表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮奇譚  作者: 山と名で四股
迷宮に挑みし者
19/59

ラビリンス 19層

 炎で首から上を焼かれる。その痛みと呼吸もできない苦しさにスカウトは、ラビリンスの床を転げまわる。

 仲間のスカウトのそんな姿を見た戦士の戦意が急速に低下していく。


「ま、まて、俺達が悪かった。な、なんでもするから命だけは……」


 自分だけで勝てないと悟った戦士風の男が命乞いを始める。すでに後ろのスカウトは、転げまわる事もできないようだ。


「だが、捕まえて行っても外で嘘を言われると面倒だしな。どうせ兵士の前で、俺が襲ってきたなんて言うつもりだろう?」


 戦士風の男の顔を見ていると図星のようだ。


「やっぱりだめだな。お前達のような奴は、迷惑以外の何者でもない。どうせ前科もあるんだろうし、ここで終わった方が皆にとっても良いだろうな」


 シローは、槍をかまえる。戦士風の男が背を向けて走り出した。


「情けないな。仲間をおいて逃げるのかよ」


 シローは、その背中にむけて


「ライトニングアロー」


 雷の矢を放つ。雷を纏う矢が男の背に突き刺さるとビクビクと跳ねるようにして床に倒れた。口からは、黒い煙が立ち上り、内臓を焼き切った事がわかる。


「アル。2人は死んだか?」


『はい。1人……いえ2名とも絶命しました』


 このまま置いておいてもそのうちラビリンスに吸収されて消えるのだが、放置しておくと余計な事になりかねないので、近くの小部屋まで遺体を運び、アルハナートに魔法で隠蔽してもらう。

 これで、よほどの事がないかぎり死体が見つかる事はないだろう。あと、数時間もすればすべてが何事もなくなるのだ。


 シローは、人を殺したのは初めてだったが、特に魔物と違うわけでもなくそのことに何も感じなかった。


「さあ。これで心配もなくなったし改めて6層を目指すか」


 5層までのマッピングが完了しているシローは、迷う事もなく途中に現れた魔物と罠を対処し半日もかからずに6層へと続く階段にまでたどり着く。


「さて、ここからは、また未知の世界だな」


 シローが、階段を下りるとその様子は一変する。



「壁の色が違うな……」


 シローが言ったように6層の壁は、石造りでこれまでの茶色の土壁ではなかった。煉瓦のように正確に切り出された石が規則正しく積まれている。


『マスター。通路左側に魔物です』


 階段を下りた場所は、小部屋となっており、その小部屋には、左と右に抜ける道が続いている。アルハナートの報告では、左の通路に魔物がいるようだ。


 シローは、6層の魔物を把握するために報告のあった左の通路へ向かう。ガチャガチャと何かがなるような音が聞こえてくると前方から丸い大きな盾と剣を持った骸骨が現れた。


「スケルトンか」


 骨の魔物でアンデットに属する。武器を使う上、力も強く動きも早い魔物だ。シローを目のない顔で見つけたスケルトンは、ガチャガチャと言う音をさせながら襲いかかってくる。


「アル。念のために強化魔法を頼む」


『了解しました』


 アルハナートの強化魔法により、シローの身体は強化される。シローは、スケルトンの出方を見ながら動きを観察していく。剣を払い、槍を出すとスケルトンもその大きな盾で槍をきちんと防ぐ。


「なかなか動きがいいな。だが!」


 身体強化したシローの槍は、大きな盾を持ってしても全てを受ける事は難しい。足元を槍の先で払い転ばせると首の骨を切断する。

 ガチャリと操り人形が、崩れるように力を失ったスケルトンは、動きを止めると光に包まれた。


「宝箱はなしか。そこそこ強いが、1体なら問題ないな」


 シローのスケルトンの評価は、そこまで高くなかった。十分に安全マージンを取って進んでいるためそこまで脅威とは、思わないのだ。


「弱点は、やはり火魔法か?」


『火魔法と聖魔法が弱点です』


 シローが、まだ手に入れていない魔法は多い。特に聖魔法は、回復魔法とも言われ稀少性が高いので、滅多に売りも出ないと言う。また、その魔法書が売っていても手が届くような値段ではないだろう。


 シローは、一度小部屋まで戻ると反対側の通路へ進む。相変わらず攻略は、右の壁伝いで進めるつもりだ。こう言ったルーティーンは、ラビリンスの中で活動するうえで重要なのだ。

 アルハナートが、幾つかの罠を見つけ解除する。


 シローが、通路を進んでいくが、まだ分岐はなく一本道が続く。


『マスター。この先に少し大きな部屋があり、そこに多数の魔物がいます』


「多数ってことは、かなりいるのか?」


『5体以上いるようです』


 5体。仮にスケルトンが5体以上いれば苦戦するだろう。シローは、足を止めて考え


「一旦、戻ろう。急ぐ必要はない」


 すぐにそう判断し、危険を回避する。まだ、この層の魔物は、スケルトン1体しか見ていないので何がいるのかもわからない以上、いきなり複数と戦うのはリスクが高いとシローは判断した。


 通路を戻り、階段のある部屋から左の通路へ向かう。


『マスター。前方に魔物です』


 アルハナートの声にシローは、槍をかまえた。歩く速度を落とし警戒しながら先へ進む。スケルトンの時のような音が聞こえない。

 影のようにすっと現れたのは


「ファントム!」


 3層でよく倒したゴーストの上位種。ドレインタッチと呼ばれる攻撃の他に魔法攻撃をしてくるやっかいな魔物として冒険者の中でも有名な魔物だ。


 シローを発見したファントムが、すぐに火魔法で火球を飛ばしてくる。


「アイスウオール」


 氷の壁を作り火球を受け止める。ジュウジュウと音を立て、湯気があがる。ゴースト同様に物理攻撃が効かないため倒すなら魔法が必要だ。


「アイスアロー」


 シローが、氷魔法で攻撃するとファントムも火魔法で相殺する。


「面倒だな。アル!」


 シローの意図を組んでかアルハナートが、雷魔法を放つ。いきなり横合いから撃たれたためファントムも驚くことがあるのか回避できずにダメージを負った。

 シローは、隙を見せたファントムを槍の先に雷を纏わせた槍で貫いた。


 ブルブルと震えるようにしたファントムは、光に包まれ消えて行った。小さな宝箱がころりと床に転がる。


『罠はありません』


 シローは、アルハナートの確認を終えると宝箱を開ける。


「クリスタルだな」


 宝箱から入手したのは、クリスタルと呼ばれる水晶だ。クリスタルは、ラビリンスから入手できる特殊アイテムで、ギルドでそれなりの金額で課金することができる。


『マスター。少し良いでしょうか?』


「どうした?」


『クリスタルとマスターが呼んでいる物は、古代では魔力結晶と呼んでいました。アルハナートのような補助ユニットや他のユニットは、その魔力結晶で強化することが可能となりますので、売り払わずに溜めておくかアルハナートの強化に使用いただけるとサポートの幅が広くなります』


「強化?」


『魔力結晶を吸収し取り込む事で、ユニットの総魔力量の上限が上昇します。例えば、マスターからの魔力供給を受ける際、マスターの魔力を100としてアルハナートの総魔力量の上限が70だとします。するとマスターの魔力30分の力をアルハナートは活用することができません』


「アルハナートは、まだ強くなれるのか?」


『魔力結晶を追加する事で、強化可能です。現在のマスターの魔力値を100とて評価しますと現在のアルハナートの総魔力量の上限値は120です。今すぐ、魔力結晶を加える必要はありませんが、今後マスターが成長すればマスターの魔力値が、アルハナートの総魔力量の上限を超える日がきますので、それまでには追加ください』


「わかった。とりあえずこれはアルハナートに追加するよ。これでどのくらい増えるんだ?」


『このサイズで、総魔力量は1増えるかどうかですね』


 手のひらサイズの魔力結晶では、わずかにしか増えないようだ。


「わかった。これからクリスタルを見つけた時は、アルハナートに追加するかストックしておくよ」


 シローは、アルハナートにクリスタルを差し出すと掌に載せたクリスタルにコードのような物を球体から伸ばし接続すると一瞬でクリスタルが消えた、


『総魔力量の上限値が121となりました。以後、マスターの評価を総合値と魔力値に分けてアルハナートの基準と共に数値化します。現在のマスターの評価値は、253 魔力値100 アルハナートの魔力値121となります』



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ