ラビリンス 25層
「アル。俺の評価値は、どうだ?」
『マスターの評価値は、278魔力値は105です』
シローは、新たなラビリンスに来て、わずかながら上昇した事を確認する。
「やはり、浅い層だとこんなものだな」
3層までに見切りをつけたシローは、そのまま4層へと向かう。いつもどおり下層に向かう階段を進む。シローが、その階段を下るときに壁面に手を振れると
「お? 明らかに何か違うぞ」
シローがそう言ったようにこれまでの様相が一変していく。
「普通の通路じゃない?」
『マスター。3層と4層の間に生じた特殊空間のようです。マスターの知識を借りますとこの部屋は、ボス部屋と言った方が、わかりやすいかもしれません』
「ボス部屋!? ってことは、ボスがいるのか?」
『はい。この部屋の中央に巨大な存在があります。また、4層へ戻る階段が遮断されたようです』
あまりに突然の事だが、シローの前に巨大な岩の塊が動き始める。
「ゴーレム?」
『はい。ロックゴーレムですが、通常のロックゴーレムではありません。エンシェントロックゴーレムと思われます』
「エンシェントって事は、古代文明関連か?」
シローは、手にミスリルのロングソードを握りながらアルハナートに確認する。
『はい。強固な装甲を持っている他、魔法も使う事ができます』
「厄介な相手だな。シーリー先行してゴーレムの気を引いてくれ、俺も背後にまわって攻撃する」
「はい。マスター」
指示を受けたシーリーンが、速度を上げてゴーレムに向かう。シローは、ゴーレムの左手側へ回り込むように走り出した。
「アル。相手の攻撃パターンを見切るまで、補助魔法をいつでも使えるように待機していてくれ」
『了解しました』
シーリーンが、正面からゴーレムに向かう。およそシーリーンの3倍は、あろうかと言う大きさのゴーレムに速度を活かして突っ込むとゴーレムが右手でそれを払うように腕を振る。
空気を切るような音がしたが、ゴーレムの動きはシーリーンを捕らえられず、シーリーンの右拳がゴーレムの腹部に突き刺さる。
「ぐおおおお!」
これまでの魔物ならこの一撃で粉砕できていたが、さすがにのけぞるだけでダメージが届かない。両腕を組んだゴーレムが、足元にいるシーリーンを狙って腕を振り下ろす。
避けられないと判断したのかシーリーンも腕を交差させてゴーレムの一撃を受け止める。
「ズズーン!」
重量感のある金属同士がぶつかるような衝撃音が、部屋に響き渡る。ゴーレムの巨体から振り下ろされた重い一撃は、受けとめたシーリーンをそのまま床に縫い付ける。シーリーンが、床とゴーレムの腕に挟まれて砕けたようにシローは見えた。
「シーリー!」
シローが、シーリーンを心配して呼ぶとシーリーンの身体が、粉砕される前の姿に巻き戻るように再生していく。再び、元の身体を取り戻したシーリーンは、ゴーレムの足を掴むと小さな体で片足を浮かせ、ゴーレムをひっくり返した。
「今だ! ライトニングアロー」
仰向けに転がったゴーレムの頭に雷の矢を振らせる。雷を纏った矢が次々とゴーレムの頭に突き刺さり、バチバチと音を立てた。
『マスター。ゴーレムから魔法が来ます』
アルハナートの報告にシローもシーリーンも後方に飛ぶ。わずかに遅れて仰向けになったゴーレムの身体が、青く光ると周囲が、半円状に包まれた。
『アースフィールド。土系統の範囲攻撃魔法です。あの半円の中にいる者にダメージを与えます』
シローのライトニングアローは、確かにダメージを与えていたが、ゴーレムを倒すだけのダメージを与えてはいない。そして、今、ゴーレムが使った魔法は、広範囲を標的にする上級魔法だ。
「アル。シーリーは、どれくらい耐えられる?」
『マスターの魔力がある間は問題ありませんが、再生可能なのはあと1回が限度でしょう』
これまでの攻防でダメージを与えたのは、シローのライトニングアローの一撃だけ。それもほんのわずかのダメージだろう。
「うまくないな。やはり、接近して雷か氷魔法で強化した武器で攻撃するくらいしかないか」
シローは、ミスリルのロングソードに雷魔法で雷をまとわせる。
「シーリー! 援護してくれ。アル、強化魔法を!」
シローは、武器に雷をまとわせ、ゴーレムに向かって走り出す。途中でアルハナートが、シローに強化魔法を使うとその速度は、一気に加速する。
ゴーレムは、向かってくるシローに備え、迎撃態勢に入るが、横合いから飛び蹴りしてきたシーリーンに膝の後ろを蹴られぐらりと体制を崩す。体制を崩したゴーレムの肩口に雷を纏ったロングソードが打ち込まれる。ビリビリビリと雷に打たれたようにゴーレムの身体から煙があがる。さらにシーリーンが、その拳を何度もゴーレムに打ち込むとさすがの装甲にもひびが入り、最後には砕け散った。
それでもまだ動こうとするゴーレムの装甲が砕けた場所に氷魔法を打ち込む。砕けた装甲部分が氷に覆われたところへ止めとばかりにシーリーンが、大きく振りかぶった拳を打ち抜くように振り下ろすとゴーレムの身体全体にひびが入り、動きを止めた。
警戒しながらゴーレムを見ていたが、どうやら倒せたのかゴーレムは光に包まれて消えていった。そこには、豪華な宝箱が残されている。
「あ、危なかったな。ぎりぎりだぞ」
『はい。現状の戦力では、負けてもおかしくない戦いでした」
「シーリーも大丈夫か。無理させてしまったな」
「はい。マスター。シーリーは大丈夫です問題ありません」
シーリーンは、問題ないと言うが、ゴーレムからもらった一撃は、一時的にせよシーリーンの身体を破壊するだけの力があった。
「それにしてもボス部屋か。噂には聞いていたが、まさか4層で遭遇するとは思わなかった」
周囲の状況を見るが、大きな部屋と言うだけで他に何かがあるような雰囲気はない。シローは、戦利品の宝箱の前に立つ。
『罠はかかっておりません』
アルハナートの確認を済ませたシローは、ゆっくりとその箱を開けた。
「なんだこれ?」
豪華な宝箱の中にあったのは、小さな玉が3つ。シローは、宝箱の中の小さな球体にそのまま鑑定魔法を使う。ぐぐっと魔力が吸い取られるような感触があり、いつもならすぐにその対象の情報が、わかるのだが今回は違った。
「なっ! うあ……」
『マスター?』
シローの頭の中に異常な量の情報が入り込む。シローは、宝箱の中から手を引き抜くように後ろに転がる。情報の渦が、シローに激しい頭痛を与える。シローの脳裏には、見たことも聞いた事もないような知識や情報が次々と流れ続ける。
「うぐ…」
シローは、両手で頭を抱えたまま膝をつき頭痛に耐えるが、そのあまりの痛みに耐えきれずシローは気を失った。




