ファミレスで
やっぱり今の俺は女だから、女らしいものを食べたいな。よし、決めた。
俺は呼び出しボタンを押した。
店の奥から音が鳴り、女店員が出てきた。
「お待たせしました。ご注文はいかがなさいますか?」
ニコッと笑って注文を取りに来た。
この子、結構可愛いな。まだ若そうに見える。
それにファミレスの制服からでも分かるくらい胸が大きい! この子にもなってみたいなー
そんな欲望を思いながらジッとその女性店員を見ていると、なかなか注文しない俺に言ってきた。
「あのお客様?」
「あ、え、ごめ……じゃない。すみません。それじゃあ、このシーフードスパゲティとドリンクバーをお願い……するわ」
たどたどしく女言葉を使う。どうやら変だと思われてないようだ。
「シーフードスパゲティとドリンクバーですね。ドリンクバーはあちらのコップをお使いください。失礼します」
頭を下げて厨房へ戻ろうとする。その時、俺はカメラを取り出してその女店員の後ろ姿を撮ったのだ。
その女性店員は気付かずに戻ってしまった。
「よしよし、帰ったらあの子にも……」
帰ったときのことを妄想しながら、ドリンクバーを取りに向かった。
歩きながら他の客を見ると、平日のため大学生や主婦達しかいないようだ。
「うーん、やっぱり平日だとこんな程度なのか」
もう一度、見回しても好みの女性を発見できず、オレンジジュースを入れて席に戻った。
「さてと、今からどうするか」
席についてもやはりいい女は見つからない。
ため息をつこうとしたら注文したスパゲティがきた。
「お待たせしました。シーフードスパゲティです。失礼します」
食事を出して深く頭を下げた。その時、胸につけてるネームプレートが見えた。
山岸……さんか。
俺は山岸さんが去る前に声をかけた。
「ちょっと、あなた」
「はい? どうかなさいましたか?」
「ネームプレート。曲がってるわよ」
そう言いつつ、胸についてるネームプレートを治した。当然、わざと胸にも触った。
「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ。気を付けてね」
「ありがとうございました」
ニッコリと笑って俺に感謝の気持ちを与える。男の俺がやった場合、逃げられるか、店外に出されるか、嫌な結果しか待っていないが、俺は女だったため、山岸さんは笑顔だった。
へへ、山岸さん。あなたの胸って柔らかいな。俺の胸よりもな。
そんな男の心の中には気付かない山岸さんは、戻っていった。
気分が良くなったところで、腹ごしらえをすることにした。
「さてと……ん? いつもと味が違うような……」
一口食べると、味が違う。多分、今の俺は谷澤美月さんという女性の味覚になっている。そのため、全ての感覚が別の感覚になっているわけか。
「うん、美味いな。美月さんはシーフード系が好きみたいだ」
いつも以上に美味しく、時間をかけて食べてしまったのだ。