~」
確かにリディアは手に白い長方形のトレイを持っていた。
その上には、湯気立ち上る、料理たち・・・・。
コップの中にコーヒー・・・みたいなもの、鉄板に入れられたジンギスカン・・・・みたいなもの、そしてスプーンよりはいびつな形をしてる・・・なんかがトレイに置いてある・・・。
ってやっぱり、なにこれ?
「コーヒーをイチゴピューレでかけたドリンク、ジジミリンだよ~」
「・・・・えっ」
朝からジジミリン?美味しくないあのジジミリン?
おかしいでしょ、朝から美味しくないピザ食べるようなものでしょ・・・?
しかも、なんかよく見たら、リディアは、こっちに来ないで私が来るのを待っている。
え?私がそこへ行けと?
冗談じゃない、ここゴミでできてるんだよ?バランス崩れたらもう終わりでしょ?
『あっ、危ないっ』
『うわあああああああああ』
〈と私は誤ってゴミでバランスを崩す。そしてすってんころりん・・・〉
『ああっ!』
〈とリディアが叫んだのは、料理がゴミでこぼれてしまったから。ゴミにコーヒー・・・みたいなものがびしゃー、ついでにリディアもびっしょびしょに・・・〉
『ご、ごめんなさい・・・・』
『だ、大丈夫よ、これくらい慣れてるから・・・』
〈とは言うけど、リディアの右眉がピクピク動く・・・・これは怒っている証拠・・・・〉
※これはあくまでも、私の想像です。
「ええっと・・・・・・私がそこに行くんですか?」
「ええ、それがどうした?」
リディアはまだなんにも気が付いてないようだ・・・。
「でもそしたら、ゴミが料理に・・・びしゃーって・・・・」
リディアは最初何の事だか、分からず目を大きく見開いて私を見ていたが、
その後、ゴミの山を見て、「ああ」と何の事なのか分かった・・・らしい。
「大丈夫だよ、そんなにこれら、大きくないし・・・・・・待って。今、この物のこと『ゴミ』って言った?」
「ああ~・・・・・」
そうか、リディアはこの物のこと『ゴミ』って言ってなかったっけ・・・
ゴミの呼び名は私だけだったか・・・・・気まずい。
「失礼しま~す」
そう言って、素早くゴミの山を飛んで降りると、トレイをさっと取って、とりあえず庭に逃げた。
「えっ、あっ!ちょっと・・・?」
リディアはそう叫んだものの、頭に?が浮かんでいた。
リディアはゴミってあだ名が嫌で聞いたわけではなかった。
本当にそう言ったのか、確認するためだけだった。
♦
「あっ、ううぇ・・・ぷはあ・・・」
庭で私は一人、ジジミリンと格闘していた。
なんだか、一晩寝ていたら、急に味覚が戻ってきて、チヂミリンが昨日よりもまずく感じる。
それでも、気まず~いリディアとの空気から逃げてきたのだから、食べきらないといけない。
「まず~い・・・」
コーヒーとイチゴピューレはしっかり飲めたというのに、なんでジジミリンは・・・・?
やっぱりここの国の人味覚音痴・・・。
そして、私も昨日まで味覚音痴だった・・・・・。
「む、無理っ・・・・・」
もう少しで完食だったけど、ついに諦めてスプーン似のものを置いた。
そうだ、キッチンの洗面台に置いておこう・・・
カチャ
そっとそっと、リディアの裏のドアを開けた。
「あれ?」
リディアはまだいないようだ。まだ、あの倉庫にいる・・・?
チャーンス・・・!
ただやっぱり万が一のために、忍び足でキッチンに向かった。
「はあああ」
洗面台は昨日と変わらず、汚い。
洗っていない食器たちであふれかえっている・・・。これで店ができるリディアもすごい・・・。
ゆっくり、ゆっくりトレイを置く。
「・・・・・これ、トレイ置いてもいいのかな・・・?」
妙にトレイがきれいに見えて、しょうがないのだ。
ここに置いて、薄汚れたトレイになってしまうんじゃないのか・・・・?
と、トレイの気持ちを考えてしまった。
「かわいそうに・・・・」
「ここで何してるんだい?」
おそるおそる、後ろを向くとそこには・・・
「わああああああっ」
「なんだい、そこまで驚く必要ないだろ?」
見つかりたくなかった・・・・・・・リディア。
なぜ?もうもどってきてしまった・・・?
ああ、怒られる。
『よくも大事な品々たちを「ゴミ」と言ったな?』
って。
アマノ王女のおばさんなんだから、王女よりも怖い拷問をするはず。
テレビでよく見るやつ、刑事がかつ丼差し入れて、優しく見せかけて「白状しろ」って脅すやつ・・。
あれ?ちょっと違ったっけ?もう、分かんないけど・・・。
心臓がバクバクと速くなっているのが、分かる。
手を置かなくても分かるくらい。
リディアの口が開く。それはなぜだか、とてもゆっくりに見えた。スローモーションで見てるみたいに・・
そう、来るよ・・・・『よくも大事な品々たちを「ゴミ」と言ったな?』
「美味しかった?」
「違うんですっ!ゴミって思ってません!!って・・・えっ?」
「はあ?」
なんだか、リディアと私で言っていることが違う。
お互いの言葉に「え」「はあ?」と驚いてしまった・・・。