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迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
34/59

ラビリンス 34層

 スラージは、一般的なラビリンスらしく壁は、土壁でこれと言った特徴のないラビリンスだった。シローの経験でいわば、ヒルテインのラビリンスボグルドに近い印象だ。


 ダームの案内で、迷う事もなく階層を下りる。途中にある罠や浅い層の魔物を無駄なく処理して進み、ダームの予定どおり、その日のうちに7層に到達する。途中には、他のパーティーやクランの姿もあったが、6層、7層と進むうちにその姿は減っていった。


「なあ。7層に挑んでいるのは、どのくらいいるんだ?」


 シローが、ヒルデに聞くと


「そうね。今のスラージには、5つくらいのクランが7層以降に挑んでいると思うわ」


「思ったよりも少ないな。あれだけクランやパーティーがあるのに」


「単純に実入りを考えたらわざわざ7層に行かないで5層あたりで稼ぐ方が、安全だし効率がいいのよ」


「それで、5層あたりには、人が多かったのか」


 冒険者にとって、稼ぎこそが重要だと考えるクランが多い。元々目的が、金稼ぎであれば、安全に効率よく稼げる階層が、良い仕事場と言えるのだ。


「シローは、7層の魔物でも大丈夫だと思うわ」


 ここまで戦闘らしい戦闘はなかった。魔物が現れるが、ブッカやヒルデがさっさと倒してしまうのだ。だが、ここからは、エターナルウインドにとっても未踏の通路へ進むことになる。

 7層の途中まで攻略を進めているエターナルウインドは、ダームの指示で、通路を進む。


『マスター通路の先に魔物がおります』


 先頭を歩いていたダームが、手を横に振り、前方に警戒するようにハンドサインを送る。ダームも魔物を見つけたようだ。


「戦士前に出ろ。魔法使いは、状況に応じて待機」


 ブッカの指示で隊列を変更する。前衛に戦士4人が立ち、後衛に魔法使いが待機する。ポーターたちは、最後尾で後ろを警戒する。


 現れたのは、ヘルハウンドが3体。犬型の魔物で素早い動きをして噛みついてくるヘルハウンドは、エターナルウインドの面々を見てすぐに飛び掛かったりしない。

 3体で警戒するようにこちらを睨み威嚇してくる。ソロやペアなら数の利が、向こうにあるので襲ってくるが、こちらが9人もいると魔物も警戒するようだ。このあたりもクランの力と言えるかもしれない。


 ブッカの指示で戦士が、間合いを詰めていく。


「魔法で牽制した後、戦士が前に出る」


 魔法使いのメイレインが、ファイアアローを撃つのをみて、シローもアイスアローを放つ。このアローも1本2本と本数を増やすと攻撃性が増すのだが、メイレインが3本の火の矢を撃ったのでシローも3本の氷の矢を放った。


 合わせて6本の魔法の矢が、ヘルハウンドに向かいそのうちの2本が1体のヘルハウンドに突き刺さる。


「いまだ!」


 ブッカの指示で、4人の戦士が一気にヘルハウンドに剣を向ける。魔法で警戒どころじゃなくなったヘルハウンドは、連携もできず前から襲ってくる戦士に相対した。ブッカとヒルデは、ロングソードでダルカスは、槍、シーリーンは短剣で攻める。

 魔法の矢が刺さったヘルハウンドは、足に刺さったシローの氷の矢で縫い付けられており、ダルカスの槍を避けられず、串刺しにされ倒れる。

 一番奥にいたヘルハウンドに素早さを活かして詰め寄ったシーリーンは、ヘルハウンドの爪を交わすと首筋に短剣をねじ込んであっさりと首を切り落とした。

 シーリーンの動きに味方のヒルデとブッカも焦ったが、残る1体もヒルデとブッカに挟まれる形となり、あっさりと切り倒された。

 

ソロやペアで戦うシローと違い、数の利や連携を活かした戦闘は、短時間にあっさりと勝利をもたらした。


「すごいな。氷魔法が使えるとはうらやましいね」


 魔法を一緒に放ったメイレインが、シローを見て言う。


「僕はね。生まれた時からこの火魔法だけは使えたんだよ。いつか大魔法使いになるなんて子供の頃夢見てこの世界に入ったけどなかなか簡単な事じゃないって気がついたのは最近なんだ。シローは、王都で売っている魔法書を見たことがあるかい?」


「いや。まだ魔法書を売っているところは見ていないな」


「何度かオークションに魔法書が出たと聞いたことがあるけど店では売っていない。だから新しい魔法を覚える機会は、ないに等しいんだ」


 シローも王都で、魔法書を探していたがまだ売っている店は見たことがない。シローは、すでに氷魔法を使ってみせが、炎や雷、聖魔法は見せない方が良いと考えた。


「ああ。俺も子供の頃からたまたまこの魔法が使えたんだよ」


 とっさに自分も同じような物だと伝える。シローが、メイレインと魔法談義していると


「おう。やはり魔法使いが2人いるといいな。シーリーも申し分ない動きだ」


 がはははとブッカが、笑いながらシローの肩に手を回す。


「それにしてもシロー。氷魔法かよ。いいかげんお前には、驚かないつもりだったがやられたな」


「しばらくは、メイレインに合わせて連携するつもりだ。指示があれば、アローとウオールくらいは問題なく使えるから言ってくれ」


「お前が、ソロできる理由がひとつわかったな。氷魔法は相手を拘束する事もできるから便利で良い」


 シローが、ブッカ達と連携方法などについて話している横で、シーリーンに話しかけるヒルデがいた。


「シーリーさん。凄い動きですね。どのように訓練したらそんな動きができるのですか?」


 シローは、側で耳立ててシーリーの答えを聞いている。


「はい。まずは、感情を消し去る事です。恐怖や痛みは、身体の動きを悪くしますから。その上で最善の動きを模索します。いかに効率よく身体を使うかを意識して動きの無駄を省きます」


 簡単にできなさそうな事を言うシーリーンだったが、ヒルデは納得できたのか真剣に聞いている。彼女のそんな貪欲な思いが、彼女をさらに強くするのだろう。


 そんなこんなしているうちに現れた宝箱2つの罠の確認したダームが、宝箱を開け中からクリスタル1つと何かの瓶を手に入れていた。休憩時に使用した水や食料で空いたスペースにアイテムを詰め、ブッカ達は、探索を再開する。


 完全に分業する事で、戦闘から次へ向かうまでの時間が短いクランは、順調に7層の探索を続ける。ダームが、索敵で見つけ、ブッカ達が魔物を倒す。アイテムの回収や運搬をポーターが行う。また、ポーターの2人が、限られた食材を用いて調理してくれたりすることも士気の維持には、重要な事がわかった。


 ラビリンスに籠り3泊目にエターナルウインドは、7層から8層に降りる階段を見つける。見つけた時のヒルデやダームの喜びはシローの予測を上回っていた。

 シローとシーリーンを加えたクランは、安定感を増し5体前後の魔物も効率よく撃破していく。その安定感は、各自の力量をいかんなく発揮させていった。


「お嬢。どうするまだ1日くらいなら行けるぞ。8層を見るか?」


 階段の前に集まっての相談で、ブッカが、ヒルデに確認する。ヒルデが、その整った顔を両手でぴしゃりと叩き


「進みます。だけど油断は絶対にダメ。慢心せず、挑戦者でいる事を忘れないで」


 そのヒルデの姿勢にうかれていた面々の顔に緊張が戻る。良いリーダーだなとシローは思った。


「ああ。俺の言いたい事は、お嬢が言ったから確認だけだ。この先は、地獄かもしれねえ。油断する奴は、帰れねえからな。いいな!」


「「「おう」」」


 気持ちを新たにエターナルウインドは、未知の8層へと足を踏み入れる。 


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