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4.その正体、伝説の魔獣

「喋った⁉」


 わたしのカトリーヌが、じ、人語を……。


「お、おったまげたわ……最近のネコって人間の言葉も話すのね」


 そういう個体もいるのかしら?


「お主、一体何を言っておる。そんなワケなかろうて」

「えっ?」

「違う。わしは猫などではない」


 う~ん……?


「いや、どこからどう見てもネコじゃない。可愛い子猫ちゃんだわ」

「それは世をしのぐ仮の姿。よいか? 一度しか言わんから心して聞くがよい。何を隠そうこのわしこそが、かの伝説の魔獣ケルベロス、そしてその子孫──」

「──ほ~らっ、猫じゃらしよ~」

「ビニャ⁉ ビニャ~ッ!」


 あら~、お腹を向けてだらしないでちゅね~。

 ここが良いんでちゅか~?

 よちよちよちよち。


「ビニャ~!」

「フンッ、何がケルベロスよ。ただのネコじゃない。テキトーなこと言わないでくれる?」

「ハッ⁉ 今のつい……身体がどうも言うことを聞かん」


 こんなのが、あの伝説のケルベロスだなんて。

 末路なんてレベルじゃない。


「それに何よ! その声! その話し方! まるでおばあちゃんみたい!」


 わたしの祖母にそっくりなんですけど⁉

 あの意地悪してくるあの感じに!

 ンキイイイイ!


「なんじゃ、お主は失礼なヤツじゃな。これでもわしはお主ら人間族よりも遥かに──」

「わたしのカトリーヌはこんな声でしゃべったりしない! 元に戻りなさい~!」

「うががが、や、やめい! してそのカトリーヌとはなんじゃ⁉ 人を好き勝手に呼び負って! わしには歴とした呼び名があるんじゃ!」


 ピタッ


 名前? 前の飼い主からの?

 やっぱり飼い猫?


「なによ、名前があるなら最初から名札かなにか下げてなさいよ」


 そういうのは早く教えて欲しいモノね。

 まったく、考えて損したじゃない。


「で、あなたのお名前は? 改めてなんて呼べばいいのかしら?」

「オホンッ、では言うぞ。わしの名はピーシャ。すきま風のピーシャじゃ」


 すきま風? 変わった苗字ね。

 二つ名か何かしら?

 それにこの子猫、名乗っただけなのになぜか誇らしげにしてる。

 ホント、見た目だけはいっちょ前に可愛いんだから


「ふ~ん」

「なんじゃ、その微妙な反応は……」

「ピーシャ……ペットみたいな名前ね。やっぱりカトリーヌで良いじゃない」

「お主! このわしの高貴なる名を、あろうことか愛玩動物呼ばわりしおって!」


 なんで怒るのよ。

 だってその容姿で言われても、ね。


「それで、ピーシャさん? あなたはどうして今までネコのフリをしてたのかしら? ケルベロスって言うのなら、本来はさぞかし優雅なことなのでしょうね」

 

 この小さな魔獣さん。

 文字通りネコを被ってたったわけね。


「残念じゃが、わしは諸事情により力を失っておる。情けない話ではあるが、今はこの姿を維持するのがやっとの状態じゃ」


 あー、だからあそこで行き倒れていた、と。

 そういうことね。


「ふ~ん、じゃあ今はソレがあなたの本当の姿ってこと?」

「まあ、そういうことになる。何も言い返せん」

「だったら、あなたはどうして力を失ったのかしら? なぜあそこで倒れていたのかも気になってたし」


 それにあなたもことだって知りたいし。


「今はまだ教えられん。まだお主をそこまで信用したワケではないからな」

「なによ、今まであんなに可愛がってあげたのに。それに命の恩人なんだから、少しくらい教えてくれたって良いじゃない」

 

 ケチ。


「ちと大袈裟じゃな。それにわしは腐ってもケルベロスの端くれ。あの程度の傷なら自己治癒でどうにでもなる」

「うわっ、あなたってイヤな魔獣さんね」


 ホント、昨日までのわたしのトキメキはなんだったのかしら……。

 こっちはあなたに結構お金をかけたんだけど?

 全部損しちゃったじゃない。どうしてくれるのよ


「大体、喋れるなら最初からそうしなさいよ。子猫だと思って可愛いがってたわたしがまるでバカみたいじゃない」

「なんじゃお主。まさか本気で猫だと思うとったのか?」

「なによ。あなただってその気になってたじゃない」


 昨日まで一緒に寝てたし。

 何ならそっちからわたしのベッドに入ってきたクセに。


「ほれほれ、すぐそう吠えるでない。わしが猫のように振る舞っておったのには、それなりのワケがあるんじゃ」

「……なによ?」

「それはな、お主を観察しておったからじゃ」

「観察ですって? 趣味の悪い魔獣さんね」


 このわたしを試していたっことでいいのかしら?

 それはそれで何だか腹が立つわね。


「素性を現すまで待っておったが、どうやら悪い人間ではないらしい。お主は人間の中では比較的良い部類に入るようじゃ」

「だからこうやってお話することにしたの?」

「そういうことじゃ」


 ……よく分からないわね。

 で、結局、話をまとめると、この子は魔獣で、今はその力を失っている。

 だから仕方なく子猫の姿をしてるってワケね。

 で、なぜかは知らないけど、急にわたしに正体を告げる気になった。


 ってとこかしら?

 正直、あまり現実感がない。

 っていうのがわたしの率直な感想ね。


 それと、これ以上はわたしのカトリーヌへのイメージが崩壊するから、あまりお話したくない。

 これは、夢?……イタタタッ、じゃなさそうだし。

 う~ん、どうしようかしら?


「──よし! お主に決めたぞ!」

「ん? 今度は何よ?」

「これより、お主に【勇者】の力を授ける。そう決めたんじゃ」

「……へっ? ゆう……しゃ……?」 

「さよう。勇者じゃ」

 


 なによ、それ……。

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