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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヒーローを不在にする方法

ヒーローを不在にする方法~科学者たちは暴徒化した 編~

【警備主任視点】

ここサイエンス科学研究所の朝は、ここに勤める科学者たちが人型のゴム人形をバットで殴る訓練から始まる。

何かがおかしいが気にしてはいけない。気にしてはいけないのだ!


ことの始まりは、二年前に大学を出たばかりでここに勤め始めたばかりの少女の一言だった。

「私たち科学者は、頭がいいだけしか取り柄がないひ弱な人間の集まりなんです! ここは最先端の研究所。いつ、襲撃されてもおかしくはありません! 私たち科学者も武器を持たないと!」

だから俺たち警備員たちがいるのだがと思って指摘したのだが、その少女の熱弁は続く。

俺には理解できない天才理論で、重役たちを説得していく。

やはり、天才は理解できないものだなと俺は思った。

その少女は、アスカ・ヤヅカ。日本人だ。

仲良くなってからは、妻や娘のご機嫌取りにできるお菓子やぬいぐるみをくれる。

この間は、娘と妻が欲しがっていた限定テディベア『キモノ・ヴァージョン2×××』を二体まで購入できたので、俺の分もと買ってきてくれたのだ。

これは、寝坊して買い損ねて妻と娘に散々文句を言われた。


ある朝突然、この研究所に襲撃者たちが来た。

今日は科学者たちの研究成果が確認できる日であり、彼らはものすごく浮き足立っていた。

俺たちは闘ったのだが、抵抗むなしく奴らの侵入を許してしまった。

俺が意識を失う直前に監視モニター越しに見たのは、襲撃者たちを襲う暴徒化した科学者たちだった。



【矢塚明日香 視点】

とりあえずお馴染と化した転生者です。

ついさっき、サイエンス科学所の面接をしている時に、映画の『グラックマン』に出てくる悪の組織に破壊される研究所だと言うことを思い出しました。

グラックマンは、悪の組織と戦う正義の味方。

ここ、ブルーエンド市を特殊なボディースーツを着て守る謎の人物。

その正体は、エリック・ガーディー。

この街の金持ちの息子。

ガーディー株式会社社長の息子。

両親は健在。

数年前に自分探しの旅から戻り、プレイボーイを装っている真面目な青年。もちろん、美形。

現実になると、なんてボランティアなことしているんだろうと思ってしまいます。

私にはできませんね。

もちろん、私はモブっ子なので接点はありません。


サイエンス科学所に就職が決まって、出勤初日に研究所内で武器を持ちたいと上司に直訴したら、重役たちの前で言ってみろと言われました。

この上司、私の提案を面白がっています。

なので私は、「私たち科学者は、頭がいいだけしか取り柄がないひ弱な人間の集まりなんです! ここは最先端の研究所。いつ、襲撃されてもおかしくはありません! 私たち科学者も武器を持たないと!」などと熱弁。

のちに仲良くなるマイロ警備主任が呆れたまなざしで見ていました。

普通なら分かりますよ。

でも、この研究所は悪の組織に襲撃されるんです!

できるだけ、対策をしないと!

スタンガンや銃は相手に撃つのに躊躇いが出る可能性大なので、日本の一昔のサスペンスに出る凶器の定番、大理石の灰皿、ゴルフのドライバー、金属バットを提案しました。

なぜか、却下されました。

比較的素人でも簡単に扱える、『木製バット』に落ちつきました。


みなさん、最初は不満を言っていたのですが、今では人型のゴム人形を朝から木製バットで殴りまくる行為はいいストレス発散になっているようです。

結構、罵声を飛ばしながら木製バットで殴っていますよ。

これでストレス発散して研究成果を早く出せているので、研究所の重役たちには大変好評です。

自分で言うのもなんですが、天才って分からないものですね。


私は前日、朝から限定テディベアを買うのに並びました。

日本では時々長蛇の列を並んでいたのですが、アメリカに来てからはめったにしないんですよね。

今している、研究が面白いせいもあります。

そんなわけで、長蛇の列に並びたい衝動にかられたのです。

長蛇の列が、着物ヴァージョンと聞いて飛びつきましたね。面白い組み合わせだなと思って。

二体まで買えると案内を店の店員がしているので、二体買うことにしました。

奥さんか娘さんが、テディベア好きと言っていたのでマイロ警備主任の分も買っていきましょう。

そんなわけで今日の朝、マイロ警備主任にテディベアをプレゼントしました。


そして、運命の朝。

悪の組織が、このサイエンス科学所を襲う日です。

この研究室は、研究所の玄関や裏口についている監視カメラを見れるモニターを設置しています。

襲撃者たちを襲うためですよ!

玄関から、侵入者たちが襲撃してきました。

悪の組織の侵入者たちは、幸いにも警備員たちを殺すまでしませんでした。

私は、安心しました。

知り合いを殺されたくはありませんからね。

私は、急いで研究室の自動ドアの前の足の位置にピアノ線を張りました。

みなさん、武器である木製バットの用意は万端です。

襲撃者たちは科学者たちがひ弱だと思い込み、催涙弾などを使いませんでした。迂闊ですね。

襲撃者たちが入った瞬間にピアノ線により倒れ、あとに続く襲撃者たちはピアノ線を避けて通り、通る時に通るスピードが落ちます。

その瞬間を私たちは逃がしませんでした。

そう、私たちは襲撃者たちを襲ったのです。

銃を使う隙すら与えませんでした。

逃げまどう襲撃者たち、その襲撃者たちを襲い暴徒化する科学者たち。

出番がないかもと焦る私。

運よく、私も襲撃者を仕留めることができました。

警察が来たときは、すでに襲撃者たちを私たちが鎮圧しました。

驚く、警察官たち。

警察官の取り調べには、弁護士を呼んで「ひ弱な科学者の自衛手段」で通しました。

このサイエンス研究所は、重役たちによって優秀な弁護士を雇っているのですよ。

その重役たちはこの出来事に頭を抱えていましたがね。

ダメですよ。この程度、笑って受け流さないと!



その、サイエンス科学所に勤める科学者たちが本格的に、襲撃者や侵入者を襲う訓練を本格的にすることになるなんて、あの時は予想もしていませんでした。その訓練に、重役たちが参加することも。

事実は小説より奇なりですね?


この研究所に、ヒーローが関わることもありません。

これで、器物破損した場合にかかる膨大な費用の心配がなくなり、大好きな研究を続けられます。

読んでくださり、ありがとうございます。

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