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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
四章

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185/188

185 ビト

  ◇◇◇◇


 死を覚悟したナザニンの目の前に、ヘドロの塊が立っていた。


「む、む」


 そのヘドロの塊は、以前ナザニンが矢で射た化け物である。


「ば、化け物! 俺達がみた化け物はこいつです!」


 狩人父が震えながら、耐えがたい悪臭を放つヘドロの塊を指さした。


「GIYAAAAAAA」


 ルリアが呪者と呼んでいた化け物が、おぞましい叫び声をあげた。

 ナザニンは恐怖のあまり、お腹の底と、背筋が冷たくなった。

 体がブルブルと震えるのを止められない。


 呪者が叫びながら、ナザニンを食らおうとするが、

「むっむ!」

 ヘドロの塊が止める。


 呪者の爪がヘドロの塊をえぐる。ヘドロと血が飛び散った。


「むうう!」


 ヘドロの塊は呪者の腕を掴んで捕らえると、かみついて押さえつける。


「GYAAAAAA!」

「むむむむ」


 戦っている様子を見た狩人父が叫ぶ。


「化け者どもが仲間割れか? い、今のうちに」


 そして、震える手で矢を弓の弦につがえる。

 トマスも剣を構えて、化け物に向かって斬りかかろうとする。


「ま、まって」


 ナザニンにはヘドロの塊が自分を助けてくれたように見えていた。

 それに、どこか声に懐かしさを感じていた。


 だから思わず止めたのだが、ナザニンの声は狩人父にもトマスにも届かない。

 狩人父は弓を引き絞り、剣を構えたトマスは馬を操り突進を開始する。


「むっむっ」


 ヘドロの塊は呪者を倒すので一生懸命だ。

 狩人父にもトマスにも反応しない。


「ま、まって――」


 そのとき、ナザニンの目に、呪者を殴るヘドロの塊の右腕が目にはいった。

 元の色などわからないヘドロまみれの布らしき物が巻かれている。


「ま、待ってください」


 ナザニンはヘドロの塊に背を向けて、狩人父とトマスに向かって両手を広げた。


「あぶない!」

「なにをしている! どきなさい!」


 トマスと狩人父はそう叫びながらも止まらない。

 二人とも呪者とヘドロの塊が仲間割れしている今が、仕留める最高の機会だと信じている。


「この子は私の友達です!」

「馬鹿なことを言うな!」


 狩人父が苛立ったように叫ぶ。トマスも狩人父も止まらない。


 あと少しでトマスが斬りかかり、狩人父が矢を放とうというとき、


「とまれ!」


 周囲に凜とした声が響いた。

 ナザニンの言葉では、止まらなかったトマスと狩人父がビタッと止まる。


「とまりなさい。ナザニン。お友達なの?」


 それは幼い領主サラの声だった。

 五歳とは思えぬ、逆らいがたい声だ。


「は、はい。お友達です」

「馬鹿、お前は何を訳のわからないことを――」

「しずかに」


 狩人父の言葉をサラが遮る。


「その子がビト?」

「はい!」


 そのとき、呪者を倒したヘドロの塊が体を起こす。

 そして、ナザニンに向かってゆっくりと歩き始めた。


「閣下、危険です!」


 トマスが剣を構え、

「ナザニン、危ない!」

 娘をかばおうと狩人父がヘドロの塊に矢を放とうとしたが、


「まちなさい」


 サラが改めて止める。同時にナザニンがヘドロの塊に抱きついた。


「お、お前! すぐに離れろ!」

 狩人父が慌てて駆け寄ろうとするが、

「止まりなさい」

 サラに止められる。


「ごめんね? ビト、気づけなくて、ごめんね」


 ビトはかわいらしい以前の面影など全くなかったし、耐えがたい悪臭を放っていた。


 だが、ナザニンは気にしなかった。


「ごめんね? 気づけなくてごめんね。矢で射てしまってごめんね」


 泣きながら謝り続ける。


「む? む~」


 ビトはヘドロまみれで悪臭を放つ右腕をナザニンに見せる。


「うん、私も持ってるよ」


 ナザニンは髪をくくっているリボンを見せた。


「む~~む!」


 ビトは両手を縦にぶんぶんと振った。

 それは昔からビトが嬉しいときにする仕草だった。


  ◇◇◇◇

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― 新着の感想 ―
ビトが好きすぎる
良いですね。これからの展開に期待します。
サラちゃん、やっちゃって〜!
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