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移り気  作者: とろろん
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出会ってしまった。彼女に。

 ああ。来てしまった。今日という日が。できれば、というか絶対に来てもらいたくなかったのだが。それにしても、なぜこうもしっかりと時は過ぎてしまうんだろう。ああ。火曜日なんてなければいいのになー。

 とういわけで来てしまった火曜日と感動の再開をお互い(?)悲しみあいつつ、小学校というどうしようもなくつまらない鉄筋コンクリートの塊へと歩を進める。いや、別に行きたくないけど。でも、不良になりたくなくて行ってるわけでもない。義務教育なる子どもたちの敵が猛威を振るっているのである。行かないと親へ連絡がいき、家にいなければ警察まで連絡がいく。いやはや、立派なシステムだなぁ。ありがたくないけど。

 などと心のなかでブツクサ言っている内に着いてしまった。コンクリの校門に迎えられて校舎へと吸い込まれていく。うへぇ。やっぱり火曜日なんて嫌いだ。ちなみに、月曜日は嫌いではない。いや、嫌いだ。でも、それ以上に俺は火曜日を憎んでいる。

 なぜか。塾までが俺を襲ってくるのである。うわぁ。といってもサボるわけにはいかない。なぜなら、約2ヶ月後に中学受験が待ち構えているからである。やっと11月になり、沖縄も涼しくなってきたとはいえ、勉強がぬるくなることはなぜか無いのは納得がいかない。いや、普通ないか。どっちにしろ2ヶ月後に中学受験があることは確実なのだから、俺達受験生は必死に頑張るのが当然のこと。しかし、一部の人間はもう頑張るとは程遠い勉強をしている。含む、俺。理由は二通り。いまさら頑張っても意味が無いか、既に合格水準に達しているか、だ。俺は後者である。だから、授業など聞くわけもない。塾も最大限サボる。今日も一限目はサボる予定である。あれ、サボってるね、俺。

 とまあ、「行く意味あんのかよ」の組織へ足を運ばねばならない。この世界は残酷なんだ・・・。足を運び続けて5分。ようやく学年フロアへたどり着いた。ここまで周りの人間が出てこないということは遅刻コースまっしぐらのようだ。いや、分かってたけどね。

 学年フロアでは朝の会なる怪しい集いの真っ盛りだった。どうやら、まだ遅刻については不問の域の時間のようで、先生達は睨みこそすれ、特に小言は言ってこなかった。ふう。周りの目が痛いぜ。

 朝の会では、特に意味の有りそうな連絡はなく、結果100人あまりの小学生が辛い思いをしただけだった。ホント先生達悪魔。悪魔雇ってる行政機関マジ閻魔。全体と各クラス、2回あるってどうよ?朝の会。言うこと同じなのにさ・・・。

 もちろん、各クラスで行われる朝の会は教室である。よって、隣の席の女子と顔を合わせ無くてはならない。やだなぁ。・・・いやちょっと待て。昨日は席替えがあったではないか。10月の隣のヤツだったこけし人形とはオサラバだぁ!

「また遅刻~?最近多くない?龍太くん?」

 やばい。井上さんマジ天使。井上かおりさんマジ神。

「・・・会長るっさい」

 児童会役員会長を務めているため、もっぱら会長と呼ばれている。学力も受験狙えるまではいかないけど優秀、顔も可愛い、ていうか美人。モテないわけなくね?だがしかし。俺の席の前にはもう一人の天使がいる。今日は休みのようだ・・・って、俺の席、今月最高じゃね?

「どーせ朝までゲームしてたんでしょ~。」

「うっ。」

 ひとつ言い忘れてた。勘やべえ。

「ま、まあ、今日の一時間目どうせ歴史だし・・・。」

 ね、ね、寝ようとか、お、お、思ってないからね!?

「うーん、歴史はっていうか勉強はめっちゃできるからねー、龍太くん。どーせ塾もサボってるでしょ」

「ご名答」

「うん、だよねー。っておおおおおおい!」

 だよねーって・・・。なんかひどくないか?まあ、許す。天使だし。その後もグダグダとおしゃべりしてたら、いつの間にか放課後になっていた。あれ、おかしい・・・。体育もあった気がするけど・・・。もしかして、俺はタイムワープの能力を手に入れたのか・・・?いや、それは不便だぞ。受験の時に発動したら0点じゃないか。まあ、とりあえず塾の周辺で時間を潰そう。一限目は確実にサボらねば。理科やだー。


 本屋で立ち読みすること一時間。時計の針が示した時刻は18時15分となっていた。おお、いいじゃんか、この時間。いい感じにサボれてる。ちょうど頃合いといったところか。

 トコトコ歩いて塾へ辿りつくと、二限目の数学が始まる5分前。足早に自分の席へ行き、荷物を放って友達との談笑に浸る。5分はあっという間に過ぎ去り、わりとすぐに数学の先生が入ってきた。おい、佐野、どこをほっつき歩いてた、と追求されたが、バスケがなんだと言って誤魔化した。数学の間も、多少当てられはしたものの、特に問題もなくやり過ごした。ただ問題があったとすれば宿題をやっていないのでその場で解くハメになったくらいだろうか。やはり、宿題はあるべきでない。いや、俺がやればいいのか。そうか。

 最初をサボった俺が受ける授業は二限と三限だけであり、最初をちゃんと受けた人はあと一限である。一緒か。ともかく、三限目の社会であのイベントが行われた。そう!席替え!いえー!・・・多いな最近。俺の遅刻に勝るとも劣らない奮闘だ。負けねぇけどな。負けたい。

 三限目が始まる前に席替えは行われた。もちろん、授業時間は少し削られる。毎日やろうよ、席替え。割りと真面目に。とはいえ、特に希望の席があるわけでも、好きな子がいるわけでもない。それでもテンション上がってしまう。席替えってすごいな。

 形式はくじ引き。21だった。ランダムだから関係ねぇけど。先生のテキトーな当てはめの結果、俺は窓側の一番後ろになった。前の席は同じ小学校の友達である。なお、ウチのクラスにM小のヤツはふたりしかいない。引き強すぎるだろ。綱引き最強じゃんか。さて、問題は右隣である。左には透明人間しかいない。後ろも同じ。右にはちゃんと席は用意されているからには、誰かが使用するはずである。男なら最高。カワイイ子ならもっと最高。さあ!だれだぁ!


「ふっw」


 え?俺、今笑われた?なぜ?でも、いいや。カワイかったから。いや、でも、なんでわらわれたの?俺。おっかしいなー、ごはん粒ついてたかなー。いや、ついてない。ホントになんでだ?これは気になる。聞いてみなくてはなるまい。でも、授業中に話しかけたら女子全員と先生を敵に回す最悪のナンパ行為であるからして、何か大義名分を作るか誰にも見咎められずに聞かなくてはならない。なんかないか、なんか!あった!教科書忘れた!隣の人に見せて貰うんだっ!

 難なく突破出来てしまった。それにしても今日の俺悲しいな・・・。遅刻2回に忘れ物ふたつ。宿題と教科書。うわ・・・。ともかく、さっきの嘲笑の真意を確かめねば!

「ね、君、さっき笑ったよね?」

「桜庭聖奈」

「へ?」

 うーん?あ。名前か。知るかよ!

「あー・・・、うん。ごめん。それで、聖奈?さん、さっき笑ったよね?」

 うう、こういう展開は好きではない。てか、これどういう展開だよ。

「別に。バカが隣に来たなーって」

「ひっでーな、そりゃ・・・。いい意味で笑われるなんてあり得ないとは知ってたけどよ」

 想像に難くない回答だっやが、その後の言葉には思わず絶句してしまった。

「・・・他の男子に比べたら嫌いじゃないけどね」

 ・・・どーゆーことですか?

「というと?」

 全く判らなかったので、聞き返しはしたものの、あまりしゃべることが好きじゃないのか黙りこくってしまった。それは残念だったが、それ以上詳しく聞き出すことは無いかな、とも思って俺も深くは切り込まなかった。それと同時に、可愛いとは思ったものの、仲良くはなれなそうだな、と感じてしまい、非常に寂しく思った。社会の間は丁寧に教科書を見せてくれたものの、口を開くことはやはりお互いになかった。消化不良が無いこともなかったが、小学校の例の席を思い出し、背筋を伸ばして帰途の路についた。友達とのバカ話に興じたのは言うまでもないことだ。

 しかし、そのような関係から、仮に中学が同じでどういう訳かクラスも一緒だとしても、どう頑張っても発展しないであろうし、今の時点でこれ以上はわるくならないだろうという俺の憶測は完全に裏切られてしまうのだった。

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