16 下に隠れた・・・けど
更新、遅くなってすみません!
・・・・今の状況・・・すごくピンチじゃない?
城の逃亡をはかり、この「レビィリディ」に駆け込んでいたけど・・・。
そのオーナー、リディアは今絶賛、護衛に脅され中。
だめだ・・・これで押し通せるか・・・
「ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピッ・・・・」
瞬時に音にする方に反応した。
ゲッ・・・!!
「なんだ、この音?聞こえるか?」
「はい・・・確か・・・」
護衛はリディアに槍を向けるのをやめたけれど、音の方向を探し始めた。
やばい・・・ピンチピンチ!!
・・・・それもそのはず、シンプルな正方形のキッチンタイマーが私の隣に落ちていた。
いやー、その前にこの世界にキッチンタイマー、あったんだ・・・。
「あら、この音はキッチンタイマーね・・・落としちゃったのかしら」
『落としちゃったのかしら』じゃないよ!!
危機感持って下さいよ!!私が見つかったら、リディア牢屋に入れられるから!!
ん、もう・・・どうしよう・・・と、とりあえず、護衛のところに滑り込ませよ・・
スー・・・・っと
「ん?何か当たったぞ?」
「それはキッチンタイマーです・・・まさか・・・」
確か・・・ワリトという名前の護衛は覗き込もうと、しゃがみだした・・。
バレる・・!ああ、私の人生終わりだ・・・それもこれも、アマノ王女のせいだからねっ!!
「ちょっと待ちなさあああああああい!!」
狭い店内に響く太い声。
ちょっと耳をふさぎたくなる・・・そして現れたのは
「「りんごの人??」」
護衛たちの声がハモった。その人は「フフン」となんだか偉そうに鼻を鳴らした。
「いやでも、俺たち『りんごなんて知らない』って言ったぞ」
「うん」
護衛たちで顔を見合わせる。
!
そうだ、私が逃げている途中で護衛たちに
「りんごって知ってます?」
って訊いてきた人だ。
でもなんで追いかける必要なんか・・・?
「王様のお出ましですよ?」
そう言うとスススーと、横に行って去ってしまった。
入れ替わるように、茶色い馬に乗った王様が入ってきた・・・。
いや、正確には入ってない。入れない。
ただでさえ狭い入口だというのに、馬もというと、簡単に入口の上に付いている小さな鐘なんか届いてしまっている・・。
王様は「はあ」と呆れたような短いため息をつくと、馬から下りた。
「王様?なんでここにいるんですか?」
「もしや、アマノ王女が見つかったんですか?」
王様のガシスは呆れたように交互に二人の護衛の顔を見た。
「主役、アマノはまだ城に帰ってきていない」
まあ・・・、当たり前だ。
アマノ王女はなぜか逃亡。
そして身代わりの私はここにいるんだから。
「「じゃあ、なんで?」」
またもや、ハモった。
「確かに主役はいないが・・・また寝込んでいるのだろう、侍女のメアイが言っていたからな」
ああ、良かった・・メアイ、ちゃんと嘘が隠し通せたんだ・・
あのキトワは勘が鋭いけど・・あの人、そういえば私に泣きついてきたよね?
「それに」
急に呆れた顔だった、ガシスは真顔になった。
「護衛は約束を守らなかったようだからな」
「や、約束?!」
「そんなのおっしゃっていましたか?」
護衛たちは覚えがないようだ。
「・・・『アマノをとらえよ』と言ったぞ・・・?」
護衛たちは困った顔をしながら顔を見合わせた。
約束のようなもんかな・・?それ・・・
「さ、帰るぞ。仕事は終わりだ、護衛たちよ」
「「でっでも!」」
またまた護衛たちはハモらせた。
ガシスはもう背中を向けたのを、振り返った。
「なんだ」
「アマノ王女は見つかるのでしょうか?この時に切り上げても・・?」
なぜだかワリトは帽子を脱いでそれを、にぎりながら言った。
中の黒いふさふさの髪が丸見えだった。
「いいんだよ、前だって見つかったじゃないか。それに城に帰れば、護衛たちにだってごちそうをやるぞ」
「本当ですか?!」
護衛たちは嬉しそうに店を去っていった。
この国の料理、おいしくないのに・・・・。
王様のガシスは最後に残り、店主のリディアに軽く会釈をすると、
茶色い馬を引きながら、店を後にした。
「やっと出られる・・・」
うんざりしながら、やっと体育座りの手をほどいた。
「ピピピピピピピピピピピピピッ・・・!」
こうやって誰もいなくなると、キッチンタイマーのうるささが余計感じられる・・・。
私は「ポチ」とストップボタンを押した。
「へえ、そこにいたんだ」
リディアは感心するように出てきた私を見た。
私は残った水をしっかりと飲みほした。
「へえ、威勢がいいね。王様はそうでもなかったけどね・・」
確かに。
確かガシスは私が呆れるくらいテンションが高い時があった気がする。
それなのに・・・あれは・・・抜け殻?
いや、それは言い過ぎか・・。
私は考えを振り払うように首を横にふった。
「それよりこれ、返しますね」
私が置いたキッチンタイマーは「ススス」と音を立てて、リディアの元に返ってきた。
「ありがとうね、それよりこれどこにあった?」
「いや、下に落ちてました」
「あ・・・ごめんね」
リディアは申し訳なさそうに聞こえないように言った。
私、結構ピンチだったんだから・・・
リディアは無意識に睨んでしまった私の視線に失笑して、キッチンへと姿を消した。