1.追放、パーティを離脱
ここは冒険者ギルド。
の、隣にある大きな食堂。
「じゃあ手短に言うぞ。ダリべロッテ=シャンクルホーン、お前はもういらねえ」
シーン……。
えぇ、何このリーダー……。
ロード=エクストリオっていう見た目も顔も変な男
コイツ、このわたしを呼び出しておいて、いきなり何言ってくれるのよ。
わたしとしたことが、ちょっとだけビックリしちゃったじゃない。
「なによいきなり。一応理由を聞いていいかしら?」
「ああ! 俺のハーレム要──いや、頭と能力が足りてないヤツは、俺のパーティには必要ないからな。改めてお前を追い出すことにしたんだ」
うわあ、この人……。
いま明らかにハーレム要員って言ったわね。
まさか現実で言う人がいるなんて。
「フン、なによそれ。そんなくだらない理由で……こっちはたまったモノじゃない! ちょっとリーゼ! あなたも何とか言いなさいよ!」
ロードの隣の席にいる少女。
彼女はそう、わたしの妹、リーゼロッテ。
亡きお母さまの生き写し。
瞳や髪の色は全然違うけど、わたしに似て綺麗でとっても可愛い。
雰囲気はまるでお姫様みたい。
わたしの大事な大事な、大切に育てあげた、たった一人の妹。
ええ、そう。
彼女ならきっと、このバカ男に、キツい一言を──
「──ロード様の言う通りです~」
ええッ⁉ ええええええッ⁉
「なっ⁉ リーゼ! ちょっとあなた!」
「だってホントのことでしょ? ダリべお姉さまは~、ロード様のパーティには相応しくないんだもん~」
何が、もん、もんよ!
アレね、我が妹ながらイラっときちゃうわね。
「ああ、そうだろそうだろ」
「は~い、リーゼロッテもずっと思ってました~」
「ああ、流石がだぜ。脳筋の姉とは大違い……っておいおい、こっちを睨むなよダリベロッテ。怖えじゃないか」
「あはっ、ホントだ。お姉さまってばこっわ〜い!」
ロード。あなたは黙ってなさい。
あなたのことなんてどうでもいいのよ。
それよりも……
「そ、そんな……お姉ちゃんがいないと、誰があなたを守るって言うの⁉」
「ん〜? 誰かな〜。チラッ」
な、なんでよ!?
なんでそこでロードの方を見るのよ!?
「こらっ! リーゼ! そんなゴミ男よりもこっちを! お姉ちゃんの方を見なさい!」
「ん〜、無能なお姉さまがなんか言ってる〜」
「リーゼ……お願い、良い子だから……お姉ちゃんの言う事を聞いて……」
「ううん、聞かないよ。だって~、リーゼロッテには~、王子様がいるんだも~ん」
う、腕を絡めてる……わよ⁉
あんなに可愛かったわたしのリーゼロッテが……。
わたしを慕ってくれていたこの子が、こんなゴミ男に……っ
そんなの、認めない。
ええ! お姉ちゃんは絶対に認めません!
「くっ、早くその下品な男から離れなさい!」
ガタッ
「おっと、コイツはもう俺の女だ。手を出すのは良くないな」
バッ、グイッ
「邪魔しないでロード! そこをどきなさい!」
「きゃー! ロード様、す、て、き~♡」
「リーゼ⁉ 目を覚ましなさい! リーゼ!」
待ってて、お姉ちゃんがいますぐ元に戻してあげるから!
「おいおい、いいのか? もしかしてここで騒ぎを起こす気じゃないだろうな?」
「くっ……」
い、嫌だわ。
わたし、注目を浴びちゃってる……。
「そういうわけだ。コイツはもう決定事項、パーティの総意だからな。残念だがお前には去ってもらう」
なによ、それ……。
「あん? 納得がいかないってツラだな」
当り前じゃない。
だってこんなこと、許されるはずがない!
「ダリべロッテ。お前、スキルがないだろ。できる事と言えば術だけだ。それじゃあこの先、冒険者として到底やっていけない。んなこと一々俺に言われなくたって分かってるだろ?」
いや、確かにそうだけど……。
あなたの言う通り、わたしはスキルなんて持ってない……。
だけど、パーティで一番強いのはこのわたしなんですけど⁉
お荷物とか言われる筋合いないんですけど⁉
「挙句の果てに、その残念なおつむまで搭載されている始末……やれやれ。これじゃ追い出されても文句は言えねえよなあ?」
「なんですって〜!? 黙って聞いてれば! 誰がマヌケロッテよ!」
「そうですよ〜、ダリべお姉さまは生粋の脳無しロッテなんです~」
「んなっ⁉ こらっ、リーゼ! お姉ちゃんにそんな言い方はダメじゃない!」
「ハハハハハッ! おもしれえな、おい」
「あなたは笑わないで!」
なによこれ!
どうなってるのよ!
全然話が通じないじゃない!
「そういうわけだ。この際ハッキリ言わせてもらうが、お前には才能ってモノがまるでない。無能なダリベロッテは俺たちのパーティには必要ない」
「は〜い。だからダリべお姉さまには〜、ここで消えてもらいまあ~す」
リ、リーゼ、リーゼロッテ……。
そんな、お姉ちゃんよりも、その男が……っ
「言葉が出ないって感じだな、お前のシスコンぶりには呆れるぜ。そんなに妹と離れるのが嫌なのか? おおっ? 何だったらお前も俺の女にしてやっても──」
「──ロード様! お姉さまを早くパーティから追放して下さい!」
「……チッ、わかったよ。ったく、うるせーな……と言うことだ。悪く思わないでくれよダリベロッテ。お前の可愛い妹もこう言っているからな。それによ……」
パチッ
「な〜に、お前の後釜もちゃ~んと用意してある」
「……なッ⁉」
「──諦めろ。すでに定員オーバーだ、ダリベのお嬢」
なによ⁉ 急にガタイの良い男が現れたわ!
あっ、この呼び方……。
あなたは……!
「ダブラス! あなた今まで一体どこをほっつき歩いてたの! あなたも早くコイツを説得して! って、その横にいる女は誰よ!……ハッ、まさか⁉」
彼はわたしたちのパーティの一員。
盾役のダブラス=ダウラードマン。
その横には、腕をからめながらくっつく女がいる。
こ、これは……
「よおロード、待たせたな」
「おお、ダブラス。いつにもまして遅いじゃないか。そいつがお前の女──いや、新しいメンバーでいいんだな?」
「ああ」
っ……見るからな腹黒そうな女ね。
悪趣味だわ。
「揃ったな。よし! まずはそう、あいさつだ。あいさつから始めよう」
「ミーナです。ミーナ=クルスと言います。皆さん、どうかお手柔らかにお願いしますね♡」
「うん、私はリーゼロッテ、リーゼロッテ=シャンクルホーン。気軽にリーゼでいいよ。よろしくね~」
「オホン! そして俺がここのリーダー! ロード=エクス──」
この、脳内ピンク共が……。
新作です。
よろしくお願いします。