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1日目「金曜ロード〇ョーとか見ないやついないよね」

「シータアアアァ!!」

幼い少年の絶叫で意識を取り戻した。最悪の目覚めである。

先ほど何者かの襲撃を受けどうやら気を失ったらしい私は、暖房の効きすぎたアパートの一室で横になっていた。背中がズキズキと痛む。


「あ、起きた。キリ兄ー、アケ起きたで」


後方から声がしたので振り返る。 声の主はお察しのとおり、えだまめ荘の住人である。

目に飛び込んできた金髪が裸電球にキラキラと眩しくて、私は顔をしかめた。それにはもう1つ理由がある。

「……ケビやん、それ私のバーゲンダッツ」

それも期間限定ラズベリー&ホワイトチョコ味。

「んぁ? ええやん別に。寒いなかお前運んでやったんや、労働代として当然やないかい」

能天気な関西弁が私の苛立ちを更につのらせる。


私にケビやんと呼ばれた金髪男はアイスを口に入れたままモゴモゴと喋っている。金髪碧眼という王子様みたいな風貌の癖に、中身はおせちの残りぐらいたちが悪くて腹が立つ。

本名はケビンとかいうらしいが、私が知っているのは名前と彼がイギリス人であることだけである。興味もないので知らなくて大変結構。


満足そうにスプーンを口に運ぶそいつに、怒りをふんだんにトッピングした視線を送ってやる。

「帰ってきて食べようと思ってたのに……」

「なんや、食べさせて欲しかったんか?ほら、あーんし「ごめん全く欲しくなくなった」

ケビンの差し出してくるスプーンに触らないよう彼の手をはね除けていると、さっき外で私を見放したクズ野郎(誇張あり)が台所から部屋に入ってきた。


「お、起きたか……ってオマエ何怒ってんだぁ?」


聞き慣れた、不思議と心を落ちつかせる声が私の鼓膜をふるわせる。どうやら彼は、私の怒りに気づいてくれたようだ。

「あ……もしかしてケビンお前」

そうそう、このエセ関西人に一発かましてやって!

「俺がラピュ○録画し忘れたのアケにチクったろ」

「そっちじゃねーよ! っていうか、今新たな事実が発覚して二重にショックだよ!」

悲しみのあまり柄にもなくツッコんでしまった。

「げ、言うんじゃなかった」

今更口にピシャリと手を当ててもおそい。



この男こそ、先ほど私を外で無情にも見捨てたクズヤロウ(誇張あり)、萩原キリである。私達住人がこいつをキリ兄と呼ぶのは、彼がえだまめ荘の管理人

だから。でもさっきのことで見損なった。今日からあだ名を見捨て魔にしちゃえ。

「いいよいいよ、みんな私のこと苛めたいんでしょ?わかってますよ」

棒読みでいじけてやる。

「ほら、お前が苛めるからアケ拗ねちゃったじゃねーか」

「トドメさしたのはキリ兄思うけどな…………ほらアケ、そない怒んなって。ちょっと可愛かったからいじっただけやねん」

言いながら手を合わせ、ごめんねのポーズをとるケビン。謝らせてやったことで溜飲が下がった。


ふとテレビを振り返ると、まだ幼い少年少女が暗い洞窟で半熟の目玉焼きをのせたパンを頬張っているのが見えた。そのパンは何だかすごく美味しそうで、眺めていたらこっちまで空腹になってきた。今日は学校に財布を持っていかなかったので、昼食がキリのくれたジュースだけだったのだ。

遅くなってきたし、部屋にもどってあったかいものでも食べよう。そう思い、よいせっと立ち上がる。


「じゃ私は部屋で独り泣いてくるわー、今度バーゲンダッツ奢ってキリ兄」

投げ出されていた鞄を拾い上げると手にひやりと革の感触。外は寒そうだから、部屋までBダッシュだ

「おう、早く寝ろよ」

「俺の肌が恋しくなったらいつでも来ぐげっっ」

キリに鞄をバイバイと振って返事をし、空いた左手でケビンの喉にチョップを入れた。勢いよくドアを開いてそのまま小走りで部屋を出る。

奴のむせかえる声をBGMに月を眺めた。……雰囲気ないな。

コツコツと、わざと音をさせて階段を降りる。

部屋までBダッシュ……のつもりだったのだが、駐輪場の脇にちょこんと居座るそいつを見つけて気が変わった。


私が近付くとそいつは鮮やかなライムグリーンの羽を広げてファイティングポーズ。

いや別に戦う気はないから。

「でこぴんっ」

でもここで引いたら負けの気がして一発くれてやった。

「キョエーーーーーーーーッッ!!!!!」

さっきはお帰りなさいとか生意気に喋ってた癖に、

急に鳥らしくなられても困る。可哀想になってきた

よし、今日は特別に許してやるか。

「お休み、えだまめ」

そう、彼はこのアパートのボスなのだ。

……それが事実かはともかく、アパートの名に選ばれるだけあってこいつは結構面白いやつである。

キリも毎日エサ(枝豆)を献上しているし、今日は私もこいつに稽古をつけてやった。なので結果的には私の勝ちだ。

えだまめにひらひらと手を振って別れ、自分の部屋

へ帰る。


「ふぃー………………」


風のせいで重いドアをどうにか開ける。鞄を床に放りだして、冷蔵庫へ直行。ピザまんをレンジに職人もびっくりの素早さでセット。この動きはクラスの奴らにはできまい。

「しかし寒いな」

暖房のスイッチを入れ……ようとしたらテレビのリモコンだったわコレ。まぁよくあるよね。エアコンのリモコンどこいった。

電源がついちゃったテレビを見やると、先程の少年少女が空を飛んでいた。どうやら彼女が胸にさげているトンデモ物体の効果らしい。彼女はわざマシンを使わなくても、石ころだけで“そらをとぶ”を覚えることが可能なようだ。

ポケモンに持たせたら便利じゃね?

そんなことを考えながら、ただピザまんの出来上がるのを心待ちにする。


部屋にはただ電子レンジの廻る音が響く。外からは車の音、バイクの音、酔っ払いの騒ぐ声、それと上の階でキリとケビンが将棋をする声が寒空に消えていく。学校という、電車が通る踏切前よりうるさい場所で戦っている私には静かすぎるくらいで、その静かさが心地いい。


チーン。

ピザまんが出来たようだ。食べたらラピュタ見て、

マンガ読んで、風呂入ってアイス食おう。明日は土曜日だし、遅くまで起きててもいいや。



私の日常なんて、こんなもんである。

なんか話まったく進んでなくてすいません。

次回は女の子出てくるんで勘弁してください。

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