欲ばりな3つの願い
ある欲ばりな男が海辺を歩いていると、波打ち際に赤色の壷が落ちているのを見つけた。
壷を拾って栓を抜くと、中から煙と共に魔神が現れ、3つの願いをかなえてくれると言う。
「これはよくある話だが、めったにない話でもあるな」
魔神は空中に浮遊し余裕の笑みを見せ、どんな願いでも絶対にかなえると強調した。
男は考える素振りをみせるまでもなく、即答した。
「では、ひとつめ。3つの願いを無限にしてくれ」
魔神は少し困った顔をしたが、両手を振るとキラキラとした光が男を包んだ。
「なるほど。これで3つの願いは無限になったのだな。まさしく俺は魔法使いだ」
男は、欲ばりな性格をしていたので、願いを無限にする事など躊躇しなかった。
「ではふたつめ。お前たち魔神の仲間がいるなら全て魔法が使えないようにしてくれ」
魔神は、冷や汗をかきながら眉をひそめたが、仕方なく両手を振った。
すると魔神は魔力を失ったようで、空中からドスンと落下し、しりもちをついた。
「ははは。では3つめ、最後の願いだ。それは……」
すでに魔神の顔からは笑みが消え、そればかりか青白くなり震えてさえもいた。
「おまえが魔法を使えない以上用はないが、ここから姿を消して自殺してくれ」
魔神は怯えた表情で、それだけは許してくれと懇願した。しかし、男は断固ことわった。
魔神は、海の中へ歩いて消えていった。おそらく、海中で死ぬ方法を選んだ様だ。
「これは気分がいい。これで俺の願いは無限だし、俺の邪魔をするヤツラもいない。
世界征服でも何でも出来る。さてどうするか? とりあえず腹ごなしに何か食べるか」
男が両手をさっと振ると、キラキラ輝く光と共に、ハンバーガーが現れた。
「高級料理もよいが、まず願いを何にするか考えた後だな」
男はハンバーガーを食べながら、これからの事をいやらしく妄想した。
すると突然、赤い壷が光り、男は煙とともに吸い込まれた。
「しまった! 魔神が死んだ事で、俺が壷のなかに封印されてしまった!」
欲ばりな男が最後の願いで魔神を自殺させた為、男自身が魔神となってしまったのだ。
「ああ、魔法使いになった俺のたったひとつの願いは、ハンバーガーを出しただけか……」
魔神は諦めたように、最後のハンバーガーを口に入れ、長い眠りについた。