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猫種の私が聖女?〜サブストーリー〜  作者: まるねこ
サイドストーリー1

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1/6

ローニャを取り巻く環境

 本編はこちらになります↓

まさか猫種の私が聖女なんですか?

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 ―― とある一室での事。


「あの獣人はいつ手に入るのだ?」

「申し訳ございません。王宮の警護がとても厳しく、なかなか手が出せないのです」

「全く……。私を失望させてくれるな」


 男は苛立っているようで指で机をトントンと叩いている。


「申し訳ありません」

「ナーヴァルの方はどうだ?」

「彼の方は問題ないですが、ケイルート殿下の方がこちらを警戒しているため大きくは動けない状況です」


「もういい、下がれ」男は気分を変えるように葉巻に火を点ける、燻らせながら顎で指示をする。従者は一礼すると娘を部屋から連れ出した。


 ――


「ローニャ、ナーニョがいなくなって寂しいのか?」

「ケイルート兄様。少し、ね。でも、お姉ちゃんが頑張っているんだもん。私も頑張るって決めたの」


「そうか。あまり無理はするな。今日は勉強はないのか?」

「うん。今日は王宮の畑を見に行って魔法を掛けてくるの」

「そうか。魔法を掛けた植物たちは育ちも早いし、味が濃いと聞いている。楽しみにしている」


「うん! 任せて!」


 私は働く年齢ではないけれど、この世界で魔法を使える貴重な獣人だからね。


 私の魔法を待っている人も多い。


 私も皆の期待に応えるように日々の勉強と魔法について労力を惜しみたくないの。



 ある日、いつものように私は研究所で研究員たちと魔法の研究をしていた。


「失礼します。ローニャ様はおいででしょうか?」


 グレイス妃の従者が研究室に突然入ってきた。突然の訪問に私も研究員たちも驚き、彼を見つめた。


「ローニャ様、午後のお茶会に招待されております。どうかお急ぎ下さい」

「私は何も聞いていないよ?」

「どうか、お急ぎください」


 突然の事に驚き再度確認したが、従者は顔色を変えず急げ、の一点張りだ。


「参加しなきゃだめなの?」

「グレイス妃から必ず連れてくるようにと言われております」


 ……はぁ、めんどくさい。


 私は研究員たちと目を合わせ、肩をすくめた。


 マイアさんから聞いた話では貴族の令嬢はよくお茶会を開いて様々な情報のやりとりをしているらしい。


 貴族の派閥や力関係も考慮して話しかけたりしないといけないのだとか。


 私も王女だから参加しなくちゃいけないのかとため息を吐きたくなる。


「マートス長官、呼ばれたので少し行ってきます」

「そこの従者、突然の呼び出しは相手に大変失礼だ。それを分かってやっているのか?ローニャ様、出席しなくても良さそうですが。まぁ、途中で戻ってきても問題ないでしょう。私のせいにしてすぐに戻ってきて下さい」

「わかりました。では行ってきます!」


 私はドレスに着替える時間も貰えないまま中庭に向かう事になった。


 白衣に、若かりし頃のケイルート兄様の騎士服を着ている私はお茶会には相応しくない服装だ。


 小馬鹿にするためにわざと呼んだに違いない。


 養女になってからマナーの勉強もきっちりとしてきた。


 お姉ちゃんが魔獣と戦っている。


 私はお姉ちゃんと自分の居場所を守るため、令嬢たちと戦うわ。


 私は専属侍女のエリスと護衛騎士のフェルナンドさん他二名に守られながら中庭に到着した。




 中庭では既にお茶会が始まっているようだ。 


 長机が四台出されてあり、綺麗なドレスを着た令嬢が十人ほどお茶を楽しんでいた。


 侍女が私に近づき『何かあります。ローニャ様のことが心配でなりません』と囁いた。


「エリス、ありがとう。大丈夫だよ」

「だと良いのですが……」


 エリスは自分のことのように心配してくれている。


「遅くなって申し訳ありません」


 そう声を掛けると、令嬢たちは一斉にこちらを見て失笑している。


 この冷たい雰囲気に私は苛立ち尻尾を膨らませるが、気持ちを隠すように腰に巻き付けた。


 あー感じ悪いっ。


「あら、その格好。どうしたのかしら? お茶会に騎士服だなんて無粋ね」


 グレイス妃が軽蔑するように話すと、それに合わせて他の令嬢たちも『全くだわ』『所詮獣ですもの』なんて人を嘲笑するような事を言っている。


 これが貴族令嬢というものなんだ。


 私は腕を組み、不満を表すように口を開いた。


「申し訳ありません。先ほどまで研究所で魔法の研究をしておりました。突然の呼び出しにこちらも驚いてしまいましたわ。私は陛下からお茶会に出なくても良いと言われておりますが、一度は参加してみたいと思いましたの。これなら次回からは参加する必要は御座いませんね」


 私の侍女、エリスは離れた場所で青い顔をしている。


「まぁまぁ、知らされていなかったのなら仕方がないわ。とりあえずそこの席に座ってちょうだい」


 そう言われ指示されたのはグレイス妃から一番遠い末席。


 王女の私が座る場所ではない事は確かだ。


 馬鹿にして笑いたいのだろう。


 私はカチンと頭にきながらも黙って席に座ろうとした時、椅子の足がきしりと悲鳴を上げて折れ、そのまま地面に尻もちをついた。


 それを見た令嬢たちは大笑いを始める。


「いたたっ」

「あら、ローニャはおデブさんなのね。だから椅子が壊れてしまったんだわ。良かったわね、ズボンで。もしかしていつも椅子が壊れるから騎士服を着ているのかしら?」


「あら、可哀想に」

「ほんとよねぇ。やはり獣は獣なのかしら?地面に這いつくばる方が得意なのでしょう?」


 鼻で笑っていたり、卑下た笑みを浮かべ扇子を仰いでいたり、口々に令嬢たちは私を罵ってきた。


 あったまにきた!!

 売られた喧嘩は買ってやろう!


 私はあえてぱんぱんとお尻をはたき、満面の笑みを浮かべた。


「とーっても面白いですね! 皆様そんなに笑っていられる立場なのですか? 養女となった私の身分は王族なのですよ? これを父が知ったらどうなるのかしら? フェルナンド、どう思う?」


 私はフェルナンドさんに話を振った。


 お茶会の席には令嬢以外に各家の従者や侍女も待機しているし、王宮の従者が接待している。


 もちろん護衛も各所にいて黙って済ませるには難しいはずだ。

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