娯楽の町ライクスチアとタイガールフ(虎の獣人)
町の入口付近の建物の陰で護はプレートの確認をしながら……。
ここはライクスチアの町だ。娯楽施設などが多い町のためか街路を行き交う人々で賑わっていた。
勿論、商業施設もあり豊富な装備品が揃っている。それだけじゃなく食品などを売る市場や露店なども多いようだ。
そして、この町のレンガの塀と建物の隙間には護の姿があった。
相変わらずプレートを開き色々と調べているようである。
(あれから結構な数の魔物を倒したけど……そんなにレベルが上がっていない。もっと倒さないとかぁ……)
現在の護のレベルは1からレベル3に上がっていた。
だが数百体以上の魔物を倒しても、そんなに上がっていなかったためガッカリしている。
(倒す魔物にもよるのか? 今度は、もう少し強い魔物を倒してみよう)
そう思いながらプレートを操作していった。
(そういえば何処で魔物をお金と交換するんだ? そこまで詳しく載っていないってことは……自分で探せってことだよなぁ。
ん? あっ、そうか! もしかしたら冒険者ギルドに行けば分かるんじゃないのか)
行く場所が決まり、ニヤリと笑みを浮かべた。そして建物の隙間から出て冒険者ギルドに向かい歩き始める。
「ねえ、そこの君。止まってくれないかニャー」
護の背後で声がしたため立ちどまった。自分じゃないかもしれないと思うも喋り方に魅かれて声のした方へ向きを変える。
「猫の獣人!?」
思わず声に出してしまった。
「猫? なんのことなのかニャ?」
「種族名ですけど。もしかして違うのか?」
「ボクの種族名は、タイガールフだよ」
それを聞き護は瞬時にプレートを開いて調べる。
「虎の獣人のことを、タイガールフって云うのか。ルフは獣人のことをいう」
「何を言ってるの? 声が小さくて聞こえないニャ!」
「あーごめんごめん。それで、もしかして俺に用があって止めたのか?」
護は違っていたらと思い一応そう聞いてみた。
「そうだニャ。そうそうボクはルカメイシェル・ナトラ。呼ぶときは、ルカでいいのニャァ」
「あっ、自己紹介か……。こういう時は……俺の名前は、マモル・テンノだ。それで用って?」
「マモルかぁ。うんうん、いい名前だニャ。あっ、そうだった! もしかして君って異世界の人なのかニャ?」
そう言われ護の顔は青ざめる。まさか気づかれるとは思っていなかったのと城に連れ戻されるんじゃないかと云う恐怖からだ。
そのため逃げようかと思い手を前に翳した。
「あー待って! 攻撃しないでニャ」
「……?? 攻撃するつもりはない。だけど、なんで聞いた?」
「フゥー……よかったニャ。異世界の人で合ってるのニャァ」
ルカメイシェルは喜んでいる。
「そうだったら、どうするつもりだ?」
「マモルも魔竜王を倒すニャ?」
「いや俺は……」
なんて応えればいいのか分からず護は言葉に詰まり俯いてしまった。
「なんか訳ありみたいなのニャ。分かった! じゃあコッチに来て、ボクの家で話そうニャ」
そう言われ護は躊躇った。だけどルカメイシェルが悪者にみえなかったため「分かった」と言い首を縦にふる。
護の意思を確認するとルカメイシェルは「コッチに来てニャ」と言い歩き出した。
警戒しながら護は、そのあとを追いかける。
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暫く歩き護はルカメイシェルの家にきた。
そして現在、護はテーブルを挟みルカメイシェルの真向かいの花柄で可愛い椅子に警戒しながら座る。
「さっきから警戒してるのニャァ。どうして、なのかニャ? マモルは男性だよニャァ。ボクが警戒するなら分かるんだけどニャ」
「という事は女性か……そうか。だが警戒しているのは、そんな意味でじゃない」
「ふ~ん……そっかぁ。じゃあ、どうしてニャ?」
そう問われ護は話してもいいのか悩んだ。
(逢ったばかりのルカメイシェルに打ち明けても大丈夫なのか? もし、これがなんらかの罠だとしたら……。
いや、もしバレたとしても逃げればいいだけだ!)
そう考えが纏まり護は、ここまでの経緯を話し始める。
それを聞きルカメイシェルは大量に涙を流し泣き出した。
「酷いのニャ。それが本当なら、みんなを助けないとニャァ」
「そうだな……でも恐らく既に終わってる。それに逃げ出した俺が戻っても処分されて終わりだ」
「城を壊滅すればいいのニャァ。あーそうだ! ボクの国ニャシルニアでもね……異世界の勇者さまを召喚しようかって案があがってるのニャ」
一呼吸おき、ニコッと笑みを浮かべる。
「だからマモルが行けば歓迎されるニャ!」
それを聞き護は首を横に振った。
「俺は利用されて殺されるのは嫌だ」
「ボクの国では、そんなことしないのニャ」
「それを信用しろって? できるわけない!!」
更に警戒し護はルカメイシェルを凝視する。
「じゃあ、もし国でマモルに酷いことをするようなら逃げてもいいし……国を潰してもいいのニャ」
「それ……本気で言ってんのか? でも……そうだなぁ。そこまで云うなら行ってもいい」
「良かったニャ! あーそうそう……その前に、お願いがあるのニャァ」
なぜ護に声をかけたのかをルカメイシェルは話し始めた。
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