【SIDE P】(o・Θ・o)冒険はなかなか始まらない
冒険をするからには装備だ。
めんどくせぇな、と表面でそういう態度をかましつつ、心の奥底では隠しきれないパッションを抱えてどきどきしている男の子のオレがいる。
なんだかんだで冒険ってロマンがあるんだよな。冒険の先にお宝と名誉があるならなお結構。
ここでは冒険者としての訓練をするとして、最長一週間程度滞在すると仮定してその分の食料を準備しておくのがいいだろう。
ボンドがいるのでオレとそよそよは楽だ。オレたちのような体の小さい小鳥が必要とする食料など人間にしてみれば微々たるもんで、担ぐボンドの負担も少ない。
通常食で米(ぷっくりんこならなお結構)を持つとして、携行食としてベコナッツとかバターケーキくらい買っておくかな。キャラメルも買ってこう。刻みピーナッツが入ったやつ。
そよそよは食いしん坊だからあめ玉とか多めに買って置かなくちゃな。塩飴とあと甘露飴買おう。こんぺいとうも買っとけ。味は一緒だけどオレピンク色のが好き。もしもの時のために乾パンも買い物かごに入れておく。あと、高カロリーの携行食とは別の楽しむ為のお菓子。この歳になると、こういう時でない限りなかなかお菓子なんて買わないもんな。
なんだか楽しくなってきた。鼻歌を歌いながらお菓子売場を物色する。
駄菓子コーナーにいると、そよそよがあめ玉が刺さった棒を3本ほど持って来た。
「チュッパチャピス買っていい?」
「おお、いいぜ」
「ありがとう。これはとても万能なんだよ。敵がいたらこれで殴れるし、お腹空いたら食べられるし」
「ん?」
そよそよの言葉にオレは首を傾げた。
「ん?」
そんなオレを見てそよそよも首を傾げた。
「どうしたの、パァム」
「え、いや、おまえ、それで殴るのか? その飴で……?」
「うん。これでぶつよ。虫とか結構つぶれるよ。汁が出るよ」
「まぁ、出るだろうな」
「パァムは虫を潰したことないの?」
「いや、あるけどよ。敵か、それ」
「悪い虫もいるもんだよ。そよは小さい頃に蜘蛛の巣にひっかっかって食べられかけたことが五回もあるよ。その度に仲間が助けてくれたけど。そのときに強くなろうと決心したんだよ。それからと言うもの、やっつけてきた敵は数知れず……」
「お、おう。おまえ、案外波瀾万丈な鳥生を歩んでいるようだな」
「ふふ、もうそよの手は汚れているよ」
チュッパチャピスを見つめてそよそよが怪しげな笑みを浮かべて小さく頷いた。
「パァムー、そよそよちゃーん、買うもの決まった? そろそろお会計してきていいかな」
別行動をしていたボンドがぎっしりと詰まった買い物かごを重そうに持ってやってきた。
「そんなにいっぱいなに買ったんだ」
「いやぁ、冒険するにはやっぱり『やくそう』とか『どくけし』とか必要かと思ったんだけど、置いてないんだよな。『ポーション』もなかったし。だから代わりにカロリーメイトっぽいの買ってきた。あとガスのあれ一式と」
いやぁ、じゃねぇよ。ガスのあれ一式ってなんだよ。
かごの中を見ると、どうやら火を使うのに必要なガスボンベや調理器具などを買うつもりらしい。シエラカップまで入ってやがる。どうやらこいつ、形から入る人間だな。
オレたち鳥はたまにカレーなども食べたりもするが、普段は木の実や野菜などで十分だ。だが、いちいち加熱して食べたい人間には火を使う道具一式がとても重要であるらしい。それを否定することもできないので、オレは黙って頷いた。
「パァムとよそちゃんのも一緒に買うよ。俺の奢り」
「ありがとよ」
「わあい。ありがとう、ボンド」
「こんなんでいいの。少なくない? しかもお菓子ばっかりじゃん」
オレたちの持っているかごを覗き込んでボンドが不安げな声をあげた。
「オレたちのサイズではこんなもんだ。」
「オレももっとお菓子買えば良かった。見たことのないお菓子が多くてちょっと躊躇しちゃったな」
「十分だろ。巣籠もりするわけじゃないし、買いすぎなくらいだ。荷物持つのはおまえだからな」
「まぁ、そうなるよな。パァムやそよそよちゃんに荷物持たせようって気にはならないな」
「なんだか遠足みたいで楽しいね」
そよそよが笑った。否定もできずにオレは少しだけ嘴を尖らせた。




