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私とあの日

今日は新体制になってから…私がキャプテンになってから、初めての公式戦の日。



イマイチ足が進まなかった。だって、あの日から、私は一度も………



「おはよー!若菜!」



体育館へのバスに乗ろうとしたら、そこに遥香がやってきた。



「ついに私たちの代初の試合だね!頼りにしてるよキャプテン!」



「………緊張するね」



お願い。頼りになんてしないで。エナメルバッグのひもをギュッと握りしめる。



あの日…先輩たちの最後の試合。負ければ先輩たちは引退する。



62-58。4点私たちが負けた状態でやってきた、スリーポイントの大チャンス。先輩たち3人と遥香には敵の守りがついていて、私にまわってきたボール。ゴール下に敵はいない。



時間はもうあまり残されていなかった。それでも、あのとき入れてたらまだチャンスは十分に残されていた。



大丈夫、練習はいっぱいしてきた。そう信じて投げた私。



でもそのボールは、ボードに当たって勢いよく跳ね返った。そして運悪く、ボールが飛んだ先にいたのは相手チームだった。



結果は66-60。あのとき私がスリーポイントを決めていたら、きっと勝っていただろう。



あの日以来、一切シュートが入らなくなっていた。



お願い。頼りになんてしないで。キャプテンとか言わないで。私はそんなことができる人じゃない。



体育館に着いた。麻里と1年生が先に来ている。



「あっ若菜。キャプテン10分後に集合だってさ。あとちゃんと忘れず記録帳持ってきたよ」



「ありがとう」



言ってなかったけど、麻里はマネージャー。あの日の試合で、麻里は記録帳を忘れるという大失態を起こした。今回は忘れてなかった…よかった…



まあ実際、私の失敗が記録されてなかったのはそんな麻里の失敗のお陰なんだけど。その点では感謝。もちろん、口が裂けても言わないけど。




そうこうしてる間に、試合はやってくる。遥香の活躍によりリードしている。流れ的にも今のままならどうにか勝利できそうだ。



そしてゴール目の前で、私にボールが回ってきた。決定的なチャンス。この前の出来事なんて関係ない。とりあえず、ここで入れなきゃいつ入れるの私…!



と、思ったその瞬間だった。



投げたボールを、すぐそばで相手に奪われた。試合が始まる前から「あの選手大きいから注意」とされていた選手だった。



自然と足に力が入って、その選手とボールを追いかける。



しかし、その選手…背番号3は、勢いそのままダンク。女子には珍しい、超パワー型。ゴール下にいた1年生も吹っ飛ばす勢いで、私たちは唖然とした。



こうしてちゃいられない!!



ハッと目が覚めたように、再び走り始めた。



「ドンマイドンマイ!次!」



自然と叫んでいた。3番から他の選手へのパスを、見事に1年生の悠が叩いた。その先にいたのは私だった。



リードはあった。でも一気に持っていかれた流れを、どうにかしてこちらに戻さなければいけない。



私の全力のパスは、遥香に届いた。遥香はそのままシュートする。



でも、そこにあったのはゴールではなく、またあの3番の腕だった。



しまった!今ゴール下には1人しかいない!



3番は勢いそのまま、ボールをゴールに向かって投げこんだ…



今は2点差。スリーポイントが決まってしまったら…そして時間的に、入ったらブザービート。



「走れええええええええええええええ」



何ができるわけでもないのに、とりあえず叫んでいた。私たち5人が一斉に走り出す。



しかし、ボールは…ゴール手前で重力に負けてしまった。



そこに鳴り響いたのは、試合終了を告げるホイッスル。



体育館全体の音が、一瞬消える。



そしてその次に出た音は、勝った喜びの声ではなく、安堵のため息だった。

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