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迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
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ラビリンス 4層

「こ、ここは? とりあえず壁の中ではなさそうだが……」


 テレポーターでどこかへ転送されたシローは、周囲を見るがまだ目が慣れておらず、そこがどこかを把握できない。転送されれば、マッピングも意味がなく自分がどの方向を向いているのかさえわからないのだ。


「最悪じゃないけど最悪だな……」


 ようやく目が暗がりに慣れてきたシローは、周囲を確認すると四角い部屋の中にいることがわかった。シローは、その部屋のほぼ中央におり、方向はわからないが、1つの壁の手前側に何かが置いてあるのがわかった。ゆっくりと歩きながらシローは、その壁際に向かう。


 壁に近づくにつれようやく視認できるようになると壁の前には祭壇のような物があり、そこには肩幅くらいある宝箱が設置してあった。普通なら歓喜するところなのだが


「さすがに今すぐには開けたくないが……」


 シローは、宝箱を確認だけすると部屋の外周に沿って歩く。そして、再び祭壇のある壁まで来ると大きくため息をついた。


「この部屋に出口はなしと……閉じ込められたってことか」


 自分が罠にかかったのが悪いのだが、わずかに見えた希望が再び見えなくなった。


「この箱にまたテレポーターの罠が仕掛けてあれば、もしかすると脱出できるかも……」


 そんな宝くじにでも当たるかのような確率にすがるほど、今のシローには余裕がない。何もしなくてもこの部屋で餓死するだけと言う事は理解している。


「なら、この箱を覚悟して開けるしかないな」


 他に方法がないと考えたシローは、少し考えた後に覚悟を決めた。祭壇に載せられた箱に両手をかけた。鍵もかかっていないその箱は、あっけなく開き特に罠も仕掛けられていなかった。


「なんだこれ?」


 宝箱の中にあったのは、複雑な模様がついた球体で大きさは、人の頭よりも二回り小さいくらいの物だ。すでに怖い物はないと両手でその球体を取り出し良く見るが、それがシローには何なのかわからなかった。


「なら。鑑定するまでだ」


 両手でその球体を抱えたまま、シローは意識を集中する。他の物が見えなくなるほど集中力を高めたシローは、鑑定魔法で球体を光の膜で覆った。いつもなら数秒もあれば、それが何かを判別できるのだが、この球体はなかなか手ごわい魔力がガンガン吸われるように吸収されていく。それでも1分が経過した頃……


『魔力の伝達を確認。魔力パス接続。魔力識別によりマスターを認識』


「え?」


 何が起こっているかわからずにシローが、その球体を放り投げると球体に施された模様に沿って光が走り、落下する事を途中でやめるとシローの前に浮き上がり空中で静止した。


『起動成功。ユニットに異状なし。魔力供給およびその他パスも正常に起動中』


「……」


『初めましてマスター。アルハナートです』


「マスター? アルハナート?」


『はい。あなたが私のマスターです』


「えっと……君はなんだ?」


 シローは、空中に浮かぶ球体に話しかける。


『私は、球体型補助ユニット、アルハナートです』

 

「補助ユニット?」


『マスターの活動をより効果的にする機能を持ったユニットです。現在、探知機能、収納機能、戦闘支援として魔法を行使する事が可能です。また、必要に応じて透過する事やマスターの脳に直接意志を伝達する事も可能です。マスターもアルハナートに対して直接指示を出すことも可能です』


 アルハナートと自己紹介した不思議な球体からは、若い男性の声が聞こえる。だが、耳に届くと言うよりは、直接頭の中に響いてくるようにその声は聞こえた。


(頭の中で考えただけでいいのか?)


『はい。マスターと私との間には、魔力パスがありますので距離が離れていなければ直接伝達可能です。また、通常私の声はマスター以外には認識する事はできません』


 シローが頭の中で聞いたことに返答があったためシローもそれを理解した。


「も、もしかしてだが、アルハナートの機能があればここから脱出できるか?」


『検索します……。可能です』


 アルハナートの返答にシローは驚く


「ど、どうやって?」


『この部屋を調べたところ隠し扉を発見しました。そこからこの部屋を脱出可能です』


 シローは、きょろきょろと部屋の外周を見るが、どこにも扉になるような壁は見当たらない。


『マスターが望むならば、隠し扉を開きますがいかがしますか?」


「あ、ああ。頼むよ」


『それでは隠し扉を開きます』


 アルハナートが、祭壇の反対側の壁まで空中をすーっと移動していくとアルハナートの表面が光る。何かの魔法を行使したのだろうが、シローにはその魔法が何かわからなかった。


「なにか魔法を使ったのか?」


『はい。探知魔法の1つを使いました。扉を開けます』


 そうアルハナートが、回答すると壁に先ほどまでなかった亀裂が入り、手前にスライドすると横にずれるように隠し扉が現れた。


『遺跡1層部、南西の小部屋から通路につながっています。マップを確認されますか?』


「ああ。頼む」


 するとシローの頭の中にラビリンスの地図が表示され自分がどこにいてどこを向いているのかが映し出された。まだ、シローがマッピングしていない場所だったが、すでにアルハナートが表示したマップは、1層部分がすべて表示されていた。


「すごいな。アルハナートは、こんなこともできるのか?」


『マスターの活動をサポートするのが私の役目です』


「そうか。あと、アルハナートは、少し長いからアルって読んでも良いか?」


『マスターがお望みなら』


「じゃあ。アルの事を少し聞きたいから教えて欲しい」


『かしこまりました』


「アルは、探知魔法が使えると言ったが、それはどんな事が可能だ?」


「周辺の索敵を行い魔物などの存在を把握する事が可能です。また、あらゆる罠の探知が可能です』


 索敵がもしシローの考えた物であれば、ラビリンスで魔物に襲われる事はほとんどなくなる。加えて罠をすべて回避する事ができる。アルハナートの話しが本当にならば今日のような事故に会うこともない。


「すごいなアルは、それとさっき透過と言っていたが、アルは姿を隠せるのか?」


『はい。迷彩魔法により姿を消す事が可能です。姿を消しますか?』


「ああ。一度そうしてくれ」


 するとシローの前に浮かんでいた球体が完全に消えた。


(姿を見せてくれ)


 シローが頭の中でそう言うと。再び球体がシローの前に現れた。


「透過か……。アルの事は、他の者に見せたら驚かれるどころじゃないな。俺以外がいる場所では、透過していてくれ」


『了解しました』


「あと、収納機能と戦闘機能について教えてくれ」


『はい。収納機能は、私が発生させる別次元と接続する魔法により起動します。有限ではありますが、マスターが必要とする物品等を収納可能で、指示いただければいつでも取り出す事が可能です。ですが、収納内に生物をいれると死滅します。また、収納内では時間が経過しません。戦闘機能は、戦闘補助魔法、攻撃魔法などでマスターをサポート可能です。私自身に、直接戦闘する能力はありませんので、サポートは魔法が中心となります。なお、使用する魔力は、マスターから供給されていますので、過度に魔法を使用するとマスターが魔力切れを起こしますので、こちらで使用できる魔力を制限調整します。現在、探知魔法の他火属性の魔法を習得していますが、マスターが魔法を覚えれば私も同じ魔法が使用可能となります』


 魔法は、比較的だれでも使用可能だが、使いすぎれば魔力切れを起こす。魔力切れは、意識の喪失や昏倒してしまうため避けなければならない。

 魔力は、鍛えれば増加するため、日々魔法を使ううちに少しずつ増えていく。シローは、元々魔力が高い方だが、これは鑑定魔法を高頻度で使用してきたためだ。


「最後にアルは、古代に作られた物なのか?」


『回答に制限がかかっていますので、回答可能な範囲で返答します。アルハナートが、作られたのは今から842年前となります』


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