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図書室の先輩

 恋の話をしよう

 高校1年の時に私は三年生の先輩に恋をした

 コレは、ちょっと不思議な私の体験と恋のお話

 

 私の学校の図書室で読書する生徒は二人だけ

 図書室自体を使う生徒は沢山いるけど、みんな机にノートを広げて勉強している

 シャープペンシルの芯を出すカチカチって音とノートに筆記するカリカリって音が小さく聞こえるだけの世界

 三年生は受験勉強の真っ最中だし本を読みたい人は学校から歩いて10分の大きな市立図書館に行くから、わざわざ学校の図書室で読書なんてしない

 この図書室で本を読む二人の内の一人は三年生で図書委員の先輩、もう一人が1年生で同じく図書委員の私

 誰も本を借りに来ない貸し出しカウンターに座って図書室を閉める時間まで二人並んで読書する

 先輩は背が高くて眼鏡が似合う知的な印象の男性で、なかなか整った顔立ちをしている

 既に大学へは推薦で合格が決まっていて受験勉強はもう必要ないって話

 先輩はいつも恋愛小説を読んでいるハッピーエンドで終わる甘い恋愛小説が先輩のお気に入り

 「後輩ちゃん、恋は出来る内にしておきたまえ、出来なくなってからじゃ遅いからね」

 いつだったか先輩が私に言った言葉

 『今、恋してますよ先輩に!』なんて言う勇気は私にはありません

 せいぜい他の図書委員に頼んで図書室の仕事を先輩と同じ日に調整してもらうだけ

 私は本は好きだけど特定のジャンルにこだわりは無くて面白そうな本のつまみ食い

 図書室では静かにって決まりだから先輩と私は隣に座っていても会話はほとんど無い、だから図書室を閉めた後から下校時間までの十数分だけが私が先輩とお話出来る貴重な時間

 話内容は、その日読んだ本の感想が大半

 「後輩ちゃんは面白い感想を持つなぁ」

 そんな事を言って笑う先輩

 先輩は私を『後輩ちゃん』って呼んで、決して名前で呼ぶ事はない、一度「私の名前は『後輩ちゃん』じゃありません」って抗議したら「じゃあ『ツインテールちゃん』かな」なんて言うのだから先輩は、ちょっと意地悪だ

 もうすぐ卒業する先輩、卒業前に告白するか否かが目下の私の最大の悩み

  

 その日の先輩の読んでた本は映画化され現在公開中のラブストーリー

 交通事故で車椅子生活になった彼女と恋人を最後まで支える彼氏なんて話で、映画はアイドルグループ『NT-R』の子がヒロインを演じて話題になっている

 私が読んだのは『怖い話シリーズ』なんてオカルトな本

 呪いの箱とか田舎の村の風習とか土地神様とか、そんな内容

 「後輩ちゃんは幽霊とか信じるタイプ?」

 「別に信じてるわけじゃないですけど…わざわざ心霊スポットとかには行きたくないですね、やっぱり万が一…って考えちゃいます」

 「そっか…」

 先輩は不思議と遠い目をしていて

 「先輩は幽霊とか信じてるんですか?」って私の質問に

 「その質問は意味が無いね、だって実際『居る』んだから」

 なんて答えた

 

 私のお姉ちゃんは我が校の卒業生で現在は大学1年生、一人暮らしをしている

 家に帰ると珍しくお姉ちゃんが来ていた

 リビングに寝転んでテレビを見てる、横にはお菓子とジュース…あんな自堕落な生活のくせに私よりずっとスタイルが良いのだから反則だ

 お姉ちゃんは「私は食べた栄養全部胸に行くから~」とか笑う…Aカップで悩む妹への当てつけですか?そうですか?

 「帰ってくるなんて珍しいじゃん」

 「彼氏と喧嘩して家出してきた…」

 ふーん、彼氏と喧嘩ねぇ

 ん?

 んんっ?

 何で彼氏と喧嘩したらお姉ちゃんが家出すんの?

 ぽくぽくぽくぽく…ちーんっ!

 「お姉ちゃん…彼氏と同棲してんの?」

 「あれ?言ってなかった?」

 「聞いてないよ!何で学生なのに同棲してんのさ!お父さんとお母さんが泣くよ!」

 「いや、二人とも知ってるし」

 「はぁぁぁぁぁぁっ?!」

 私は思わず絶叫する

 「そんな驚く事?」

 「驚く事でしょ普通!」

 「そんなんじゃ彼氏とか出来ないゾ」

 彼氏いない歴=年齢な私と違ってお姉ちゃんは彼氏を切らした事がない、今の彼氏は三人目…いや四人目だったかな?

 「好きな人とかいないの~?」

 「いいいいい…居ないしっ!」

 うわっミスった

 お姉ちゃんが鼠を見つけた猫みたいな顔でニタニタ笑う

 「そっかぁ~いるんだ~では可愛い妹のためにプレゼント~」

 お姉ちゃんが取り出したのは映画の男女ペアチケット…ちょうど今日先輩が読んでた小説原作の映画だ

 「それでデートに誘いなよ~」

 コレはアレですね、彼氏と行く予定が喧嘩して中止になった余りチケットですね

 とはいえ、ありがたくいただきましょう

 「ありがとう!お姉ちゃん!だーい好き!」

 なんて可愛くお礼を言ったのに…お姉ちゃんは…「若干キモイ」と答えましたとさ

 

 ペアチケットをゲットしても二人で映画なんて私にはハードルが高すぎます、どうぞヘタレとお呼び下さい

 そんなわけで私のとった作戦は、みんなで映画に行きましょう作戦

 ペアチケットをもう一枚自腹で用意して私と先輩が友人を一人づつ連れて行くって事で話は決まった

 私の友達はチケット代無料って事であっさり乗ってくれた、先輩は「日頃出不精な奴だから、たまには外に連れ出したい」って友人を誘い

 当日は、みんなで駅前に集合

 私だけ気合が入ったよそ行きな服で友ちゃんは全くいつも通り、先輩と先輩の友人は待ち合わせ時間ギリギリに到着

 先輩の友人が出不精な理由は会ってすぐ分かった、杖をついて歩いていたから、ちょっと右脚を引きずるように歩いている

 友ちゃんは先輩の友人に色々話しかけて勤めて私と先輩を二人にしてくれる、ありがとう友ちゃん…後でチョコパフェ奢るからね!

 映画館に到着すると友ちゃんが「席確保してきま~す」と駆け出しカウンターへ、そして各々に座席券を渡す

 友ちゃん、私、先輩、先輩の友人って並び順

 ありがとう友ちゃん!後でジャンボチョコパフェ奢るからね!

 映画は中々面白かったアイドルグループの子がヒロインって事で演技力を酷評する人もいるそうだけど、私は悪くなかったと思う

 まあ、本音は隣に座ってる先輩が気になって映画の内容なんて半分くらいしか頭に入って来なかったわけですが…

 映画の後は、近場のファミレスへ

 先輩とお食事ですよ!と緊張し過ぎたのか私は何でもない場所で思っきり転んだ…先輩の友人が咄嗟に服を掴んでくれなかったら顔面からテーブルの角に突っ込んでた…と、ゾッとする

 他のお客さんの何人かが派手な音を立てて転んだ私に注目して恥ずかしい…白い着物姿の女の子なんかスッゴい目で睨んでるし…お騒がせして申し訳ない…

 ファミレスでは主に映画の感想で話に華が咲いた

 「後輩ちゃんは面白い感想をするなぁ」

 先輩の何時もの台詞

 うーん…私の感性って他人と違うのだろうか?

 

 食事も終わり名残惜しいが解散の時間…なのだが…駅前でまたしても友ちゃんのファインプレー

 駅前のゲームセンターにちょっと寄りましょうって言い出し

 アレですよ…写真でシールを作るカップル御用達の…

 友ちゃんは「皆で撮りましょう」って四人バージョンで撮影、さらに二人づつペアで撮影

 先輩と先輩の友人は「男同士で撮影してどうする」とか笑ってましたが

 もちろん私と友ちゃんの目的は、私と先輩のツーショット!

 見事成功!!!!

 ありがとう友ちゃん!後でスーパージャンボチョコパフェ奢るからね!

 ここで本当に時間切れ

 先輩に家まで送ってもらいたい所ですが残念ながら私と先輩の家は逆方向

 駅前でお別れして私と友ちゃんは仲良く家路につくわけです

 駅のホームへと続く階段を私と友ちゃんは上り…

 「へっ?」

 階段を登り切る直前…私はトンと前から押された…不思議なのは私の前に人なんていなかった事、友ちゃんが何か叫んでいて…私は落ちた…はずだった

 今度は後ろからドンって何かが背中にぶつかる衝撃

 「ふべっしっ?!」

 私は奇妙な悲鳴と共にホームへと…

 隣で見ていた友ちゃん曰く、私は何も無い場所で何かにぶつかるみたいに階段から落ちかけ、直後に後ろから何かにぶつかるみたいにホームへ投げ出されたそうだ

 私の耳に…「チッ」って舌打ちする声が小さく聞こえた気がした

 帰りの列車の中で私は少しウトウトしてマフラーを強く巻きすぎたのか息苦しさで目が覚めた

 首のマフラーを巻き直す…

 コレが不思議な事件の始まりだなんて私は、この時全く気づいていなかったわけです

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