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冴島円香(仮名)さんへのインタビュー。

 ええ、a子の行方が分からなくなったのは今から八年程前のことになります。当時、私とa子は長野県に住んでいて、二人ともボードが好きという共通の趣味もあったので、冬になればよく二人でスキー場に訪れていました。近所のスキー場は大体行き尽くして、新しいところで滑りたいね、なんて話をしていて。それで、新潟県にあるスキー場に向かいました。朝から夕方まで満足するまで滑って、二人ともくたくたで、行きしはa子が運転していてくれたので本当は帰りは私が運転するはずだったんです。でも、何度か滑っている内に私けっこう派手に転倒しちゃって足を痛めてしまって。だから、帰りもa子が運転してくれました。疲れてるのにごめんねって何度も謝りました。


 冬で、日が暮れるのも早かったので、帰り道はすっかり日が落ちていました。それで、ちょうど新潟と長野の県境に差し掛かった時、運転していたa子が突然言ったんです。ねえ、なんか歌が聴こえない?って。車内では音楽はおろかラジオも流していませんでした。だから、私は空耳じゃない?って言いました。でも、a子は絶対違うって言い張って。だって、今だってずっと聴こえてるって。


 ついには車を端に寄せて止めてしまいました。車から降りたあと、ガードレールに手を添えながら何もみえない真っ暗な森を眺めていました。綺麗な歌声。鳥、なのかな。こんな鳴き声聴いたことないけど。って、ぽつぽつと呟いていました。でも、私には風と車の音しか聴こえなくて、a子が取り憑かれたみたいに耳を澄ませて音の(みなもと)を探ろうとするものだから私ちょっと怖くなって、その日は無理に手を引いて帰りました。


 でも、その数日後、真夜中にa子から突然電話がかかってきました。出ると、a子は泣いていました。ねえ、この歌が聴こえる? こんなに綺麗な歌、私聴いたことない。そう、言ったんです。まさかとは思いましたが、a子は再びその鳥の鳴き声を聴くためにあの場所に一人で行っていました。私は、一人で夜道は危ないからすぐに帰ってきて、と言いました。でも、a子はこう言いました。


──私、もう帰らないよ。


 a子は、そのまま行方不明になりました。路肩にはa子の車が止まっていたそうです。運転席の扉が開いたままだったので、最初警察は事件の可能性があるとその線を追ってくれました。私も、もしかしたらそうなのかもとは思いました。でも、ほんとは、心のどこかでそれは違うと気付いていました。a子は自分の意思で消えたんじゃないかって。あの鳥の歌声に惹かれて。


 私は、それから少しでも当時のa子の考えを知ろうと自分なりにいろいろと調べました。浮かんだワードでネットで検索をかけ、それから幾つもの文献を読み漁りました。そしたら、なんかあり得ない事ばかり出てきて、でもその鳥は日本にいないはずなんです。いや、そもそも、その鳥に(まつ)わる話ですらあくまで伝説で。調べれば調べる程馬鹿らしくなりました。


 えっ、あっはい、私が調べたのはまず『夜に啼く鳥』というワード。それから『美しい鳥の鳴き声』『鳥の鳴き声に惹かれる』とか『行方不明』『鳥の鳴き声 洗脳』とかいろんなワードで検索をかけました。すると、ある鳥が浮かび上がったんです。原産国は、ヨーロッパの中部から南部、地中海沿岸。

体長は約15cm。茶色と白という、どちらかと言うと地味な色合い。その鳥の名は、小夜啼鳥(さよなきどり)と言います。あまりにも美しい鳴き声をしている為、この鳥にはいろんな逸話や伝説がありますが、ほとんどは死に関するもの。それも、悲しい死ではなく、どちらかと言うと美しい死に関するもの。小夜啼鳥(さよなきどり)は、その美しい鳴き声を使い、時折その人の終わりが近いことを教えてくれるそうです。人によっては、向かうべき場所に導いてくれる事もあるとか。


 だから、小夜啼鳥には別名があり、こう呼ばれる事もあるそうです。


 墓場鳥(はかばどり)、と。

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