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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
四章

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176 倒れた守護獣達

 するとクロは無言でにゅっと出てきてくれた。


『……』

「……クロ、ほんとに呪われてない?」


 あたしはものすごく小さな声で、クロに尋ねる。

 あたしには呪われているように見えたからだ。


『今朝までは……呪われてなかったのだ……すまぬのだ』

「あやまらなくていい。きっと、それから呪われたんだ」


 あたしは、狩人親子から見えない角度で、クロのことを優しく撫でた。

 クロが呪いを見逃すわけがない。


 つまり、クロが呪われていなかったというなら、呪われていなかったのだ。


「きんきゅうじたいだな? けんさする」

『やむを得ないのだ』


 あたしはクロに向かって頷くと、猪の体を魔法で調べた。


「呪いのほかに……どくだな?」


 それも特殊な毒だ。魔法で入念に調べないとわからない類いの毒だ。


「そなた、川の水のんだ? そのせいかも?」


 村人達は、化け物が川に毒を流していると言っていた。

 それは正しかったのかもしれない。


「ぶぼぶぼぼぼ」

「む? ヤギたちのほうがじゅうしょうなの? それはまずい」


 猪はヤギ達が苦しんでいるから、あたしに助けを求めて来たらしい。

 あたしはクロを見る。


「風邪じゃなくて毒。そして、朝から今までの間に呪われた」

『……ぜんぶ、クロの判断ミスなのだ』

「この毒は特殊だから、風邪とまちがえてもおかしくないな? ルリアもまちがえた」


 ダーウも姉もきっと風邪ではなくこの毒だったのだ。

 それなのに、あたしも気づかなかった。


 前世で何万人もの病人を診察したあたしでも気づかなかったのだ。

 クロが風邪と間違えても、仕方がない。


「まずはそなたをなおしておくな?」

「ぶぼ~」


 猪は僕はまだ大丈夫だから、後回しにしてといっている。


「そなたのためだけでない。なおすコツをみにつけるためだ」


 あたしは病気を治すのは得意中の得意だ。

 前世で何万人の病を治してきたのだから当然である。


 だが、この毒ははじめてみる毒だ。しかも呪いと組み合わさっている。

 治療も簡単ではない。


 一度やってみてコツをつかんでおいた方がいい気がする。


「……ぶぼ」

「ん。ルリアにまかせてな? ふおー」


 あたしは改めて猪の体を調べながら、解呪しながら毒を中和して、体を癒やした。

 やっかいな毒で、呪いと混じっていたので、少し難しかったが、なんとかなった。


「だいじょうぶか? いたかったりしんどかったりしないか?」

「ぶぼ~」

「そうか。げんきになったか。よかったよかった」


 そして、あたしは皆を見回す。


 サラとスイ、そしてトマスはあたしが猪を治療したことに気づいているようだ。

 だが、狩人達はあたしが何をしたのか全く理解できていない。


 あたしは走って跳んで、近くの木の幹を蹴ってさらに高く跳び、レオナルドの背にのった。


「サラちゃん、スイちゃん。風邪じゃない。毒だ。しかも呪われてる」


 あたしがそう言うだけで、サラもスイも理解した。

 姉とマリオン、領民をむしばんでいたのはただの病気ではなかったのだ。


「……みんなをなおす前に、毒をとめないとだね?」

「それに呪いならば……守護獣のみんなに手伝ってもらった方がよいのであるな?」


 サラとスイが真剣な表情で言う。


「うん。でも、イノシシにきいたのだけど、ヤギ達がじゅうしょうみたい」

「たいへんだ。助けに行かないとだね?」

「わかったのである。スイに任せるのである」


 スイは狩人父に言う。


「近くに友達のヤギがいるのである。少し寄っていくのである!」

「ヤギですか?」

「うむ。ヤギなのである。男爵閣下の許可も得たゆえな? 案内するのである!」

「ぶぼぼ~」


 そういって、スイはスレインに指示して、猪の後についていく。


「……竜というのは動物と話せるのですね」

「そうなのである! すごかろ?」


 狩人娘の言葉にスイは堂々と胸を張って、どや顔をした。


 元気になった猪は生い茂った丈の長い藪の中を歩いて行く。


「ぶぼぼ」

「わふわふ」

「ぶるるぶる」


 猪の後ろをダーウとレオナルドは平気な顔をしてついて行く。

 ダーウのかっこいい棒は藪に引っかかると思ったのだが、器用にひょいひょい避けて進む。


「……くんれんの……せいかか?」


 きっと、ダーウは毎日振り回していたおかげで、棒扱いがうまくなったに違いない。


「歩きにくいと思うし、後ろからゆっくりついてきてください」

「ご配慮感謝いたします。男爵閣下」

「いえいえ。予定を変更してごめんなさいね」

「とんでもございません」


 サラが狩人父とお話しているのをあたしはじっと見た。


「……かあさまににている?」

「どうしたの? ルリアちゃん」

「いや、なんでもない」


 サラが領主として振る舞うとき、その口調は母に少し似るのかもしれなかった。

 きっと、母のことを尊敬しているからに違いない。


 猪の後ろをついて五分ほど進むと、開けた場所に出た。


「あ、ヤギたちがいる!」

「めぇぇぇ」「もぉぉぉ」「ほほほぅ」「ぴぃぴぃ」


 ヤギと牛、フクロウをはじめとした鳥達もいた。

 そして、守護獣達に囲まれる形で、話せないぐらい幼い精霊達がいた。

 それも大量にだ。村や川の近くにいたはずの精霊達が全部いるのではと思えるほどだ。


「よかった」


 精霊は死んでなかった。それはとても嬉しいことだ。

 きっと、精霊達はヤギ達を頼り、ヤギ達は精霊達を守っていたのだ。


「みんな、ありがとな。だいじょうぶか?」


 あたしはレオナルドからぴょんと飛び降りて、ヤギ達の元に駆け寄った。


 スイもスレインから降りてついてくる。


 ダーウはあたしの横にぴったりくっついていた。

 キャロとコルコは、ダーウの背から降りて周囲をキョロキョロ見回して警戒しはじめる。

 先ほど、猪を治療したときより、ずっと警戒しているように見えた。


「トマス。狩人さん達も、警戒しててな?」

「言われるまでもありません。男爵閣下のことは命に代えましても」

「は、はい」


 緊張気味に返事をした狩人親子は、弓の弦に矢をつがえて警戒を始めた。


 そして、あたしはスイに言う。


「キャロとコルコが警戒してる。一応スイちゃんも警戒してな?」

「わかったのである。呪われているということは、呪者がいるかもであるな?」


 スイは周囲をキョロキョロ見回して、警戒を始めた。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様&ありがとうございます ついに風邪ではないと判明しましたですね。そつか、前世では何万も診ていたんですか。それでも間違えるなんて巧妙な手口は主人公補正がなければ見逃していたのでしょうね …
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