幼い頃に抱いた歪んだ心が織りなす,少し歪な年の差ラブ―――!!
第1話――矢部視点
そして、それから10年以上経った今でも未だに“あの人”を忘れられずにいた。 あの顔にもう一度会いたいと思った。 けど会う勇気なんてなかった。 だって、会ってもきっとわからないだろうし、 そもそもどこにいるかも、 名前すら知らないんだから会うことなんかできるはずがなかった。 それでもやっぱり諦め 切れなくて、あの日以来街であのくらいの男性がいると、ついあの人じゃないか、なんて思って見 てしまう。そんなことが何度もあったからか、今ではすっかり変なやつだと学校でいじられるようになっていた。 「こいつ、50歳くらいのおっさんが好きなんだぜw」 「キモっwホモじゃんw」 「てか老け専かよwww」 こんなの、 何回言われたって慣れなかった。 辛くて仕方なかった。
でも、ある日を境に、 学校に行くのが楽しみになったんだ。 あれは高3の春だった。 他の学校から来た先生の中 にいたんだ。 「あの人」 が。 正直、あのときの感動は本当に忘れられないものだったし、 嬉しくて仕方なかった。 で もその後僕は、 自分が何を喜んでいたのかすらわからなくなった。 話しかけても相手は自分のことなんか知らないん だし、そもそも話しかける勇気なんて……。 不安で頭がいっぱいになった。 もしかしたらさっきので姿を見ることすら 最後かもしれないとすら思った。 しかし、それははっきり言って杞憂だった。 「あの人」は隣のクラスの担任で国 語の担当の教師だったのだ。 しかし、喜んでいられたのはその時だけだった。
それから3日がすぎ、 「あの人」 の初めての授業が始まった。 そこからは地獄だった。 クラスのやつが 「この矢部春紀ってやつ、センセーみたいな人が好きなんですよ〜! wキモくないですか? w襲われないように気をつけてくださいねw」 と叫んだ。 周りも同調するように口を開く。 僕は頭が真っ白になった。 せっかく会えたのにこれできっと距離を取られてしまう。 男なのに男とうまくいくなんてありえないのに少し期待していた自分が恥ずかしくなった。 そして、もうどうでもよくなってしまったんだ。 そのせいで僕は言ってしまった。 「ねぇ、 先生。 僕先生のこと、10年以上前からその… 好き なんです。」 僕は先生はきっと気持ち悪がるだろうと思った。いっそ、そうであってほしいと さえ思った。そうしたらきっと諦められるだろうから。 なのに先生は全く違う反応をした。 真っ赤に赤面して早口に なった。 そう、照れたんだ。 その顔はあのとき見た顔と同じように、でももっと強く、 僕を魅了した。 そのとき確信 してしまったんだ。 この人じゃなかったらダメなんだ、と。