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迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
26/59

ラビリンス 26層

 まどろみの中、シローが見たのは、巨大な魔物と戦う者達の姿。


 見たことのないような魔法や武器を駆使して巨大な魔物と戦う者達は、次々と攻撃を加えていく。


 巨大な魔物を囲み次々と武器や魔法でダメージを与える者達が、優勢かと見ていると、巨大な魔物から放たれた光の波があっさりと形勢を逆転させる。


 光に波に飲み込まれた者達は、一瞬で蒸発するようにそこから消えさり、そこには焼け跡だけが残される。一瞬で決着した戦場にひとりの男が現れ、何かの魔法を使うと先ほど蒸発するように倒れた者たちがたちまち復活し、再び武器を取り魔物に攻勢をかけ始めた。


 しかし、巨大な魔物に、いくら攻撃しても決定的なダメージを与えられない。さらには、巨大な魔物の身体から小さな魔物が生まれるように現れ戦況を変えつつある。


 先ほど周囲の者達を復活させた男が、何もないところから大きな剣を作り出しその剣を手にとる。周囲の者達が、その男の行動をサポートするかのように巨大な魔物までの道を切り開くと、その男は巨大な魔物の側まで歩み寄り魔物と対峙する。

 巨大な魔物が口から先ほど放った光の波を放出しようとしたとき、目の前の男が消え、男が現れた時には、巨大な魔物の首は地面に落ちていた。

 




『マスター』


 アルハナートの声でシローは、急に夢から覚める。


「ここは? 俺は……」


『はい。マスターは、鑑定魔法を使った際に激しい頭痛に襲われ意識を失っておりました』


 シローは、首を動かしあたりを見る。シローは、シーリーンの膝の上で寝かされており、頭上にはふわふわと浮いた球体がシローを見ていた。戦闘中は、金属の武器を跳ね返すシーリーンの膝も今は、柔らかく暖かかった。


「マスター。大丈夫ですか?」


 膝枕したまま、上から顔を覗かせるシーリーンが、シローの安否を確認するが、シローは少し照れくさい。


「ああ。ずいぶんと心配をかけたみたいだな。よくわからないが俺は大丈夫だ」


 シローは、むくりとシーリーンの膝から起き上がると自分の身体を確認する。どうやら身体に問題はないようだと安心する。ふとアルハナートの周りを動く球体をシローは見つける。


「それは?」


 シローが、頭痛の原因となった物がそこにあるのを見てアルハナートに聞くと


「マスター。先ほど、マスターが起動したのは、補助ユニットアルハナートの追加装備です」


「アルの追加装備? 結局、その球体はなんだったんだ?」


『これは、アルハナートの武器であり、防具となる装備です』


 アルハナートは、アルハナートの周りをまわるように球体を動かしたり、一列に整列させたりしている。


「具体的には、その装備は何ができるんだ?」


『はい。3つの球体を前面に出し球体間を各属性魔法で結ぶ事で、相手の魔法を遮断したり攻撃を受ける事が可能となります。また、各球体からそれぞれ魔法を発動する事も可能となります』


 アルハナートの説明が本当なら、シローは新たな防御手段と攻撃手段を得た事になる。


「そうか……欲しかった防御手段が、手に入ったのは良い事だな。後で、アルには、実際にその効果を見せてもらうさ」


『了解しました』


「さっきのは、アルやシーリーを起動させた時と同じだったのか……変な夢のようなものを見たし、アルやシーリー達と関係があるのかもな」


『マスターが、倒れた事は予想外でした。装備の起動は無事に完了しており、パス等に問題はありません』


 シローは、身体の動きをチェックしながら周囲を見る。


「結局、このボス部屋は、なんだったんだ? ここが4層って事じゃなさそうだが?」


『先ほど、マスターが休まれている間に確認しました。3層と4層の間の階段部分に魔力の痕跡があり、どうやらマスターは、意図せずこの部屋の起動スイッチを押したものと推測します』


「階段にそんなものがあったのか?」


『結果論となりますが、そのようです』


 階層間をつなぐ階段に仕掛けがあると言う話をシローは聞いたことがなかった。それにボス部屋と言う話しは、冒険者の間で、そのラビリンスの最下層にあると噂されているものだ。

 誰もが目指す、ラビリンスの最下層だが、いまだにシローは最下層までたどりついたと言う話しを聞いた事がない。もし、そんな偉業を成し遂げていれば、王都あたりで大きなニュースになっているはずだ。


「まあ。わからない事をこれ以上考えたってわからないものは、わからないからな」


 シローは、そう言うと本当の4層に向けて階段へ足を向ける。確認のために4層に降りてから一度3層に戻ってみたが、先ほど戦闘したボス部屋はそこになく3層に戻っていた。


『何かしらの方法で別の空間に転移したようですね。もしかするとマスターの魔力が何らかの作用を起こし、このような機会を得たのかもしれません』


 アルハナートにもはっきりとした回答は出せなかったため、シローはそれ以上この原因を考える事をあきらめた。


 4層に降りたシローは、いつも通り探索を始める。意識を失っていた間に休息もできたのか不思議とシローは身体が、軽いと感じた。


「なあ。アル。俺の評価値はいくつになった?」


『マスターの評価値は、326 魔力値 125 アルハナートの魔力値 121 シーリーンの魔力値120となっています』


「ずいぶんと俺の評価値があがっているな、魔力もずいぶん増えているしボスを倒したからか?」


『詳細は不明ですが、何らかの影響により急激に上昇したようです。同時にアルハナート及びシーリーンの上限値をマスターの魔力が上回りましたので、早急に魔力結晶を追加する必要があります』


「おそらく5層あたりからクリスタルを得られるだろうから、手にいれたら追加するさ。それよりもアルが手にいれた新しい力の確認をしよう」


 シロー達は、4層の探索を進めながら魔物を探して歩く。こういったときは、不思議と魔物と出くわさないものだ。索敵にかかる落とし穴の罠などを回避し、通路を進むとアルハナートから魔物の報告がある。

 現れた魔物は、ロックゴーレム。先ほど、シロー達が倒した魔物と比べると一回り小さいが、同じゴーレムだ。


「あきらかにさっき倒した奴とは違うな。アル行けるか?」


『確認のため攻撃を受けます。氷魔法を選択します』


 アルハナートの周囲に浮かんでいたアルハナート自身より少し小さな球体が、シロー達に気づき突進してくるゴーレムとの間に展開する。3つの球体が逆三角形の形となり、その球体の間に氷魔法が使われるとその形どおりに氷の壁が完成する。


 ゴーレムがそこに突進してくるが、氷の壁に阻まれ突進がストップする。


「これが、防御だな」


『次は、この状態から攻撃に移ります。雷魔法を選択します』


 3つの球体を結んでいた氷が消えると3つの球体が発光し、その1つ1つからサンダーアローが放出される。1つの威力は、シローが使うものよりは弱そうだが、3つから発射される魔法がゴーレムに突き刺さるとゴーレムは、力つきた。同時に複数の魔法を行使できることにシローも驚く。


「本当に攻防一体だな。まだ他にもあるのか?」


『はい。マスターが、放った魔法を増幅加速させるエレクトロンと言う攻撃が可能となります。3つの球体の間を通過した際に、初級魔法であれば中級魔法レベルまで加速することが可能です。サンダーアローは、サンダースピアーへ加速させる事が可能です。本体同様に透過できるため相手に視認されずに力を発揮することが可能です』




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