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迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
47/59

ラビリンス 47層

 その後、王と王女、賢者の間で様々な点について相談や報告がなされた。


 賢者ユシルは、近衛兵同様に王直属の配下となり、名目上は王国の顧問として王国に仕える事が決まる。また、活動に縛りは設けず、賢者は魔法の研究やラビリンスの研究を続ける事になった。ヒルデは、隣国への同行を願ったが、ユシルはラビリンスへの再挑戦を願った。この数年で鈍った身体を鍛え直し、冒険者活動も再開する決意を2人に伝えた。

 冒険者活動の傍らこれまでのような数は、熟せないが本の鑑定も続ける事を約束する。王国の魔法関連の顧問として近衛兵の一部に対魔法戦の知識を持たせる事と数名に魔法書で魔法を覚えさせる事を起案する。

 今回の事件を受け、魔法への備えが必要となった事から近衛兵の質をさらに高める事には、王も王女も賛同した。


 話し会いの結果、ユシルを責任者として、近衛兵の鍛錬もかねたラビリンス探索クランを立ち上げる事が決まる。クランのメンバーは、ユシルの他、近衛兵数名とスカウト、ポーターを加えたクランとして形成され、定期的に訓練をかねラビリンスへ挑戦する事になった。


 王城のベランダから賢者ユシルを交えて訓練に勤しむ近衛兵を間もなく嫁ぐ王女と眺める王が


「此度、お前から危急の知らせがあると言われ、このような仕儀となったが、どこからの情報であった? 王城内で暗躍する者達の情報など容易に知れる事ではあるまい」


 ヒルデは、王に聞かれると


「かつて、共に冒険をした方からの情報です。本来であれば、目立つような事は嫌がられる方なのですが、私達の身を案じて手配くださったのでしょう」


「ほう。ヒルディーが、変わったことも今回の手配もその者の仕業か」


「わ、私が、か、かわったなどと」


「儂には、ヒルディーが、すっかり変わったように見えるがな。それと安心せい皆良い方に変わったと言ってくれておる」


「願わくば、その方の事は詮索されませんようにお願いいたします」


 ヒルデが、父王に頭をさげる。


「わかっておる。敵対の意志はなく、救ってまでもらっておいてそのような事をすれば、儂の沽券に関わるじゃろうしな」


王の言質を得てヒルデは胸をなでおろす。そして、同時に姿勢を正すと王に向き合った。


「明後日、いよいよ私は、隣国へ向かいます。これまでの私の数々のわがままをどうかお許しください。そして、これからは、王国のためこの身を捧げる覚悟で行ってまいります」


「お前を自由にしてやれぬ父を許せ。儂は、心からお前の幸せを願っておる」


「はい。どうか国王様もお体をご自愛ください。私は遠くからルシエル王国の発展を願っております」


 その2日後、ルシエル王国と隣国バラトール王国の同盟を維持するため第三王女ヒルディーは、バラトール王国へと旅立った。







「フレイムスピアー!」


 シローが、放った炎の槍が何本も突き刺さるとオーガロードもたまらず仰け反った。突き刺さった場所から次々と炎があがり、オーガロードの皮膚を焼いていく。再生能力のあるオーガロードでも再生するすぐ側から焼かれていくため回復が追いつかないのだ。


「シーリー!」


 シローの指示を受けたシーリーンが、炎を消そうと暴れるオーガロードに接近すると炎を纏った拳をみぞおち部分にめり込ませる。

 あまりの威力に巨大なオーガロードも壁まで吹き飛び九の字に折れるように倒れそのまま息絶えた。


「オーガロードのタフさには毎回苦労させられるな。シーリー大丈夫か?」


「はい。マスター」


 オーガロードの所から戻ってきたシーリーンに声をかけるが、どこにも傷は負っていないようだ。


「アル。評価値を出してくれ」


『了解しました。マスターの評価値は、822 魔力値 325 アルハナートの魔力値 298 シーリーンの魔力値 296です』


「なら、今日手に入れたクリスタルを使えばアルもシーリーも魔力値300に達するな」


『はい。共に魔力値300を越えます』


「これでこの層で目標としていた数値はクリアだ。次の層へ向かうつもりだが、どうだ?」


『はい。問題ないと考えます』


「なら、次は、ルーレリアンの11層を目指すぞ」


 シローは、王都のラビリンスの1つスラージの10層まで進む事に成功していたが、ある程度10層で戦うとそれ以上進むのを諦める。まだ、実力的に先に進むのは困難だと考えた。

 ヒルデのクランから離脱した後、ペアで挑戦し続ける事も考えたが、さすがに目立つようになってきたため、再びシロー達は、ルーレリアンに戻り攻略を再開している。


「アル。収納は、まだ問題ないか?」


『マスターの魔力値が、上昇したことで収納量も比例し増加しています。初期のおよそ5倍ほど収納可能ですので当面心配はないものと考えます』


 大量の食糧と水を詰めた収納に日々、ラビリンスから入手される武器防具などが詰められていく。最近は、価値の低い物や重複するような物は、捨てるようになってきた。

 王都だけで金に困るような事は、一生ないくらいの金を手にしたシローの金銭感覚はすでにおかしくなっている。


「よし。休憩を終えたら11層への階段を降りるぞ」


 シローは10層の攻略に目途が立ち、いよいよ自身にとっても初の11層へと足を向ける。すでに10層のマッピングは、終えており階段も見つけているため後は、その階段を降りるだけだ。

 シローが、その11層へ向かう階段を降りていくといつか体験した空間が現れた。


「また、ボス部屋のようだな」


『後方の階段が封鎖されました。マスターのお考え通り、ボス部屋のようです』


 階段を降りた先は、広い空間が開け部屋の中央には、ボスと思われる巨大な魔物が見えた。その姿は、亀なのだが、その様相はあきらかに凶悪な物だ。


『エンシェントロックタートルです』


 アルハナートの報告を聞き、シローは作戦を考える。亀だけに動きは鈍そうだが、防御力は相当なレベルだろうし、攻撃もブレスなどが想定される。亀の口から覗く鋭い牙や前足の爪のような物を見ると亀らしくない部分も多い。

 目の前の魔物が、魔法にどの程度抵抗するのかによっては、攻撃手段も限られるだろう。


「それでも倒すしかない。シーリー! 俺と一緒に前衛に出てくれ。アルは、強化魔法をかけ、俺の側で待機!」


 覚悟を決めたシローは、すぐに行動に移る。すでにロックタートルもこちらを視認し、動き始めていた。先制は、ロックタートルのブレスだ。

 土属性のブレスらしく、ブレスと言うよりは岩のような塊を噴射してくるような攻撃だ。物理抵抗の低い者ならこれだけで跡形もなく消し去られかねない攻撃だが、シーリーンは、プロテクトシールドを展開し防御、シローは、アルハナートのシールドビットによりブレスを防ぐ。アルハナートのシールドビットは、アルハナートに従う球体3つが、逆三角形を形成し面となった防御壁を構築している。


 必殺とも言えるブレス攻撃を受け止めたシローとシーリーンは、懲りずにブレスを準備するロックタートルとの距離を詰め二手に分かれる。これでブレスを封印する作戦だ。ロックタートルは、ブレスを諦めると目の前に現れた少女を鋭い爪で蹴飛ばそうとするが、スピード感のない攻撃はあっさりと回避された。命中さえすれば一撃で相手を倒せる攻撃も当たらなければ意味はない。


 シーリーンが、右手に炎を纏う「フレイムフィスト」をロックタートルの足に打ち込む。足だけでシーリーンの2倍以上背丈のあるロックタートルの足の関節部分が、拳の形に陥没しそこから炎があがる。


「ぐるがあああああ!」


 怒りで咆哮したロックタートルの牙が、シーリーンを襲う。






 

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