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迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
33/59

ラビリンス 33層

 昨晩の夕食時にエターナルウインドの他のメンバーを紹介されたシロー達は、一通りの挨拶も済ませ、冒険者談義に花を添えた。

 話のほとんどは、エターナルウインドのこれまでの軌跡と活躍を語るものだったが、シローはそれを興味深く聞いた。ソロかペアしか経験のないシローにとって、10人近いクランで挑むエターナルウインドの話しは、とても参考になっていた。特に戦闘において前衛後衛と言った役割分担の事やポーターの存在などについては、参考になるものだった。


 翌日出発する事もあり、酒席は短い時間で打ち切られ各部屋に戻ったシロー達は、そこでゆっくりと体を休めた。夜間には、シーリーンとアルハナートと明日からについて相談する。


(アル。シーリー。聞こえるか?)


『はい。マスター』

(はい。マスター)


(明日からヒルデ達と潜る。おそらく一気に6層まで進み、7層以降に行くだろう。俺は、サポートに徹してクランが8層あたりまで出られるようにするつもりだ。シーリーは、戦士として周りの戦士に合わせて行動してくれ。敵の攻撃を受け止めるのではなく回避して短剣で戦うスタイルで頼む。アルは、索敵を中心にしてくれいざとなったら指示するから補助を頼む) 


『了解しました』

(はい。マスター)


 翌朝、高級なベッドと布団の中で目を覚ましたのは早朝だった。太陽がようやく顔を出し始めた時間に起きたシローは、手早く着替えると身体を動かそうと外へ出る。

 エターナルウインドの本拠には、通常なら立派な庭園があるだろう場所に簡易ながら修練場が、作られており、シローはそこを借りて簡単な運動を始めた。

 シローは、軽い運動をするつもりで修練場に来たが、修練場には、備え付けられた剣や槍があったので、借用し剣や槍を振った。思いのほか、気持ちよく夢中で武器の鍛錬をしているとアルハナートから後ろでヒルデがこちらを見ていると報告があった。


「そこで見ているだけか?」


 シローは、背中を向けたヒルデにそう聞く。


「見惚れていました。少し相手をしていただけますか?」


 そう返したヒルデは、側の剣をとってシローの前に立った。


「ラビリンスに潜るのは、今日だから軽めにな」


 シローは、そう言って剣をかまえた。しばしの沈黙を経て、2人は、剣を向け動き出す。シローが、牽制も兼ねて剣を振るとヒルデは、その剣を綺麗に捌く、お返しとばかりに剣を返すとシローもその剣をお手本通りに返した。

 剣と剣が交錯し相手を突き放すように両者が、間合いを取る。


「やはり、ヒルデは剣の才能があるな。前に見た時よりもずっと良い感じだ」


「初めて、先生の剣を見ましたが、想像以上ですね」


 シローは、剣を少し降ろして片手で頭をかく


「なあ……その先生は、やめてくれないか? もう指導役は終わったはずだぞ」


「でもまだまだ、あなたから習う事が多いと思っています」

 

 再び、シローに剣を向けたヒルデの鋭い突きが、シローを襲う。シローは、その突きを回転するように回避して間合いを潰すとヒルデに懐に入り、ヒルデが剣を引き戻すぎりぎりで剣を返す。

 ヒルデも引き戻した剣で、何とかシローの剣を受け止めるが、あきらかにシローが剣を向けるのを送らせている。


「こうして、剣も習いたいくらいですから。やはり、先生で良いと思います」


「だがな……クランの代表ともなれば、俺みたいな若造に師事を求めるわけにもいかないだろ」


「では、皆の前では、控えます。2人の時だけでも良いので師事していただけますか?」


 今度は、シローが、横に薙ぐように剣をヒルデに向け、ヒルデがそれを受け止める。シローは、軽く振っただけだが、ヒルデの身体がわずかに浮くくらいの威力があった。ヒルデが、何とか受け止めた剣を払いシローに打ち返してくるが、その剣はシローに問題なくさばかれていく。


「いつまでもとは言えないが、機会があればヒルデの修練の相手くらいはできるだろうさ」


「わかりました。今は《・・》それで結構です」


 ヒルデの顔に笑みが浮かぶ。


「さて、これ以上は、ラビリンスに潜る事にも影響するからお終いだ。俺も汗を流してさっぱりしてから行きたいしな」


「ええ。私もそうするつもりです」


 ヒルデも修練場に剣を戻し、シローと屋敷の中へ戻る。屋敷のロビーには、すでに準備を始めたクランのメンバーがおり


「お嬢。また朝から鍛錬か?」


 皆にお嬢と呼ばれるヒルデの気さくさと親しみやすさは、クランの仲間を見ているとシローにもよくわかった。改めてヒルデの資質とも言えるカリスマ性をシローは高く評価する。


「ええ。私は、もっと強くなりたいですからね」


 シロー達は、汗を流した後、簡単に準備を済ませるとロビーに集合する。クランのメンバー全員が揃うと代表のヒルデが、挨拶を始める。 


「トールとフリッカの怪我は、もう1月もあれば完治すると医師も話しているわ。ここまで私のわがままでラビリンスの攻略を急がせている事も、皆に無理をさせている事も代表である私の責任です。それでもラビリンスに挑み、昨日の自分たちを越えて行きたいと私は思っています。皆の力を高め力をつけて深淵をめざしましょう。誰もたどり着けていない深層にエターナルウインドの風を届けましょう!」


「「「おおおおう」」」


 メンバーの気持ちのこもった掛け声がロビーに木霊する。無理はしないが、自分たちにできるぎりぎりにその身を置き、挑み続けるクランの姿勢をシローは感じた。このクランは、ヒルデの思想に賛同した者達の集まりだから不満や文句を言う者もいない。


 準備を整えたヒルデ達は、荷物の最終チェックを行い滞在できる日数などを確認していく。大きいが効率よくまとめられた荷物を背負うポーターとヒルデが持っているマジックポーチには、食糧や水が詰め込まれていく。クランの他のメンバーも交代で食糧などを分けて持つようだ。

 シローとシーリーンももそれにならい自前の背負い袋に自分の分の食糧や水を詰める。水が痛まないようにするのに水を入れた水筒に清水石と言う小さな石を入れる。最も重くなるのが水なのでエターナルウインドでは、ヒルデのマジックポーチに水を入れた樽を入れられるだけ入れているようだ。


 総勢9名の食糧は、1日3食とすると1日で27食必要になる。基本的に目的の層までは最短距離を進み初日に行ける所まで行くのが、攻略の基本だ。目的の層で探索を続け、帰りも初日のように最短距離で戻るのだ。順調にいけば目的の7層まで1日あればぎりぎり行けるとダームが話している。いかに効率よく進めるかが鍵となる。途中の罠などもすでに把握できているため一向は、地図を持つダームが先導することになる。


 準備を終えたエターナルウインドは、荷物を背負うと第3ラビリンスであるスラージへと向かう。シローは、初めて向かうラビリンスのためついて行くだけだ。

 スラージは、人気のラビリンスと言う事もあり、ラビリンスに入る先客も入り口に並んでいる。


 順番を待ち、入り口で兵士に入場料を支払うとエターナルウインドは、隊列を組みラビリンスの中へ歩き始めた。最前列にダーム。その後ろにブッカとヒルデ。中央に魔法使いのメイレインとシロー、ポーターの2人。後方にダルカスとシーリーンと言う隊列だ。


(アル。マッピングはしておいてくれ)


『了解しました』


 シローは、せっかくなのでスラージのマップも把握しておく事を決める。


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