1 始まりはホラー風味
天野 姫。と書いて「てんや ひめ」と読む、私の名前。
私の周りでは「天才!頭、いかれてんじゃね?!」と口々言われるが私はそうは思わない。
なんなんだろう全くー。
「姫さん」
「はい?!」
いきなり誰かが私を現実に引き戻した。
見上げれば、山中先生だ。私の頭は徐々に記憶を呼び戻した。そうだ、今は数学の授業だ。
「な、なんでしょう、山中先生。」
「これを黒板に写してくれないか?」
山中先生は私のノートの小さな文字を指さした。
なるほど、私が書けと。
「分かりました。」
私は豪快な音を立てて立ち上がった。さすがに注目を浴びるだろう。ガヤガヤしつつも視線は私に集められて
いた。
私は黒板に到達しチョーク入れをじっと見つめた。チョークは少なく、いろんな色の粉が散らばっており、
汚い。それを気ずいているのにきれいにしてあげないのは私の不親切なところ。
さて、四センチ?三センチ?の白いチョークを握った私はノートを見直す。
『問、3(38x+109x)』
よし、書くぞ。
『3×38x+3×109x』
ええっと、次は・・。
『=114x』・・・
「きゃあああああ!」
びっくりして声の主を探す。意外にもクールな山中先生が出していた。
ちょっと、先生。男なんだから女みたいな悲鳴出すなんてことしないでくださいよ。大人気ない。
しかし、先生は教室のほうを見ていた。そういえば、みんな静か。
だからっていうのもなんだけど後ろを向いた。
「お姫さまあ・・・・やっと見つけた・・・・・。」
教室には不気味な音声が流れていた。そして・・・みんなが
いない。それに謎の暗闇が迫ってくる。
「あれ、電気ついてる・・。」
教室の明かりはオンに設定してあった。それなのに暗い。
どんどん暗闇が迫ってきた。
だめだ、見てはいけない。
私の勘がそう言っていたのに見てしまった。闇にはそんな力が秘められていた。
横を見れば山中先生はいなかった。私、一人。
あのガヤガヤが恋しい時が来るなんて思ってもみなかった。
そして私は闇にのまれた。
目を開けると私ー姫は知らないところに座り込んでいたのだった。