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迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
9/59

ラビリンス 9層

 小休止し、呼吸を整えた3人の冒険者が、小部屋を去ったのは数分後だった。


(アル。3人は階段を上ったか?)


『はい。すでに2層へと進んでいます』


 3人の話の内容にシローは、まだ驚きを隠せない。有名クランが、全滅こそしなかったようだが、解散につながるような魔物がこの下層にいる事を知ったからだ。


「なあ。アル……。今の話しが本当ならここの下層には、ジェイドバジリスクがいるってことだよな」


『はい。おそらく情報は正確なのもだと推測します』


「なあ。俺に倒せると思うか?」


『現状では無理ですが、いずれ可能になると思います』


 アルハナートの答えは可。


「現状では、無理だが将来は勝てるって事だな?」


『ラビリンスに入る前のマスターの評価値は100ですが、現在すでに105となっています。これは本日倒した魔物から得た経験によるものです。努力を重ね自身を強化していけば、マスターはまだまだ強くなることが可能です』


 1日、ラビリンスに籠った成果。成長がわかり易いようにと数値化した事で、見えにくい成長をシローは感じる事ができる。魔物を倒せば倒すほど冒険者は、成長し強くなると言うのは周知の事実だが、シローはより効率的に自身を評価することができる。


「なら俺はもっともっと強くならないとだめだな」


『はい。そのためのサポートをするのがアルハナートの役割ですから』


「なら俺は、もう少し寝る。休息をとったら探索を再開するからな」


『はい。ですが、寝る前に魔法を使用し魔力を使う事を推奨します。就寝中に魔力は回復しますので、ある程度魔法を使い魔力を使いきった方が、魔力は高まっていきます』


 魔力は使えば使うだけ増える。回復する分は、消費した方が翌日以降回復する総量が増えるのだ。


「なるほどな。鑑定魔法を使えば無駄なアイテムを持ち帰らずに済むしな。わかった幾つか宝箱から回収したアイテムを鑑定してしまおう」


 シローは、アルハナートの収納から入手したアイテムを取り出す。草の束1つ。液体の入った瓶1つ。鉄の短剣と胴のショートソード1本、本が2冊。

 シローは、呼吸を整えながら精神を集中する。


「まずは……満月草。毒消しだな」


 鑑定の済んだ満月草を収納にしまう。


「次は……回復ポーション。良品かこれはいざって時に使うか」


 回復ポーションを収納にしまう。


「鉄の短剣-1 胴のショートソードか…どちらも呪いはなしと。これは売るしかないな」


 短剣とショートソードを収納にしまう。


「あとは、本だな。テーブルマナーの本……と お!!」


 シローは鑑定に興奮する。


「魔法書か!」


『マスター。魔法書は、マスターの強化の早道です。是非ラーニングする事を推奨します」


 高額で取引される魔法書は、売ればかなりの金になる。しかし、鑑定済みの魔法書の出どころがばれれば色々とトラブルにつながる恐れもある。


「もちろんだ。売ることも難しいしな」


 シローは、鑑定済みの本を手に取ると魔法書の封を解く。魔法書等の本は、封を解くと効果が現れるようになっているので、封を解かれた本の価値はなくなる。


 シローが手にした本をめくると光が現れシローを包んでいく。


「よし。ラーニング完了だ」


 すでに何も記載されていない魔法書をラビリンスに捨て、シローは、右手を突き出した。


「アイスアロー」


 右手に青白い魔力が集まり、シローが意識した方向へ氷の矢が飛んでいき、壁に当たるとその周囲を氷漬けにする。


『おめでとうございます。マスターが氷魔法を習得したためアルハナートも同じ魔法が使用可能となります。これまでの火魔法に加え、氷魔法も使用可能となりました。また、新たな魔法習得でマスターの評価値が、105から120にまで向上しました」


「ずいぶんと増えたな」


『はい。使用可能な魔法の増加は、戦闘において重要な要素となります。魔物の苦手属性を使えるだけで戦闘を有利に進める事ができます。また、戦闘で魔法を使うようになればなるほど魔力が向上していきます』


「そうか。それは良いことずくめだな。金を稼いで手に入るのなら他の魔法書も買わないとだめだな。だが、最初からアルハナートはいくつかの魔法を使えたが、最初から覚えていたのか?」


『アルハナートが、初期から使用できる魔法は、火魔法と収納機能のみです。マスターとの契約時にマスターが使用している魔法に合わせ、探知魔法と迷彩魔法、強化魔法が使用可能となりました』


「俺が使っていた魔法って鑑定魔法か? 攻撃魔法は今回初めて覚えたはずだが」


『マスターが認識している鑑定魔法は、一般的な鑑定魔法とは違うものです』


「どう言う事だ?」


『回答に制限がかかっていますので、回答可能な範囲で返答します。一般的な鑑定魔法は、アイテムの識別鑑定のみ《・・》を行う魔法です。マスターの魔法は、それとは少し違うようです』


「鑑定以外もできるってことか? 気がついた時から何気なく使ってきたが俺の鑑定魔法は特殊なのか?」


『回答に制限がかかっていますので、回答困難です』


 腕を組みながらシローは考えるが、アルハナートが回答できないと言う事をこれ以上確認する方法もない。

  

「まあ。そのうちわかるかも知れないし、それはいいか」


 シローは気持ちを切り替えると横になり目を閉じた。使った魔力を少しでもさせたいと考えたためだ。シローは、考える事が多くすぐには寝付けなかったが、アルハナートに警戒を任せておけば安心だろうと言う気持ちもあって静かに寝息を立て始めた。


シローが目を覚ましたのは、翌朝だが当然ラビリンスの中では、太陽もないため時間の経過がわかりにくい。アルハナートの収納からパンと水を出して口に入れるとシローは、身体をほぐし3層の探索を再開する。

 3層の攻略も2層同様に右の壁伝いに歩きながら先へ進む事にした。


『マスター。次の角を右折したところに魔物がいます』


 アルハナートの索敵報告により魔物を感知。ラビリンス2日目の最初の魔物との遭遇にシローは緊張する。角まで静かに進み角から顔を出して奥をうかがった。


(あれが、噂のゴーストだな)


 アルハナートは、姿を消したままシローを先行し視認している。


『はい。ゴーストです。ゴーストも火属性が弱点です』


 弱点は、火だが魔法攻撃が有効な相手だ。


(氷魔法もダメージを与えられるよな?)


『もちろんです。火魔法に比べるとダメージは少なくなりますが問題はありません』


(わかった。魔法戦闘も経験したいから氷魔法で挑む。危険を感じたらアルは、火魔法で援護してくれ)


『了解しました』


 シローは、通路の角から飛び出すとすぐに左手の先から氷魔法を使う。


「アイスアロー」


 シローが放った魔法は、一直線にゴーストへ向かうが、攻撃が直線すぎたのかあっさりとゴーストに回避される。シローは、右手に一応剣を握っているが、相手は物理攻撃を受け付けないため、シローは次の作戦に出る。


「アイスウエポン」


 シローは、右手に握った剣に氷を纏わせるとゴーストに向かう。ゴーストのメイン攻撃は、触れた相手から体力を奪うドレインタッチだ。ゴーストも魔法を回避した後、シローへ向かって宙を舞うように近づいてくる。

 シローは、剣を構えると宙を舞うゴーストを切り付ける。1撃目と2撃目は、不規則な動きをするゴーストに回避されたが、間合いを詰めて放った3撃目がゴーストを切り付ける。すると剣が触れた場所から氷魔法が作用しゴーストにダメージを与える。半分透明にも見えるゴーストが、くっきりと見えたかと思うとぶるっと震えるようにして光に包まれ、そこに宝箱が現れた。


「不規則な動きが厄介だな。直線状に魔法を放っても距離があると回避されるか」


『はい。相手も魔法は回避しようとしますので。動きの鈍い魔物や大型の魔物でもなければ遠距離からの魔法攻撃は回避されやすいでしょう。小型の魔物やゴーストのような魔物の場合、槍や長剣など間合いの長い武器に魔法を付与した攻撃が有効です』


「そうだな。そのうちロングソードや槍あたりも入手したら使ってみるかな」


 

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