12 これは、絶対反対でしょ??
前回までのあらすじー
王様に王女の仕事を任され、「王女じゃないのに!」と激怒し、このお城から変装して出ようと試みた姫。
しかし、不運なことにそれがメアイに変装しようとしているところを見られてしまう。
案外、メアイが協力し、舞踏会の夜、ベランダから綱で下りようとすると、綱が緩み、放してしまうー。
痛いっ
顔面強打・・・・。
そして・・・・
「メアイっ、そこで何をしている??」
メアイがたった一つの綱を持っていたというのに、男の声で放してしまった・・・。
「な、何の事お?」
平然とした声で落ち着きを取り戻そうとしているけど・・声、思いっきり震えてますよ?
それにー、メアイだけでなくて、私も震えているのですが・・・
この手を放してしまったら・・・もう真っ逆さまに落ちる。
どこかのスパイの映画みたいにあの・・・早く・・・助けてほしい・・・・
「何の事って・・・またぶりっ子みたいな声を出すんじゃないよ、ほらボーっとしてないで、舞踏会の準備!」
「舞踏会って?」
あちゃあああ・・・
この言葉言ってしまったら・・・。
「・・メアイ?何を言ってるんだい?アマノ王女の復帰の舞踏会に決まっているじゃないか?」
下からカツン、カツン、と靴の音が響く。
少しずつ、小さな隙間から、メアイの姿が見え始める。
これって・・・追い詰められてる・・・。
「それに・・・その縄はなんだ?ついにどっかの童話の真似し始めたか?金色の髪を下ろして、おばあさんを上らせるやつ。」
いやあ、違いますよ、私反対ですよ?綱を上から上げて、下りていく方ですよ?
「いやあ、そうじゃなくて、キトワ・・」
え?男の声の主は王様の侍従のキトワだったの?
「それに・・・アマノ王女はまだ来んのか、この舞踏会の主役だというのに・・・」
ゲッ!
「ああ、それならアマノ王女は具合が悪いそうですよ・・顔色が悪くてとても舞踏会に出れそうにないですよ・・?」
そこはしっかり答えれるんだ・・・
「なんだってっ!!主役がいなければ、舞踏会の意味はないじゃないかっ!
医者を呼ばなければ・・!」
「えっ!」
いや、普通そうでしょ?
でも今そんなことを呑気に突っ込んでいる場合じゃない・・
もし・・・あの部屋に医者や、王様やキトワが入り込んできたりしたら・・・・
「ああ、それは・・・だめですっ・・」
「なぜ?」
まあ、それが普通だよね・・・。
「なんだ、なんだ、何をしとる」
救世主・・!
助かった・・・、
でも私は全然助けてくれないんですけど!あのおお!
「「王様あ・・」」
メアイと、キトワの声が重なった。
もごもごしている声は王様、ガシスだった・・・・。
「おい、その前に準備しないのか?もう、舞踏会が始まる時間だぞ??」
ですよねえええ・・・。
メアイが分かりやすく固まっている・・。ねえ、しっかりしてえ!
その時だった。
風がピュウと吹き荒れ、片方の手が滑り落ちた。
「ああっ」
分かりやすく、声を出してしまう。
「??それになぜ、アマノ王女がいないのだ??」
「それはっ」
「王様、今、アマノ王女の声がしませんでした?」
・・・・・最悪・・・・。
王様気が付かなくて、メアイが説明しようとしたのに・・・。
キトワが気が付かせあがった・・・。
「なんだと?」
ピュウ
まるでいじめのようにまた風が吹く。
それにさっきとは少し、風が強くなっている。
「んっ」
ああ、もし私が体力アリの体育会系女子だったら、耐えられただろうに。
この国、不運だ・・・。
でも、なんとか耐えて、今、小指を抜いた四本で支えている。
下には道路・・・はないが、硬い、コンクリートが見えている。
ここで落ちたら、普通に事故だ。
「テンヤさんっ」
下から、メアイの声がする。
反応遅いよ・・、それに今その心配をするべきではないのでは・・・?
「おい、テンヤとは誰だ?」
「メアイ?」
ああ、あの二人に何度も説明しても、
私=テンヤ ヒメ
って思わせることができないんだ・・・。改めて呆れた。
「ごめんなさいっ」
メアイの声とともに、綱が出てきた。
私は片手で手すりを掴み、もう片方の手で綱の端を縛った。
ゆっくり、ゆっくりと、体を滑らせる・・・・。
「メアイ、何をしてる?」
「テンヤって誰だっ!?」
これこそ、「作戦失敗」って奴だ。
しかし、焦ったら、コンクリートに真っ逆さまが待っている。
下りる速度を変えることはできない。
「もしかすると、メアイ・・・!」
「おい、キトワ。アマノ王女の部屋を調べよ」
「はい」
王様と、キトワの足音がしきりに響く。
ばれる・・!
私はいつの間にか、背中で冷や汗をかいていた。
「テンヤさんっっ!!」
メアイは綱を揺らす。
分かってるから、そんなことしたら下りられない・・!
「ああ、もうっ!」
メアイが怒ったような態度で、どんどん下から上ってきた。
な、何っ!?
メアイが腰辺りに手を組み、下へと引きずり込んでいった。
「ひやあああああ!!」
「黙ってくださいっ」
メアイは急速に下がっていき、悲鳴を上げた私の口に手を当てた。
ここの人、普通に強引なんだよな・・・。
「テンヤさん、このベランダに飛び降りてください」
メアイは舞踏会の会場の階で言った。
「えっ、嫌です・・・」
つい、私は後ずさった。
「ダメです、飛び降りてくださー」
「おい、アマノ王女がいないぞ」「きっとメアイが誘拐したんだ」「あのフロアへ行くぞ」
メアイが言い終わらないうちに上の階に口々に人の声が聞こえた。
きっと、王様たちは、アマノ王女の部屋に着き、ばれてしまった。
「早く!今なら間に合う!」
メアイは大きな目で大きな声で言い放った。
上の階からの足音が耳に響く。
「早く!逃げてくださいっ!テンヤさん!」
私はため息をつくと、ベランダから飛び降り、風に身を任せた。