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お狐さん

 家に帰るとお姉ちゃんがニヤニヤ笑いながら「デートどうだった?」なんて聞いてきた

 私は「デートじゃないし!」なんて笑ってお姉ちゃんにマフラーを投げつける

 ヘラヘラ笑ってたお姉ちゃんが一瞬で真顔になった

 「あんた…それ、どうしたの?」

 「何が?」

 お姉ちゃんは手鏡を渡してくる

 マフラーの下から出てきた私の首には真っ赤な手形がついていた…まるで首を絞められたみたいな痣が…

 お姉ちゃんが最初に心配したのは私が暴行を受けたんじゃないかって事

 性的暴行を受けた女性が他人に知られたくなくて被害を隠すなんてよく聞く話だしね

 お姉ちゃんは私の目を見て、いくつかの質問をした

 そして「嘘はついてないみたいね」と、ため息をつく

 お姉ちゃんが安心したみたいに見えた次の瞬間、お姉ちゃんの顔が真っ青になった

 「お風呂に行って!」

 お姉ちゃんは私を無理やり風呂場に押し込むと台所から持ってきた日本酒と塩を頭からぶちまけた!

 「何すんの!?」

 この服、お気に入りなのに!

 お姉ちゃんは、私の抗議を無視して服を脱がせてきた

 止めてお姉ちゃん!お姉ちゃんの事は好きだけど、そういう関係にはなれないの!って冗談は置いといて…

 私は自分の身体を見て驚いた、お腹あたりにも手形の痣が出来ていたから…さらに背中にも何かがぶつかったような痣が出来ているらしい

 お姉ちゃんはスマホで私の痣を撮影して「とりあえずお風呂入って、それと何かあったらすぐに大声でお姉ちゃんを呼びなさい」と言い残しリビングに戻って行った

 

 お風呂を上がるとリビングではお姉ちゃんが高校時代の友人知人に片っ端から電話していた

 聞こえてきたワードは『おかけん』『ふくかいちょう』『おきつねさん』

 どうやらお姉ちゃんは、おきつねさん…お狐さん?の連絡先を知りたいらしい

 お姉ちゃんは電話の合間にメールやラインをチェックし情報収集さらに電話をかけ続けた

 何人に電話したのか…お姉ちゃんは、ふくかいちょう、副会長?の電話番号を聞き出せたようだ

 副会長ならお狐さんと連絡がつくみたい

 やっとゲットした副会長の電話番号なのに、お姉ちゃんはスマホを握りしめたまま、しばらくガタガタ震えていた…やがて私に気づいて抱きついてきた

 「大丈夫だからお姉ちゃんが守ってあげるからね」

 そんな事を私に囁いて、お姉ちゃんは自分の頬をパーンと叩いて気合を入れて、まだ震える指でスマホを操作し始める

 「あら?お久しぶり~」

 電話相手の副会長は、ほわほわとした雰囲気の優しい感じの声の女性だった

 話からしてお姉ちゃんの高校時代の同級生らしい

 それなのにお姉ちゃんは、異常に丁寧な敬語で絶対に相手を怒らせないかのように慎重に話している

 「お願いします助けて下さい」「妹が憑かれたみたいで」「お狐さんと連絡をとりたいんです」

 そんなお姉ちゃんに副会長は「ふ~ん」「へ~」「そうなんだ~」と緊張感の欠片もない反応、やがて「ちょっと待ってね聞いてみる~」と電話の向こうで誰かと話し「いいよ~お狐さん会ってくれるって~」と答えた

 お姉ちゃんは土下座せんばかりの勢いで「ありがとうございます、ありがとうございます」と繰り返して細かい場所や時間を決めて電話を切った

 

 「いったいどういう事なの?」

 私の当然の疑問に、お姉ちゃんは答えてくれた

 『おかけん』はオカルト研究会

 お姉ちゃんが卒業する年まであった部活だそうだ

 幽霊部員が沢山いて部員数は不明、全容も不明、ただ一つ言えるのはオカルト研究会がガチで本物だった事

 学校内外で心霊関係の事件に関わり武勇伝は数知れず

 主要メンバーは、会長、副会長、そして『お狐さん』と呼ばれた人物

 その中でも、お狐さんは謎の人物だったそうだ

 当時の在校生だった事とおそらくは男子生徒だった事以外不明

 狐のお面を付けて顔を隠していたから通称お狐さん

 そしてオカ研に関わった人は全員口を揃えて、こう言った「お狐さんは本物の霊能者だ」って

 もちろんオカ研の話は嘘だろうって考える人も沢山いて、お姉ちゃんもその一人

 その事件が起きるまでは…

 「死人が出たんだ…当時オカ研の部室があった旧校舎で何か事件が起きて、事件の内容を知っているのは副会長とお狐さんだけだと思う…でも…アレは間違いなく…普通じゃなかった」

 亡くなったのはオカ研の会長、他にも怪我人数名

 旧校舎は倒壊して当時学校にいた生徒はソレを見た、何か解らないけど尋常じゃない何かを…対外的には老朽化による旧校舎倒壊、会長さんは持病があったとかで持病による発作で亡くなった事にされた

 でも誰もそんな事信じなかったそうだ

 会長が亡くなってオカ研は解散

 副会長は数日後に自主退学…理由は不明

 お狐さんは元々誰なのか不明だった事もあり不明のまま

 オカ研と事件はタブーにされ語られる事はなくなった

 そしてオカ研の関わった事件の一つに私とよく似た痣の話があったそうだ

 お姉ちゃんが二年生の時に当時の三年生の女生徒に同じような痣が浮かんで…その生徒は衆人環視の教室で見えないモノに押されたみたいに三階の窓から落下した…

 私もそうなるの?

 ああそうか…先輩が幽霊は『居る』って言った理由…先輩はオカ研を知ってたんですね…

 

 翌日

 私は、お姉ちゃんに学校を無理やり休まされお狐さんに会いに行く事になった

 お姉ちゃんはひどく緊張していて怯えていた

 お狐さんに会う場所は、副会長の住んでるマンション

 マンションに向かう途中でお姉ちゃんはスーパーに寄りATMでお金をおろして封筒に入れた

 さらに稲荷寿司を買ってエコバッグに入れ私に渡してきた「絶対に離さないで持ってなさい」って

 お狐さんって本当に狐ですか?稲荷寿司大好きな?

 そしてマンションに着いた…鬼が出るか蛇が出るか…と出て来た人は…ヤンママでした…

 副会長は茶髪の物凄い美人で胸が滅茶苦茶大きくて…赤ちゃんを抱いたヤンママだった…

 マンションの中は本当に普通のご家庭って感じで…赤ちゃんがいるからか室温が高く汗ばむくらい…リビングのテーブルには狐のお面を被った男性が座っていた…お狐さんがいた…

 副会長ことヤンママさんは赤ちゃんをベビーベッドに寝かせると私に自己紹介してくれた

 自己紹介の最後に両手を頭の上で狐の耳みたいに立てて「今は、お狐さんの愛人やってま~す」なんて言って笑った

 ヤンママさんに促され席につく、お狐さんは無言でヤンママさんが私に色々質問してきた、首の痣を見て「霊障だね~」なんて軽く言う

 お姉ちゃんは「コレ少ないですけど」と、お金が入った封筒を出して「妹を助けて下さい」と頭を下げる

 ヤンママさんは「う~ん、お狐さんは、もうやってないんだよね~」って、ちょっと困った顔をした

 お狐さんはお面で表情は解らないし一言も発しない

 お狐さんは全く無言で封筒を突きかえし…ヤンママさんが私の方を見て「あはっ」って笑う

 「仕方ないな~霊を払うのは出来ないけど、怪我しないように守ってあげるね~報酬分は働かないとだし」

 ??

 今、お金突きかえしましたよね?

 ベビーベッドに寝ていた赤ちゃんが泣き出してヤンママさんが赤ちゃんの所に行く…ヤンママさんの白い服が汗で透けて、その下のド派手なガラのシャツが見えた…えっ?唐獅子牡丹?!この人どんなセンスしてるの?!

 お姉ちゃんが土下座せんばかりの勢いでお礼を言って、私たちはヤンママさんのお宅を後にする

 最後にヤンママさんが「誰に聞いたか知らないけど~そのやり方は狡いよね~もう止めてね」ってお姉ちゃんに言った…お姉ちゃんは顔面蒼白だった

 

 ヤンママさんのマンションを出てから、お姉ちゃんは私の手を引き早足で歩いた

 マンションが完全に視界から消えるとお姉ちゃんは腰が抜けたみたいに道端に座りこむ

 「怖かった~」

 涙目のお姉ちゃん

 うーん…怖かっただろうか?ヤンママさんは終始優しく話してくれたしお狐さんはお面以外は別に…霊能者なんて言うからもっとおどろおどろしいのを想像してたから拍子抜けしたくらいだ

 お姉ちゃんは「背中見たでしょ」と…ああうん、ヤンママさん凄いシャツ着てたよね、元ヤンキーで昔は凄い怖かったとかかな?

 「あれさ…シャツじゃないよ」

 「へ?どういう事?」

 「シャツじゃなくて刺青…彼女は元はヤ○ザの愛人だよ」

 は?心霊関係ない怖い設定とかマジですか?

 「お狐さんの1番有名な武勇伝は…ヤ○ザの事務所で大立ち回りして愛人を奪ってきたって話」

 「それ心霊現象関係ないじゃん!!!!」

 いや心霊現象より、そっちがヤバすぎますわ…お狐さん怖すぎ…

 

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