慰霊祭の前の珍事
『慰霊祭』──この国で毎年行われるこの祭は、文字通り死者の魂を慰めるものだ。
特にこの年に亡くなった者は一時的に戻ってこれるとされる。
これは死者の魂が行き着く先と、この国のある世界との狭間に存在する魔界に、まだ魂が留まっているからなのだとか。
魔界は存在するし、魂の存在も認められているものの、これらは単なる宗教的な伝承である。実際に『一時的に戻る』云々は『ないこともない』といったところ。大概の場合、魂は狭間を通ってそのまま別の場所へいくので。
ただ『留まった御魂を歓迎した後、またちゃんと戻るのを促す為』という名目で『慰霊祭』は伝統行事として残っていた。
この日は、仮装パーティーが市街や邸宅といったあらゆるところで行われる。
中でも数年に一度、魔界から客人を招き王宮でもてなす年は、特別盛り上がる。
客人を招く周期は大体4、5年に一度だ。だが一昨年、第一王子が立太子したと共に結婚し、王太子妃がすぐ妊娠。昨年無事出産したとあって、立て続けの慶事から好景気に湧いていた。
なので2回連続して4年だったところを1年繰り上げ、前回から3年後である今年に魔界からを客人を招くことになっている。
──しかし、『好事魔多し』と言う。
「うわぁぁぁああぁぁぁぁぁぁッ!?」
その朝、第二王子の部屋に訪れた従者からから始まったこの絶叫は、瞬く間に複数の者に同様の雄叫びをあげさせた。
この国の第二王子であるオリヴァーの身に、とんでもないことが起きていたのだ。
題名からお察し。