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第1話 「アカシックレコード・オンライン」

新作です!是非感想お願いします!

「えっと、今日の予定は……、六時までボス周回で八時半から泥率上昇(ドロップアップ)イベ、十時からレイドボス討伐、午後五時からギルメンの募集でエルダ村のスポーン地点で待機、午後七時から二回目の泥率上昇イベ、午後十時から央都の酒場でギルドの会合、でもって一時から最前線のストーリー進行か……、よし、昼間に経験値稼ぎ(レベラゲ)で地下迷宮にでも籠るか」

 

 スマホの画面に映る『ギルドからのお知らせ』欄を見た俺は、締め切ったカーテンの下に無造作に置いてあるタブレットPCを取り出して、今日のタスクに予定を打ち込んでいく。只今の時刻、午前四時。今日の日の出は確か四時二十六分だったはずだから今頃外は朝焼けで薄っすら明るくなってきていることだろう。無論、外界との交流を完全シャットしている俺には関係のない話ではあるが知っているに越したことはない。

 

 いずれにしてもこの時間はまだ一般人の方々は寝ている時間だし、流石にこんな時間から起きて遊んでいる暇人なんてまずいないだろう……。ピロン……。静かな部屋にメッセージの受信を知らせる電子音が響く。前言撤回。いた。そんな暇人がいた。PC画面右下の緑のアイコンに注目すると小さな赤い円の中に1という数字。送り主は詳しくはわからないがおそらく、いや絶対にギルドの誰かからだ。なんせ、俺が友だち登録をしているのはギルメンと宅配ピザの公式垢だけだ。こんな早朝から宅配ピザの広告が来るわけもないから必然的にギルメンということになる。

 

 メッセージの内容は大体こんな感じ『ギルマスこんばんちゃ、ミルンです。いやぁ、もう朝から部屋に籠りっぱなしで気づいたらもう外が綺麗な夕焼けになってたんすよwwとりあえず夕飯食ってくるんでノシ』。おい、まず何ヵ所か突っ込ませろ。ミルンよ、おまえが見たのは夕焼けじゃない、朝焼けだ。それに夕飯じゃなくて朝飯だ。全くうちのギルドは廃人が多くて困る。これじゃまるで社会不適合者の集まりじゃないか。いや、あながち間違ってないし俺も人のことは言えないんだが……。


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 俺の名前は真坂颯大。順当にいっていれば現在高校二年生で青春真っ盛りのはずだ。しかしどういうわけか今俺は我が家の自室に籠り絶賛ニート中である。ことの発端は単純、「二年になりクラス替えをしたら思っていたより友達ができずにぼっちになって寂しいからずる休みしたらそのままやる気なくなっちゃった」というわけである。そんなニートな俺がハマっている、いや、魂を捧げているといった方が正しいものこそ、オンライン本格スマホRPG、「アカシックレコード・オンライン」、通称「ARO(アロー)」である。

 

 俺がこのゲームに出会ったのは去年の夏休み前、そう、ちょうど一年くらい前のことだ。クラスメイトに勧められてやり始めたわけだが、最初こそ暇つぶし程度だったものの今となっては生活の主軸となっている。引きこもってニートをしているんだから当然そうなるわけではあるが……。それにしても我ながら見事なくらいに怠惰な生活だ。朝食は食べず、昼食は通販で購入したカップ麺とポテトチップスで、夕食は基本宅配ピザか出前そば。加えると、曜日感覚を忘れないように、旧日本海軍に習って毎週金曜日の夕食だけは必ず出前カレーにしている。


 これだけ聞くとただ散財しているようにも思えるがその点は心配いらない。RMT制度(リアルマネートレード)が導入されているアローでトッププレイヤーの一人として活躍している俺にとっては小遣い稼ぎなど朝飯前だ。このRMT制度のおかげもあってかアローはリリースからたった二年で総プレイヤー数八千万人を突破した。ただRMTが許されているだけあってプロゲーマー級のゲーム廃人が集結しているという異様な事態が起こっている。スマホで簡単にプレイできるというだけあって、プレイヤーの年齢層は幅広く、とくに若年層プレイヤーの人口は他と比べてもかなり多めで、小学生のプレイに関してオンラインゲーム依存とコミュニケーション能力の欠如の恐れがあるとして政府が対策に乗り出したというニュースも記憶に新しい。

 

 ストーリーはファンタジー系で、ざっくりいうと「プレイヤー達が協力しあって世界誕生の秘密が隠されている『アカシックレコード』を見つけ出す」といった感じだ。オンラインゲーム故の特性として、二週間に一回のペースで新ストーリーの追加があって、毎度新エリアが少しずつ解放されていく。今のところストーリーはまだまだ途中で、アカシックレコードの手がかりはまだ見つかっていない。また、プレイヤー間の交流も盛んで、ギルド、パーティはもちろん、プレイヤー間取引を統括する商会やプレイヤー自らゲーム内の治安を守る騎士団なるものまである。この他者との密着性こそがアローが凄まじい人気を誇る理由の一つであり、俺のようなヒキニートがこぞって飛びつく理由の一つでもあるのだ。

 

 そんな夢のような世界が拡がるアローでは、俺みたいなヒキニートでもヒーローになれる。俺は現実でのコミュニケーション能力は皆無に等しいが、アローの中ではギルドのマスターをやっている。ギルドネームは「KoL」で、正式名称は「knights of lightning」。もともとは趣味程度で作った小さなギルドだったが、今は最前線でストーリーを攻略する有力ギルドになったという成り行きだ。ギルドからは濃紺のロングコートが支給されていて、このコートを羽織って一歩街へ足を踏み出せばすぐに注目の的だ。そんなビッグギルドを束ねる俺こそ、プレイヤーコード:sv907705、Lv.365、職業(ジョブ)剣闘士(グラディエーター)、プレイヤーネーム:「k-shark」、またの名を「雷迅剣」なるプレイヤーである。


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「さてと、じゃあ、地下迷宮でも潜りますか……」

 

 午前中のタスクを無事に処理して昼のエネルギー補給を終えた俺はベッドに横になるとスマホのホームボタンを押して、スリープモードを解除する。画面には案の定アローのチャットページが開いている。ページのアイコンには通知を知らせる赤いマルポチ。そこをタップすると約二百件ものチャットのプレビューが出てくる。たった十五分放置しただけでこの量だ。まあそのほとんどがフレンドリクエストであるため無視しているが、よく見ると、その中に一つ、不思議なメッセージがあった。


『助けてください! このままでは世界の記憶が』


 書いてあった文章はこれだけ。世界の記憶ってなんだ? そもそも助けるってなんの話だ? 不信に思ってそのメッセージを閉じようとするも画面のどこにも×ボタンが見当たらない。代わりに『助ける』というボタンがあるのみ……。


「いや、ちょいちょいちょい、待てよ! これ断れないじゃんか! とりあえずスクショ撮って後運営に報告するとして、今は助けるしか選択肢がないから仕方ない。助けてやろうじゃないの!」


 ポチッ……。


 決意を固めボタンを押した瞬間だった、若干のラグの後、俺は天地がひっくり返るような強い揺れと強烈な光に襲われた。俺の意識はそこでシャットアウトした。


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 目を覚ますとそこは見慣れた自室とは全く風景の異なる場所だった。現代日本では見られない作りの家や教会……。少なくとも自分が訪れたことはない場所だった。そう、訪れたことはなかった。だが俺はこの集落を知っていた。なぜならここは────。


「……始まりの地……エルダ村……」

 

驚きのあまり声が詰まる。似ているなんてレベルじゃない。全く同じだ。そして状況を整理して俺は呟く。



「……どうやら俺は、ゲームの世界に招待されちまったらしい……」


……と。



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