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満月の夜  作者: 桐生初
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新たな展開

四人が集合したところで、時系列に報告し始めた。甘粕の報告が終わると、霞が中学での聞き取りを報告した。


 「まず、中一の時の安田裕翔君の失踪事件ですが、安田君と福井は隣のクラス同士で、いつも学年トップを争い、塾も同じ。安田君失踪直前の全国模試も、期末テストも福井が負けていたそうです。それでも、校内ではとても仲が良く、家の行き来もしていた様だというお話だったので、安田君のご家族にもお話を伺おうということになりました。

 続いて、ガス漏れ爆発事故に関してですが、事故当時、福井は大変な沈み様で、ガスの点検日の翌日にこんな事になるなんてと、ガス会社を訴えようとしていたそうです。警察も捜査に入っていますが、ガス会社の過失とも認められず、結局示談になったそうです。」


 「ーて事は、福井には保険金の他に賠償金まで入っているということですか?」


 夏目が聞くと、太宰が頷いた。


 「科捜研の方で、金の動きを見てもらった。トータルで三億円入ってる。」


 霞は太宰に促され、続きを話し始めた。


 「土地を離れなかった事に関しては、当時の担任の先生も不審に思い、聞いたそうです。せめて、別の所に建てたら?とか。そうすると、ご近所の方に言ったのと同じ事を言った後、見た事も無い様な冷たい笑顔で、『ここがいいんです。』と言い、先生もゾッとしてしまい、それ以上は口を噤んでしまわれたようです。この先生は薄々、福井の闇に気付いておられた様ですが、あの福井がということで、誰も信じてくれないし、思い過ごしだろうと考えられた様ですね。

 安田君の親友の里村君と福井は全く接点がありませんでした。クラスも小二の時に一度一緒になっただけで、学校からは何も聞き出せなかったので、里村君の親御さんにもお話を伺った方がよさそうです。

 次に中二の時の担任の先生にもお話を伺いましたが、全く問題なく、福井がクラスをまとめて、上手く行っていたと、それしか聞けませんでした。事故死した、大村君と飯山君は他校の生徒ですし、当然ご存知ないようです。

 室田先生は、頭はもの凄くいい先生だったそうですが、授業が分かりづらいと、生徒達には不評。又、人付き合いが苦手らしく、先生方の間でも孤立してしまっていた様です。でも、福井だけは室田先生に懐き、よく話しており、自殺の前頃は、室田先生も明るくなり、他の先生とも気さくに話す様になり、授業も面白くなってきていたそうで、自殺の原因が初めは分からなかったそうです。しかし、その後出た原田美咲との援助交際の噂や、室田先生のデスクから大量に出て来た、原田美咲のあられもない姿の写真ー要するにかなりどぎついヌード写真だったようですが、それが出て来たりした事で、援助交際の信憑性が出て、自殺も納得と。ただ、このヌード写真はスキャンダルを恐れた校長の判断で、全て焼却処分してしまったそうで、残念ながら現物はありません。また、援助交際の噂の出所を学校側に確認してみましたが、全く分からないそうです。ただ、写真を先生方が発見する前から、室田先生の死の直後、つまり、全校生徒に室田先生の死を知らせる朝会の前から、各クラスその話題で持切り状態になっていたそうで、先生方も不審には思った様です。

 その原田美咲ですが、室田先生との援助交際の噂は確かに大変苦にしており、そんな事していないと泣いて訴えたそうです。しかし、ヌード写真という証拠を見てしまった先生方は信じず、逆に隠蔽に必死になってしまったようですね。原田美咲から大した話も聞かず、この噂は必ず消してやるから、二学期になったら、消えてるようにする、だから、他の人に絶対に言わないようにと言い聞かせたらしいです。でも、美咲はそれで安心したようで、それ以降は落ち着いていたと言ってました。学校でその噂を口にしたら、いちいち強面の生活指導の先生に呼ばれて、お説教だか脅しだかするとか、こんな噂が外部に漏れたら、出身校だけで避けられ、受験で不利になる、自分の身が可愛かったら、受験で失敗したくなかったら、この事は口にするななどと生徒達に言い聞かせたようで、実際最近では噂を口にする者はほとんど居なかったそうで、原田美咲の自殺に関しても、ピントこなっかた様です。でも、自筆の遺書もあるし、そうかなあってことでとおっしゃっていましたが、要するに噂の元が消えてほっとなさったようですね。生徒が亡くなっているていうのに。

 それに唯一異議を唱え続けていたのが担任の田端先生だったようです。噂のタイミングといい、写真がこれみよがしにデスクに入っていた事などから、何者かの仕業で、ヤラセなんじゃないかとおっしゃって、美咲の話も一生懸命聞いて無実を明らかにする方向で動かれ、なんども校長と揉めた様です。

でも、残念ながら、今日は、先生は所用でお留守だそうで、お会い出来ませんでした。

実は、先生からあまり聞き出せなかったので、生徒さん達にもこっそり話を聞いたんです。連続自殺事件て、世間で話題になっているから、オカルト的なものではなく、自殺だと証明する為に調べていると、ローティーンが興味を引きそうな事を言ったら、結構話してくれました。ヌード写真の存在も、口の軽い先生が一部の生徒に漏らしてしまった様で、生徒から聞きました。原田美咲の親友の遠藤京子という女の子は、今日はもう帰っているという事で会えなかったので、明日話を聞こうと思います。以上です。」


 関係者から話を聞けば聞く程、福井悠斗がやったと考えた方が辻褄が合う事ばかりだったが、まだ感覚的なことでしかない。

 断定は避け、明日からは分担して、関係者に話を聞くことにした。

その時、全員が署内に響き渡った事故の放送に耳を疑った。


『品川区西大井駅構内で、人身事故発生。被害者は森川中学校教諭、田端篤夫。』


「田端…?今、田端って言ったよな!?」


太宰が確認すると、全員頷いた。


「甘粕、夏目、行って来い!」


「はい!」


2人が走り去ると、太宰はタバコをくわえ、霞を見た。


「これも、福井かな…。」


「確証はありませんが、このタイミング…。そう思わないではいられませんね…。」


「うーん…。」


太宰が椅子にドサリと座り、タバコに火を点けようとした時、また放送が流れた。


『警視庁前の交差点で、中学生と思わしき少女がトラックに轢かれ、重症。』


太宰と霞は、どちらともなく、現場に走った。


女の子は、丁度、救急車の担架に乗せられる所だった。


「お巡りさん…、これ…、夏目さんに…。」


女の子は血だらけになったノートを駆け付けた制服の警察官に渡そうとしていた。

制服警官は、夏目が誰だか分からないので、困った顔をしている。

太宰は咄嗟に、女の子の手と、ノートを握りしめた。


「夏目は俺の課に居る!必ず渡すからね!」


女の子はほっとした様に頷くと、意識を失った。

運ばれていく女の子の手荷物を調べていた制服警官が手に取った学生証を見て、太宰と霞は愕然とした。


ー森川中学校3年 遠藤京子ー


そう書いてあった…。



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