7.お仕事、そして出発
それから、グルグルグル~! 2日後!
「いらっしゃいませ~! お昼にどうですか~? と~っても美味しいですよ~」
わたしは今お仕事中。
と言っても、ただのアルバイトなんだけど。
当然カトリー……あっ、違った。ピーシャも一緒よ
「はあ、ダリべロッテや。なぜわしまで付き合わされておる……それにお主のその恰好はなんじゃ?」
「ん? なにって、メイド服だけど? どう? 似合ってるでしょ?」
「一々回ってヒラヒラさせんでいい。やれやれ、こんなことしとる場合ではないというのに……」
「フフフッ、そう言うあなたも似合ってるわよ」
今わたしたちが何をしてるのかって言うと、それは客寄せのお仕事。
料理とか接客はできないから、知り合いの食堂屋さんで呼び子として働いてるの
「しょうがないじゃない。店主の娘さんが風邪でお休みしてるんだもの。だからわたしがこうやって代わりをやってあげてるのよ」
いつもお世話になってるんだし。
困ったときはお互い様だわ。
「それに、ほらっ! あなたも愛想よくなさい。せっかく店主さんが用意してくれた衣装が台無しになっちゃうわ」
「そうじゃ! おのれあの店主! わしを見るになり勝手にこんな物を──」
「とっても似合ってる。ネコさんメイドって感じで。それに可愛いリボンだわ。フフッ、少しズレてるから直してあげる」
キュッ、キュッと
「ええい! 人の話を聞けい!」
「フフッ……あっ、お1人様ですか? は~い。では、どうぞごゆっくり~」
いやだわ。
ちょっと楽しいかも。
──そしてあっという間に、カチッ、3時間後ね!
「う~~ん! 疲れたわね~」
お客さんのピークも過ぎたらしいから、もう上がっていいそうよ。
それでお仕事も終わったことだし、今は一度宿に戻ってきたところ。
「フフフッ、立ってるだけでこんなにお金を貰っちゃった」
わたしが労働で稼いだお金。
たまにはちゃんと働くのも悪くないかも。
って、これを見てるとそう思えてくるわね。
「何を一人で浸っておる? お主にとってはほんの端金じゃろうて」
「こういうのは気持ちが大事なの。分かってないわね。それに人助けも勇者の立派なお仕事なんでしょ?」
「まあそうじゃが、モノには限度があるじゃろうが……はあ、人間に愛嬌を振りまくのは猫体に響く……」
あらあら、すっかりお疲れね。
「そう? でもあなた大人気だったじゃない。何だかんだ言って楽しそうにしてたし。店主さんも感謝してたわよ?」
「フン。わしがお主以外と話せんことを知っておるくせに。感謝などされても嬉しくない」
あの後、店主さんからお礼にと出された賄いも、残さずしっかり食べたピーシャさん。
まったく、満腹なっても相変わらず愚痴っぽいんだから。
ポンッ!
「そうだわ! もう冒険者なんてやめて、2人でお店を出すのはどうかしら?」
一度カフェとか開いてみたかったし。
実はそういうのにちょっと憧れがあったりして……。
ええ、そうね。
このまま店舗経営モノに路線変更するのも悪くない──
「──これこれ、いかんぞダリべロッテ。まさかと思うが、自分の使命をもう忘れおったか?」
「……ちょっとした冗談よ。連れない子猫ちゃんね」
なによ、ちょっとくらいノってくれもいいじゃない?
「勇者になるための特訓でしょ? 分かってるから」
「そうじゃ。あれからもう2日が経つ。そろそろ修行を始めんか」
「修行修行ってあなた、ホントそればっかりね。なにも仙人じゃないんだから」
あれからピーシャも毎日こんな感じ。
口を開けば勇者の特訓ってうるさいのよね。
仕方ない。
そうね。そろそろわたしも本腰を入れるとしましょうか。
「これでは先が思いやれる一方。お主が呑気にこうしてる間にも、魔族は着々と世界を──」
「はいはい。気持ちは分からなくもないけど、焦っても何も良いことないわ」
「違う! お主が落ちすぎなんじゃ!」
「もう分かったから。少し黙っててちょうだい。お隣さんに迷惑がかかっちゃうわ。それにもう準備できたから、さっそく行きましょうか」
「ぬぬっ? 行くとはどこへ?」
「フフッ、良い場所を知ってるの。特訓には持ってこいだわ」
「ほう?」
準備はいいこと?
それじゃ、ヒュイゴーよ!