2.天気は曇りもよう
「フンッ! なによ、アイツら! もう知らない!」
もう最悪!
昼間っからなあんなの見せつけられたら、誰だって飛び出したくなるわよ。
「なによ……なによ、なによ、なによ!」
アイツら、最後らへんはわたしのことを無視してた。
完全にいないと者として扱ってた。
ンキ~~ッ! もうホント腹立つ~!
「それに冒険者なのに、男女の色恋なんて……汚らわしい!」
互いの背中、命を預けるのが冒険者パーティ。
それをあろうことか、男女の関係でやって行こうだなんて。
ホント呆れる。
舐めてるとしか思えない。
ピンク塗れもいい加減になさいよ!
「あんな難癖みたいな理由で……わたしが邪魔なら、ハッキリ言えばいいじゃない!」
スキルがない? 術しか使えない?
ええ、その通りよ。
だから? なにか文句がおアリなのかしら?
お生憎さま、わたしはアンタたちより遥かに強いわよ!
「何が定員オーバーよ。誰が無能ロッテよ!」
滅茶苦茶言ってくれるわね。
わたしを追い出したいなら、もう少しマシな嘘をひり出しなさいよ。
お前じゃこの先やっていけない?
へっ? なんですって?
これ以上先に進む気なんて更々なかった癖に。
テキトーな依頼を受けて、テキトーにやっていくつもりだった癖に。
いい加減なことを言わないでよ!
アイツらのあの顔!
あ~~~! イラッイラッする~~~!!!
「なによ! こんな壁! フンッ!」
ボコッ! ドカドカッ! ドゴオッ!
「……はあ、少し疲れたわ。どこかで休もうかしら」
そうね。
とりあえず、落ち着きましょうか。ええ。
どこか座れる場所は……あっ! あのベンチが良さげね。
それに何だか喉も渇いちゃった。
さっきからずっと怒鳴りっぱなしだったから無理もないわ。
もうカラカラで砂漠になっちゃう。
「ねえ、おじさん。ソレ一本くれないかしら?」
「あいよ、毎度あり! ほらよ!」
パシッ
「ええ、ありがとう。ここに置いておくわね」
チャリン
よいしょっ。
ちょっと失礼するわね、ベンチさん。
ウフフッ。優しいのね、あなたって。
「ふう~。さて、さっそく頂こうかしら」
少し早いけど、午後のティータイムっと。
「……う~ん、微妙かも」
ほらっ、わたしって大人じゃない?
だから甘いのはちょっぴり苦手。
ティータイムはまだとっておくわね。
「こういうのはリーゼが好きそう。そうね、あとであの子の分も……あっ」
そうだったわ。
リーゼは、あの男に……。
今ごろアイツらと……っ
「はあ、わたし、厄介払いされたのね……」
正直、あんなゴミリーダーのパーティなんてどうでもいい。
勝手に崩壊しようが、どこかのダンジョンで野垂れ死のうが、わたしの知ったことじゃない。
だけどリーゼ。
ああ、わたしの可愛いリーゼロッテ。
あの子のことだけが心配よ。
「リーゼ……」
ねえ、どうしてなの?
あなたが生まれてもう16年。
わたしがまだ2歳の頃から、わたしたちはいつも一緒だったじゃない。
ねえ、覚えてる?
あなたがまだこ~んなに小さい頃、いつもわたしの後ろをトコトコしてた。
ダリべお姉さま大好き~! って。
あっ、思い出すとなんだか涙が……うぅ。
「あんなに愛情を注いできたのに……もしかしてお姉ちゃんのこと、嫌いになっちゃった?」
毎日一緒に寝てたし、お風呂だって入ってた。
おはようとおやすみのチューも毎日欠かさず。
よく恋人ごっことかもやってたわね。
なのに、あんなに仲の良い姉妹だったのに。
あの子も嫌がってる素振りはあったわ。
だけどお姉ちゃんには分かるの。
アレは好きの裏返し。
ほんの些細な照れ隠しのはず。
本当はお姉ちゃんのことが大好き。
だって毎年、誕生日プレゼントだってちゃんとくれるもの。
だから、ううん。心当たりが全くない。
ええ、そんなの絶対ありえないわ。
「はあ……今日のわたし、ため息ばっかりね」
なによ、この酷い水たまり。
わたしの顔がグチャグチャ、失礼な水たまりだわ。
こんな顔でさっきまで歩いてたっていうの?
それに何だがお空も薄暗い。
まだお昼過ぎだっていうのに、今日の天気は雨だったかしら?
振ってくる前に宿に戻ったほうが良さそうね。
じゃあね、ベンチさん。
また機会があったら座らせてもらうわね。
えっ、なに? 良いお尻だった?
ウフフッ、そんなことないわよ。またね。
「はあ、これからどうしましょう……」
一度故郷に、村に帰る?
妹を置いて一人で?
いいえ、そんなの絶対ダメよ。
あの子を置いて帰るなんて、それこそ姉失格じゃない。
第一、わたしたち姉妹が離れ離れになるなんて、あってはならないことだわ。
「……そうよ。わたしはあの子のお姉ちゃんでしょ! わたしがしっかりしないでどうするのよ!」
パンッ!
一刻も早く目を覚ませないと。
あのままじゃダメよ。
あんなリーゼロッテ、はたから見てもかなり異常。
ヒリヒリヒリ
そうよ。
アレはおそらく洗脳、幻惑の類。
きっとスキルか何かで操られているんだわ。
そうと決まれば、
「よし、待っててね、お姉ちゃん頑張るから!………って、あら? ここはどこかしら?」
う~ん? 知らない路地裏ね。
考え事をしてたらすっかり道に迷ってしまったわ。
「ふ〜ん、なるほど、ね」
知ってるかしら?
知らないなら教えてあげる!
フフフッ、こういうのは迷路にハマる前に、来た道を引き返したほうが良いの。
「というワケで、わたしは賢いので、ここでUターン!……って、あら? 奥に何か落ちてるわ」
何かしら。
さっきからいまいちテンポが悪いわね。
布切れか何か?
にしては黒っぽい、随分と汚れて──
「ビ、ビニャ~……」
「えっ⁉」
今かすかに動いたわ⁉
この鳴き声は……ネコちゃん⁉
それにまだ小さい、子猫だわ!
「どうしたの? 親とはぐれちゃったの? っていうかこの傷……あら大変! 早く病院に連れて行かないと!」
病院は……確かあっちだったわね。
「うん、良い子だから。大人しくしててちょうだい」
「ビニャ~……」
大丈夫、すぐに手当てするからね。