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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
八か月

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19 屋敷の探索

 今日も今日とて、

「だうだうだうだうだう!」

 高速ハイハイで、部屋の中を動きまわる。

 ダーウはいつものように、あたしの周りを嬉しそうに跳ね回っている。


「だうー」

「ぁぅ!」


 ダーウは毎朝と毎夕、執事に屋敷の外を散歩させて貰っている。

 うらやましい。

 最近では、室内でうんこもおしっこもしないほどである。


 どうやら、縄張りを主張するのに使うので、室内で無駄出しできないらしい。

 言葉は話せないとはいえ、ダーウのどや顔をみていると、そんな意思が伝わってくる気がした。


 室内を高速ハイハイで、動きまくっているのを、

「ルリア様は本当にハイハイがお得意ですね」

 乳母が優しい目で見つめてくれていた。


 あたしは閉じた扉までハイハイで移動して、

そとにいきたい(しょと!)

 と言ってみる。

「わふ~」


 今朝も散歩したのに、ダーウも外に行きたいらしい。


「お外ですか? うーん」


 乳母は少し困った様子で、あたしのことを抱き上げた。


そとにいく!(しょと!)

「ルリア様は言葉が早いですね」

はやいかな?(しょか?)

「私の子供なんて、まだあーうーぐらいしかしゃべれないんですよー」

会いたい(たい!)


 乳母の子には会ってみたい。そう思う。

 あたしが乳母の母乳を奪っていることを謝って、お礼を言わねばならない。

 乳母も恩人だが、乳母の子も恩人である。


 そんなことを考えていると、

「ん。ルリア様、お腹が空かれたのですね」

「ちが……」

 違うと言おうとして、お腹が空いたことに気がついた。


 高速ハイハイに夢中になりすぎて、空腹を忘れていた。

 それにしても、よく乳母は気づいてくれたものだ。

 感謝しても感謝しきれない。


「どうぞ、ルリア様」

「むぎゅむぎゅむぎゅ」


 あたしは乳母の母乳をごくごく飲んだ。


 飲み終わって、ゲップしていると、姉がやってきた。


「わふわふ!」


 嬉しそうにダーウが駆け寄った。


「ダーウ、今日も元気ね」

「わふ」

「ルリアを守っていて偉いわね」


 ダーウは姉に褒められて、嬉しそうに尻尾を振っている。


 少し前まで、ダーウは姉にも飛びついていた。

 だが、一月ほど前に、飛びついて姉を転ばせてから、飛びつかなくなった。


 それほど、急速にダーウの体は大きくなっているのだ。

 うらやましい。あたしもダーウぐらい一気に大きくなりたいものだ。


ねーさま!(ねー)

「ルリア。今日も可愛いわね」


 姉は乳母に抱かれた私を撫でる。


外に行きたい(しょと!)

 姉にもアピールしておく。


「あら、この姉と一緒にお外に行きたいの?」

行きたい!(たい!)

「マリオン。ルリアを部屋の外に連れて行ってもいいかしら?」


 マリオンというのは乳母の名前だ。


「そうですね。私も同行いたしましょう」

「ありがとう」


 あたしは姉に抱っこされ、部屋の外に出た。


「だぅー」

「ルリア、どこに行きたい?」

とうさまのところ!(とさま!)

「んー? どこかしら? 姉にはルリアが何を言いたいのかわからないわ」


 八か月の割には、頑張っている方だと自分でも思うが、それでもやっぱり会話は難しい。


とうさまのところ!(としゃま!)

「旦那様のところでしょうか?」


 乳母があたしの言葉を理解してくれた。

 とても嬉しい。


そのとおり!(しょ!)

「そうなのね。父上はお仕事中だから……お客様がいたらだめよ?」

わかった!(きゃた)


 その後、姉に抱っこされて、父の執務室に行く。


 姉が扉をノックして、来訪理由を告げると、父はすぐに中に通してくれた。


「おお、リディア。ルリアの子守をしてくれているんだね。ありがとう」


 父は優しい笑顔で姉を褒める。


「ルリアが、父上に会いたいというので連れて参りました!」

「そうか。ルリアは今日も可愛いな」

とうさま、だっこ(だぁ)

 父はあたしを抱っこしてくれる。


「きゃっきゃ」

 しばらく揺らしてあやしてくれたのであたしは満足する。


「ダーウも、いつもルリアを守ってくれてありがとう」

「ばう」


 父に頭を撫でられて、ダーウは尻尾をぶんぶんと振った。



 父の執務室を出た後、乳母に抱っこされて屋敷内を散歩する。

 姉はまだ子供なので、長い時間あたしを抱っこできないのだ。


あっちみたい(あち!)

「あちらに、行きたいのかしら? 厨房があるだけなのだけど……」


 厨房はぜひみたい。

 大きくなって飢えたとき忍び込んで、ご飯を手に入れなければならないのだ。


 前世では、あたしは常に飢えていた。

 食料がどこにあるのか、知っておくだけで安心できるというものである。


見る(みう)」「わふわふ!」


 ダーウも厨房が気になるようだ。

 ダーウは食い意地が張っているので仕方がない。


「わかったわ。邪魔しないようにしないといけないわよ? できる?」

もちろん、できる(じぇきる!)」「わふ」


 姉に連れて行かれた厨房では、調理人たちがゆっくり休んでいた。

 昼食の後片付けが終わり、夕食の準備の開始まではまだ猶予がある。


「お嬢様、申し訳ないのですが、犬はちょっと……」

「あっ、そうね、気づかなくてごめんなさい。ダーウ、ここで待っていて」

「……きゅーん」

まってて(まちぇ)

「ぴぃぃん」


 悲しそうに「ぴーぴー」鳴くダーウを厨房の外で待たせて中を見せてもらった。


「こちらで皆様のご飯を準備しているのです。食料は――」


 料理長は丁寧に案内してくれた。


ありがとう(ありあと)

「もったいなきお言葉です」


 あたしが、お礼を言うと料理長は深々とお辞儀してくれた。


 その後も乳母に抱っこされて、姉の案内で屋敷内を見てまわる。


 屋敷はどうやら四角い環状になっているようだ。

 そして、かなり広い中庭がある。


「はあぁ!」


 その中庭では、兄ギルベルトが剣術の稽古をしていた。


見たい(みちゃ)

「兄上の稽古を見たいの? 邪魔したら駄目よ?」


 中庭には入らず、兄の稽古を見る。


「むふー」


 あたしも訓練したい。

 体を鍛えて、悪いことなど何もない。


 もし隷属の首輪をつけられそうになっても、腕力があれば抵抗できるかも知れないのだ。


「ぬんぬん!」

 兄の真似をして、腕をぶんぶんと振った。


「ルリア、どうしたの? 一緒に剣術学びたいの?」

したい!(ちゃい)

「でも、女の子は剣術をやらないものなの。姉も剣術は習っていないわ」

関係ない!(にゃい!)


 女だろうと、腕力と体力があった方が良いに決まっているのだ。


 あたしが腕力と体力を鍛えようと心に決めていると、

「わふ、わふ」

 ダーウも兄の剣術稽古を見て興奮していた。


ダーウ(だーう)一緒に訓練しよ(いっちょ)

「わふ!」


 大きくなったら、ダーウと一緒に訓練しよう。

 そう心に決めた。


 それから、姉は図書室に連れて行ってくれた。


「ふあー!」

「ご本がたくさんあるでしょう?」

ある(ありゅ)

「今度、姉が絵本を読んであげますからねー」

ありがとう(ありあと)


 勉強も大切だ。

 知識は身を守ることに繋がるのだから。


やぎのご本はある?(やぎ?)

「ヤギ? ヤギはどうだったかしら」


 もし、ヤギのご本がないなら、父上にお願いしよう。

 そう思った。

八か月編は今回で終了です。次話からはもう少し成長します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うちの犬も置いていかれた時ピーピー言います笑 動物の描写が本当に細やかで優しくて素晴らしいですね [一言] 更新お疲れ様です! 8ヶ月編短かったですね、次は1歳編でしょうか? 誕生日を祝う…
[一言] 一言だけ、「早く大きくナレ!!」
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