嘘つきの僕
はじまりは、偽りだったかもしれない。
何の取り柄もない僕を、好きだと言ってくれるキミ。
その言葉を、素直に受け取ることはできなかった。
冷やかしか、興味本位か。
その程度にしか思えない。
それでもキミからの告白を受けたのは、少しばかりでも僕が。
キミの言葉を「信じたい」と、願ってしまったからかもしれない。
淡い願いを抱くのは、愚かで脆い。
弱さの具現化だ。
そう自身を否定するのに、キミといる時間は悪くなかった。
どこまでが本当で、どこまでが偽りなのか。
自分の感情すら、把握できない。
願いが叶うなら、こんな皮肉屋の自分を捨てたい。
周りのように、世渡り上手になりたい。
僕を見捨てなかったキミにとって、「プラス」な人間になりたい。
それを口にしたとき、キミは笑った。
嘲笑うのではなく、優しく、慈愛に満ちた微笑みで。
「ありのままの、あなたでいい」
そう告げて、静かに手をとる。
その手はとても、温かかった。
騙されている?
いつか、「あれは嘘」と嗤われる?
いや、今はそんなことどうでもいい。
キミの言葉が嘘であれ、僕が今涙を溜めているのは事実だ。
僕はずっと、誰かに認めて欲しかったんだ。
そんなことにも気付けないでいて、僕は馬鹿だ。
虚しい嘘で固めた自分なんて、何の意味もない。
苦しいだけだ。
それなら優しい嘘でもいい。
僕に安らぎを与えてくれる、キミの手を取りたい。
すぐには信じられないけれども、いつか。
キミの言葉の全てを受け止められたならば。
僕はどれだけ、幸せものだろう。
嘘からはじまった恋が、ホンモノに変わる。
そのとき僕は、初めて「人間らしさ」を得られるのかもしれない。
他者を信じることは怖いけど、前に進むには独りでは叶わない。
まずはキミを信じてみよう。
キミが僕の、嘘を破る。