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迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
24/59

ラビリンス 24層

「本当に何もないな。シーリー大丈夫か?」


「はい。マスター。活動に支障はありません」


 シローが、ヒルテインの街を出て数日が経過するが、いまだに目的地であるラビリンス、ルーレリアンにはたどり着かない。ヒルテインの街を出て1日が過ぎた頃から大地は、赤土の荒地となり、ごろごろと大きな岩が並ぶ風景が続いた。

 水に不便な場所であり、耕作にも向かない土地には、人は住むことがないのだ。


 事実、これまでも道らしい道もなくただ延々と荒地が続いており、見かけるのは背の低い乾燥に強い木くらいで生き物の姿はない。

 そんな荒地をシローとシーリーンは、フードを深くかぶった姿で歩き続ける。


 何度か休憩し歩き、荒地で何泊かしたころ。シローは、埃っぽい砂を含んだ風の向こうに建造物らしきものを見つけた。


「アル。あれが、ルーレリアンか?」


『そのようです』


 徐々に姿を現したのは、本当に何もない荒地の中にできた洞窟。その洞窟の隣に小さな木造の小屋が作られているが、長年の風雨にさらされたのかぼろぼろになっていた。

 シローは、とりあえずその小屋のドアを開けるが、中は埃と砂でざらざらになっており、満足に使える様子もなかった。


「これを見ると本当に誰もいないってのを信じられるな」


『周囲を探知魔法で調べましたが、何もおりません』


 シローは、シーリーンと共に小屋を最低限度掃除すると寝袋を出して寝る事にする。道中、満足に眠れていなかったため屋根や壁があるだけでも贅沢に感じる。

 アルハナートやシーリーンは、睡眠自体を要しないが、シローが寝る時には活動を控えている。


 数日ぶりにぐっすりと寝る事ができたシローは、目を覚ますとアルハナートの収納から水と食料を出す。大量に購入した食料や水筒に入れた水は、半年以上は持つ計算だ。


「さて、いよいよ俺にとって2つ目のラビリンスだ。このラビリンスの情報はないしマップもないから最初は、慎重に進めるつもりだ」


「はい。マスター」

『了解しました』


 シロー達は、準備を整えると装備を確認してルーレリアンへと足を運ぶ。何度も潜ったボグルドと違い、勝手のわからないルーレリアンの様子に少し緊張しながらもシロー達は、足を踏み入れた。


 下へ延びる階段は、砂まみれにはなっていたが、問題なく侵入することができた。壁の色は、赤土色で床は、濃い茶色をしている。水気がなく乾燥しているのは、荒地と一緒だった。


 階段を降り1層へ着くも道は、一本道が続く。


『マスター。すぐのところに罠があります。落とし穴ですので回避ください』


 アルハナートが、罠を見つけ報告してくれる。入り口すぐの一本道に落とし穴とは、なかなか良い正確をしている。入るときも出る時もこの落とし穴は、気を抜けない。

 落とし穴を避けるため壁際を進み罠を回避する。


 落とし穴の先で通路は、3つに分岐した。いつも通りと言わんばかりに右の通路へ足を向ける。少々暗くなってきたが、目が慣れれば十分に通路の先を視認する事も可能だ。


『マスター。前方から魔物です』


 通路をかなり進んだところでアルハナートから魔物発見の報告が届く。1層に出るような魔物ならそれほど注意する事はないが、何がいるかは重要だ。

 シローの視界にのそのそと動くトカゲが現れる。


「リザードか?」


『はい。ロックリザードです』


 現れたのは、岩のような鱗を持つトカゲだ。しっぽも入れれば2mはある大きさだ。


「シーリー。少し攻撃を受けてみてくれ」


 華奢な女性にさせる事ではないが、シーリーンの実力を知ったシローは、相手の攻撃パターンを調べるためにシーリーンに攻撃を受けさせる。

 しっぽによる攻撃、噛みつき攻撃を繰り返すが、他には注意すべき事はなさそうだ。


「シーリー。もう止めをさしてもいいぞ」


「はい。マスター」


 指示を受けたシーリーンは、右手でトカゲの頭を叩くとロックリザードは身体ごと壁まで吹っ飛び絶命する。光に包まれロックリザードは消えていった。


「初宝箱はお預けみたいだな」


 ロックリザードを倒した後、通路がさらに分岐する。再び右の道を選択して通路を進む。罠を1つ解除し進むと再びアルハナートが魔物を見つけた。


「ゲゲゲゲ」


 気持ちの悪い声をあげる魔物は、イボイボのついた蛙の魔物だ。紫色や緑色が混じるその身体は、見るからに毒々しい。


『ポイズントードです。毒を持っていますので注意ください』


 シローの現状の課題の1つが、回復手段や状態異常に対する備えだ。おそらくポイズントード自体は、苦も無く倒せるだろうが、万が一毒を受ければ回復手段は、毒消しポーションくらいしかない。十分な数は用意してきたが、無限にあるわけでもない。


「ライトニングアロー」


 十分な間合いを取り、シローは魔法を使う。動きがそこまで早くないポイズントードは、何一つできないうちに雷で身体を焼かれ消えていった。そこには、初宝箱が残る。


『罠はかかっておりません』


 アルハナートの声を聞いたシローは、宝箱を開ける


「草の束か。やはり浅い層だとこんなものだな」


 シロー達は、1層の探索を順調に進め、それほど時間を要せずに1層のマッピングを終える。  


「さっさと2層へ進むか」


 2層へ降りる階段のところで休息をとったシローは、1層の確認を行う。


「魔物は、ロックリザードとロックパペットと土系統が多いな。あとはポイズントードか」


『このラビリンスの傾向は、マスターのおっしゃるとおりのようです』


「罠は、スイッチ系のものが多いと。特に落とし穴がやけに多いな」


『多人数での攻略を防ぐ狙いがあるのではないでしょうか』


 ラビリンスには、傾向と系統があると言うのが、冒険者の中では通説だ。火の傾向があれば、出てくる魔物も火系統の物が多い。同様に毒の罠が多いラビリンスなど罠にも隔たりがある事が多いのだ。


 シローは、ラビリンスの中の生活にかなり順応を見せており、当初のような疲れも見せなくなった。加えて、アルハナートやシーリーンが、寝ずに警戒できるためシローは、好きな時に寝る事もできるようになった事も大きい。


 およそ3日間をかけてシロー達は、2層と3層のマッピングを終えた。シローは、ラビリンスを出てもあのぼろぼろの小屋が、あるだけならそれほど違いはないとラビリンスの中で寝泊まりする事に決めている。アルハナートの収納があれば、食料や水にも心配がない。


 3層から4層へ降りる階段の側で、シローは宝箱の中から入手した物の鑑定を始める。すっかり手馴れてきたシローは、徐々に鑑定魔法の使用にも集中を要さなくなってきていたが、本人はほとんど気づいていない。


「浅い層だと武器や防具は、鉄や銅が多いな」


 鉄のショートソードや短剣などは、重いが価値は低い。胴などは、さらに価値が低いのでそれらでできた武器防具をシローは必要としていない。側に市場でもあれば換金も考えるが、側に市場もないラビリンスでは抱えていても意味はないのだ。


「価値の低い物は捨てて行こう。アルの収納も無限じゃないと言っていたしな」


 収納が75%となったときに報告すると言っていたアルハナートの収納上限は、1度だけアルハナートから報告があった。このときも鉄や銅の武器や防具が、大量に嵩んだ事が原因だった。


「ポーションの材料もこのまま役に立たないが、嵩張らないからとっておくか。本は、相変わらず趣味関係なんかが多いがこれもとっておこう。各種ポーションは、重要だからいくらあってもいいな」


 シローは、アイテムを整理しながら必要な物と必要のない物にわけていく。アルハナートの収納の整理を終えるのに数時間を要した。









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