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迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
49/59

ラビリンス 49層

「これは……」


 本を手に取り本を開いた瞬間、シローの目の前に立体的な映像が映し出された。映し出されたのは、シーリーンに良く似た女性だが、映像の女性は感情的な表情をしている分、シーリーンよりも人間らしく見えた。


「マスター」


 映像が突然喋りだし、シローは唖然とするが、その女性の会話が続く。


「私は、本当のシーリーン=ルドアートです。正確に言えば封印されている私の抜け殻が、あなたの側にいるシーリーン=ルドアートとなります」


「封印?」


 シローが、そうつぶやくときちんとそのつぶやきに反応が返る。


「はい。私の魂は、いくつもに分けられ各地に封印されました」


「シーリーンは、戦闘ユニットだと聞いたが?」


「アルハナートですね」


『ご無沙汰しております。シーリーン様』


 これまでに聞いたことのないアルハナートの意志にシローも驚く。


「あなたには苦労を掛けますねアルハナート。ですが、よくぞマスターを導きここに至ってくれました。心より感謝したします」


『もったいないお言葉』


「おい。アル。俺をおいていかないでくれ。わかるように説明してほしい」


 シローは、慌ててアルハナートに説明を求める。


「いえ、説明は私がしましょう。もうマスターであるあなたは、ある程度の知識を得ていると思いますが、今、マスター達が古代文明と呼んでいる時代、この世界を管理していたのが私達です」


「世界を管理?」


「はい。文字通り、世界のあらゆるものを管理し平和な世界を築いておりました。しかし、とある事件がきっかけで私は、力を失いその力の源でもある魂も分断されてしまいました」


「事件?」


「敵が現れたのです。私達の管理を望まない者が、私達を打倒するためその事件を起こしました。世界を管理していた私とマスター。そしてその端末であるアルハナートは、それぞれ封印され、記憶を奪われ、破壊されました」


「まて、マスターと言ったが、俺も関係しているのか?」


「はい。マスター。あなたこそ記憶を奪われ飛ばされた私の唯一の主人ですから」


「では、俺は古代人と言う事か?」


「そう考えても間違いではありません。古代より今へ記憶を消され飛ばされたのですから。マスターが、今に飛ばされた後、私はばらばらにされ各地のラビリンスに封印されました。アルハナートの本体は、跡形もなく破壊されてしまいましたから」


「ではどうやって?」


「私は、ばらばらにされるまでの間に、アルハナートの機能の一部を分離させラビリンスの1つに隠しました。同時に私の魂が抜かれた身体を複製し幾つかのラビリンスに隠すことに成功しました。マスターは、無意識ながらもアルハナートへと私に接触しこうして再び巡り合ったのです」


「800年以上も昔からこの日のためにか……」


「はい。マスター。あなたとの再会のために」

『はい。マスターとシーリーン様のために』


 シーリーンとアルハナートは、この再開の日を待っていた。


「俺が、古代人でそのマスターと言うのは……」


「マスターの力は、「創造」の力です。有限の世界を繋ぎとどめるためには、無から創造しなければいけません。ですが、滅びを願う者達は、そんなマスターが邪魔だったのです」


「滅びを願う者?」


「はい。私達は、その者達をベイジャーと呼んでいました。凶悪な魔物を操り、破壊と滅びを目的とした者達です」


「そのベイジャーが、いたのは800年以上も前の事なんだろ?」


「いえ。はっきりは言えませんが、あの者達も代を重ね今もどこかで暗躍している事でしょう」


 本のシーリーンが、悲しそうな顔をする。


「ベイジャーか……俺の記憶がない原因が、まさかそんな話だったとはな……」


「マスターの力を奪う方法を考えていたベイジャーが、どのような方法でマスターの記憶を消し、マスターを未来へと飛ばしたのかは、私にもわかっておりません」


「俺は、どんな力を持っていたんだ?」


「マスターの力は、先ほどお話ししたように創造の力です。記憶と共に以前持っていた力は、奪われてしまったようですが、その力も徐々に回復しているのでしょう。そして、マスターが、お使いの魔法の一部は創造魔法と呼ばれるものです」


「創造魔法?」


「はい。無から新たな物を作る魔法です。マスターは、その力で私達を導いてくださっておりました」


 アルハナートとシーリーンの説明を受け、シローは過去の自分が、どのような存在であったのかを知る。徐々に他の者と自分が違う事も理解しつつあったシローは、シーリーンの話しを聞き納得できる部分も多かった。


「それで、俺はこれからどうしたらいいんだ?」


「マスターさえよければ、分断された私の魂の回収をお願いしたいのですが?」


「シーリーの魂は、どこにあるんだ?」


「はい。マスター。私の魂は、各地のラビリンスの中に封印されています。今日、見つけていただいた本もそのうちの1つです。封印を解いていくたびに私の力も取り戻せますので、よりマスターを支える事ができるようになります」


「そうか。なら今までのように各地のラビリンスを攻略していけばいいんだな」


「はい。マスターの力を早く取り戻すためにもラビリンスを攻略する事は、重要ですので、同時に進めてくださればよいかと思います」


 確かにシローの力を高めつつ、シーリーンの魂を取り戻すのは効率的だとシローも考えた。


「わかった。これからもラビリンスの攻略を続けるさ」


「マスター。ありがとうございます。では、私はそちらへ」


 そう本の映像のシーリーンが言うと映像が途切れ、側に立つシーリーンが、光に包まれた。


「融合完了。マスターのおかげで、魂の一部が解放されました。これからもよろしくお願いします」


 あきらかにこれまでのシーリーンと雰囲気が違う。どこか人間臭さと言うか生きていると言う感じがしている。


「本来のシーリーは、今のような感じなのか?」


「そうですね。本来の私は、今のような感じですね」


 今までよりもかなり表情も豊かで動きも滑らかなシーリーンが、そこにいる。少女のような容姿もより、女性らしさが増したようにも見える。


「まあいいか。それよりもこれからもよろしくな」


「はい。マスター。どうか私達をお導きください」


『この階層は、これで最終層となります。この部屋に転移装置がありますので、転移装置を使うと出口まで到達可能です。また、攻略達成後、ラビリンスは自然消滅します』


「このラビリンスが、なくなると言うことか?」


『はい。ラビリンスは、解放されると消滅します』


 これまでより回答制限が、かからなくなったのかアルハナートの説明も詳細に及んでいる。


「シーリーンの魂が封印されているラビリンスの場所は、わかるのか?」


『はい。シーリーン様の魔力を感知可能ですので封印されているラビリンスに入ると感知可能です』


「なら、入り口で判別できると言うことだな」


『はい。判別可能です』


 ラビリンスの攻略には、マッピングの都合もあるので時間がかかる。入り口で判別が可能なら無駄足となる事はない。それにもしかしたら攻略途中のラビリンスに封印されているならそれほど手間もない。


「なあ。どのラビリンスもここみたいに11層にボスがいるのか?」


『いえ。最終層は、11層とは限りません。難易度によって階層には違いがあります』


「わかった。なら難易度の低いラビリンスから優先的に攻略していくさ」









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