表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/169

09 兄姉

 命名の儀の翌日。

 目を覚ますと寝台の横に子供がいた。

 銀髪で青い目の綺麗な顔をした男の子と女の子があたしの顔をのぞき込むようにしている。


 前世の王族と同じ髪色、目の色に一瞬びくっとしたが、父と同じだと考えなおす。


「だー?(だれ?)」

「あ、起こしちゃったかな?」


 男の子は笑顔で、そして小声で語りかけてくる。


「ルリア。はじめまして。そなたの兄のギルベルトですよ~」

「ぁぅ?(あに?)」


 兄ギルベルトは十歳ぐらいの男の子だ。

 父に雰囲気が似ているが、目元などは母によく似ていた。


「姉のリディアですよ、はじめまして」

「だぁぅ?(あね?)」


 姉リディアは、兄よりも少しだけ年下らしい。八歳前後に見える。

 髪と目の色こそ父と同じだが、顔立ちは母に似ている。

 兄も姉も母似と言っていいだろう。


「ルリアはかわいいね~」

「ねえねえ、抱っこしていいかしら?」

「立ったまま抱っこしてはダメです。首がすわってからでなければ」


 姉が乳母にお伺いを立てて、断られていた。

 子供に首がすわっていない赤子を抱っこさせるのは危ないという乳母の判断だ。


「はい。残念ね」


 姉は心底から残念な様子で、私のほっぺをツンツンする。


「きゃっきゃ」

 なんか楽しくなってきた。


「僕も、リディアも、ルリアにはずっと会いたかったんだよ」

「でも、どうして命名の儀が終わらないと、兄姉は会ったらだめなのかしら」


 姉のリディアが首をかしげる。

 妹からみても、姉はとてもかわいらしい。


「それは精霊の加護の関係だよ。命名の儀の前の乳飲み子に兄姉が近づいたら、母にもらった精霊の加護を兄と姉が持っていってしまうんだ」

「そうなのね」

「リディアが生まれたときも、命名の儀が終わるまで近づかなかったんだ」

「にいさま、そのとき二歳でしょう? 覚えてるの?」

「もちろん」

「ほんとうかしら?」


 そういって、兄と姉は楽しそうに笑った。


 どうやら兄は幼いのに博識なようだ。

 だが、精霊の加護云々(うんぬん)というのは、前世のころにもあった迷信である。


 大昔に子供だけに流行った病があり、兄姉からうつされた乳児が死ぬことが多かったらしい。

 だから、このような風習が生まれたんじゃないかと、前世の精霊王ロアが教えてくれた。


 あたしは教育を受けさせてもらえなかったが、ロアをはじめとした精霊たちが色々教えてくれたのだ。


 そんなことを考えていると、乳母が兄と姉に言う。


「若様。リディアお嬢様。こちらにお座りになってください。長椅子に座った状態なら、ルリアお嬢様を抱っこしてもいいでしょう」

「「はい!」」


 兄と姉は嬉しそうに、近くにある長椅子に座る。

 すると乳母が寝台からあたしを抱き上げて、兄に手渡した。


「そうです。右手で首をささえてあげてください」

「はい」

「左手はお尻を支えて、あ、右のひじをまげて、ルリア様の頭を乗せてあげてください」

「はい」


 乳母の監視下で兄は壊れものを扱うように、あたしをそっと抱っこする。


「兄だよ、ルリア。いっぱい食べて、元気に育つんだよ」

「だあ~」


 兄にしばらく抱っこされた後、姉に抱っこされる。


「ルリア。私が姉ですよ。あなたは妹なのです」

「だぅ?」

「妹なので可愛がってあげます。お世話して色々教えてあげます。私は姉なので」


 姉はとても嬉しそうに、何度も姉だと名乗る。

 妹が産まれたことが嬉しいのかもしれなかった。


「ルリア。いじわるされたら姉が守ってあげますからね」

「あ、ルリアを守るのは兄である僕の役目だよ」

「だーうー」


 仲の良さそうな兄と姉の会話を聞いていると嬉しくなった。

 前世は一人っ子だった。

 従兄姉はいたが、彼らには苛め抜かれたのでいい思い出はない。


 姉に優しく揺らされていると、安心して眠ってしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ