ラビリンス 21層
「そうか。シーリーもアルと同じで魔力結晶を吸収する事で強化されるのか」
「はい。マスター。シーリーは、マスターの魔力の増加と魔力結晶により強化されます」
シーリーンは、アルハナートと同様にシローの魔力と魔力結晶により強化されるようだ。
「シーリーは、人型だが、食事とかはどうなんだ? 食べたり飲んだりするのか?」
「はい。マスター。シーリーは、マスターの魔力があれば食事は必要ありません」
シーリーンから食事は必要ないと聞き、シローは、目の前の女の子がアルハナートと同様な存在だと改めて認識する。
「シーリーは、他に何かできる事があるのか?」
「はい。マスター。私にできるのは、基本的に戦う事だけです」
戦闘ユニットと言うだけあってシーリーンは、戦闘以外に何の機能もないと言う。
「そうか。一度、シーリーの戦闘を見てみないとわからないな」
シローは、彼女がどうやって戦うのか興味を持つが、今は他の確認が先だ。
「アル。この部屋には、他に何かあるのか?」
アルハナートに確認すると
『シーリー以外の戦闘ユニットは、確認できません。壁面にある箱の中にシーリー用の武器が収納されています』
「武器? 肉弾戦すると言っていたが武器もあるのか?」
『現状のシーリーでは、使用不能ですが、将来的に使用可能となる物です。アルハナートが、回収し収納しておきます』
アルハナートは、そう言うと壁面にあった箱型の物から金属製の物体を回収していく。側でにこにことアルハナートの回収を見守るシーリーンがいたが、シローには、それが何かはわからなかった。
『マスター。すべて回収を終えました』
「あ、ああ。わかった」
これ以上は、何もないとアルハナートに言われたシローは、隠し部屋を後にする。隠し扉にアルハナートがコードを接続すると再び部屋は閉ざされ、そこには何もなかったかのように壁ができた。
シローは、わからない事が多くアルハナートに聞こうかと思ったが、回答制限がある質問になるだろうと聞くのをあきらめた。
「じゃあ。せっかくシーリーを仲間にしたのだからシーリーに活躍してもらうか」
「はい。マスター」
シローは、シーリーンを連れて6層の探索を再開する。アルハナートを連れてはいたものの、今シローの隣を歩くのは間違いなく人型の女性だ。ソロで挑んでいたシローにとって仲間と連れ立って歩くのは、ヒルデと一緒に活動した時以来の事だ。
『マスター。通路の左に魔物です』
「数は、わかるか?」
アルハナートは、索敵後、視認するために通路の先を確認に向かい戻ってくると。
『数は、2体。スケルトンです。弓装備と盾装備です』
「そうか。シーリー。戦闘になるが大丈夫か?」
「はい。マスター。問題ありません」
シローは、シーリーンの笑顔を見て覚悟を決める。
「よし。シーリーは、先行し魔物を倒してくれ、俺が後に続く。アルは、俺達のサポートができるように待機してくれ」
『了解しました』
「はい。マスター」
シローが、合図するとシーリーは、とてとてと走りだす。やはり見た目は普通の女の子にしか見えない。だが、戦闘に特化した戦闘ユニットだと言う以上、アルハナートよりも戦闘向きなのだろう。
シロー達の姿を見つけたスケルトンは、すぐに体制を整え襲ってくる。剣と丸い盾を持ったスケルトンが、接近するシーリーンに向けて剣を振るう。シーリーは、よけることもなく左手でその剣を受けとめるようだ。シローは、とっさに庇おうとも思ったが、シーリーンを信頼して、奥で弓をかまえるスケルトンに集中する。
「ガキン!」
左手でスケルトンの剣を受け止めた時に金属同士が、ぶつかるような音が聞こえる。スケルトンの剣の方が、跳ね返されるように弾けた。
剣をはじいたシーリーは、特に慌てる様子もなく右手の拳をスケルトンに叩き込む。重量感のない身体にも関わらず、その拳を盾で受け止めたスケルトンが、派手に吹き飛んだ。通路の壁面にまで吹き飛ばされたスケルトンは、粉々になりそのまま光に包まれる。
シローは、弓を使うスケルトンの矢を槍で切り伏せていたが、1体のスケルトンを倒し終えたシーリーンが、いつの間にか弓を持つスケルトンの横に立っており、左手を払うように振る。
パンッっと乾いた音が響くとシーリーンが、振れたあたりの骨が砕け散る。スケルトンの骨は固く頑丈なのだが、シーリーンの力だと粉砕してしまうようだ。
光に包まれたスケルトンが、宝箱をおいて消えていく。
「すごいな。シーリーが、ここまで強いとは、思わなかったよ」
「はい。マスター」
シーリーンが、笑顔でシローの所へ戻ってくる。シローは、なんとなくシーリーンの頭を撫でた。嫌がるそぶりもなくシーリーンは、シローの側に立つ。
『罠はありません』
アルハナートの声に正気に戻ったシローは、スケルトンの宝箱を開け、中から瓶を回収するとアルハナートの収納にしまった。
「シーリーが、これだけ強いなら最初に見つけた魔物部屋もいけそうだな」
数が多いため攻略を後回しにしていた部屋を思い出したシローは、シーリーを連れて最初の部屋に戻る。通路を右手に進み小部屋が見えてくるとアルハナートに確認を頼んだ。
アルハナートは、透過したまま小部屋の中を視認してからシローの元へ戻る。
『魔物部屋には、スケルトンが3体、グールが2体、ファントムが1体いました。スケルトンは、それぞれ剣と盾、弓、大剣を装備しています。また、ファントムは、希少種です』
魔物が混在している上に、物理耐性のあるファントムの希少種までいるとなると難易度は高い。シローは、シーリーンがいても無理すべきではないと考えたが、シーリーンの意見を聞くことにする。
「シーリー。今聞いた魔物がいるが戦えると思うか?」
「はい。マスター。ファントム以外なら問題ありません」
「アルは、どう思う?」
『連携すれば可能でしょう。物理攻撃が通用する魔物であれば、シーリーは十分に戦えます。マスターが、ファントムの相手に専念できるように補助します』
確かにシーリーンに、スケルトンとグールを任せる事ができたらシローは、ファントムに集中することができる。
「シーリーは、魔法攻撃を受けても大丈夫なのか?」
「はい。マスター。多少の魔法は、レジストしますので心配はいりません。現状なら初級魔法はレジストしてみせます」
レジストとは、魔法を弾く事を言う。魔法耐性の高い鎧を着た者や一部の魔物は、魔法を弾く事でダメージを負わないのだ。
アローやウオールと言った初級魔法なら問題ないと言うのが本当ならシーリーは、魔物部屋でも問題はないだろう。それに、シーリーンの天敵となるファントムさえシローが始末できればそんな問題も解決できる。
「わかった。なら作戦はこうだ。シーリーは、先行し中の魔物の注意を引いてくれ、俺はシーリーに向かった魔物の中からファントムを引きはがして倒す。アルは、強化魔法で俺を強化してくれ」
「はい。マスター」
『了解しました』
作戦を伝えるとシーリーンは、魔物部屋に入っていった。すぐに部屋の中の魔物が、侵入者に気づき攻撃を開始するが、シーリーンは、急に加速すると最奥で、弓をかまえたスケルトンに体当たりを慣行する。
一撃で構えた弓ごとスケルトンを始末して振り返ったシーリーンを魔物たちが囲む。魔物の視線がシーリーンに釘付けになっているところに遅れて部屋に飛び込んだシローは、雷を纏った槍でファントムを背後から突き刺した。
「よし。不意打ち成功だ!」
シローが言ったようにファントムは、シローに気づいたときには、雷の槍に身体を貫かれている。必死に抵抗を試みるが、ビリビリと帯電する雷がファントムにダメージを与えていく。シローは槍を抜くと同時に左手を槍から離し
「アイスアロー」
雷で弱ったファントムに氷の矢が突き刺さるとさすがに耐えきれなくなったファントムが、震えるように消えていった。ファントムを倒した事を確認したシローは、すぐに他の魔物の殲滅に参加する。
すでにシーリーンによって1体のグールは、ばらばらにされており、盾を持っていたスケルトンも壁に吹き飛ばされていた。
シローは、強化魔法の効果もありスケルトンを槍で追い詰めると首を貫く。ほぼ同時にシーリーンが、残ったグールの頭を横に叩くと首から上が消え失せた。
光に包まれた魔物が宝箱になるのを確認すると6体のうち3体が宝箱を残した。そのうちの一つが豪華な宝箱だったためシローの期待は膨らむ。
『罠がありましたが、解除しました』
すでにアルハナートが罠を解除することに成功しているようだ。最近は、指示しなくてもアルハナートが勝手に周囲の確認と宝箱の罠の解除をしておいてくれる。
シローが、宝箱を開けると中から小さなクリスタルが1つと草の束、そして豪華な宝箱から
「ミスリルのロングソードか」
稀少な武器を見つけシローは、少し興奮する。
「ここで鑑定するか。アル。シーリー。少し周囲を警戒していてくれ」
『了解しました』
「はい。マスター」
シローは、興奮を抑えながら集中すると手に入れたばかりのミスリルの剣を鑑定する。
「星振るミスリルのロングソード +1 呪いなしか。斬撃強化がついているし、そこそこ良品と言ったところだな。呪いもないし十分使えるだろう」
光沢のある剣をあちこちから眺めながらシローは、鑑定結果に満足する。
「槍も良いが、しばらくはこのミスリルのロングソードを使うかな」
『マスター。ミスリルの武器は、魔法を付与するときに効果が高くなります。魔法を武器にまとわせる時には、特に有効ですので活用ください』
魔法金属とも言われるミスリルの特性は、魔法の効果があがる事だ。魔力が100としても金属にまとわせるとどうしても数値が80、70と下がるため効果が減るのだが、ミスリル素材で作った武器であれば概ね100のまままとわせることができる。




