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「俺達は宇宙の影だ。世界が拡がるその先にまた俺達の未来もある」
天体観測をする父の側で、白い吐息と共に感じた言葉。子供だったサユリに向けて言ったものではないが、言葉は記憶に刻み込まれていた。
サユリは星を見ていた。まるで自分を、鏡を見ているような感覚。天空が堕ちていた。指先を、星へ。かつて行われた特殊臨床試験の記憶。3歳以前の記憶は一般的に薄いと言われるが、サユリは鮮烈に憶えていた。
人類が直面した限界。カタストロフィー。子供達に未来を託した大人達によって造られた社会。定式化できないカオスによる侵蝕。
「変えなきゃ…私達が」
少女は呟いた。