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【コミックス2巻発売中!】転生幼女は前世で助けた精霊たちに懐かれる  作者: えぞぎんぎつね
三章 五歳 王宮編

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140 国王救出作戦

「無事でよかったな」


 あたしがそう呟くと、王太子はやっとあたし達に気づいた。


「え? あなたたちはいったい?」


 少し警戒した表情で見つめられる。あたしとサラが狐仮面をつけているので驚いたのだろう。


「む。王太子。我は水竜公である」

「おお、水竜公、助けていただきありがとうございます」


 スイが前に出ると、王太子は立ち上がって跪いた。


「む。非常時ゆえ、気にするでないのである」


 それから王太子はコンラートの頭を撫でる。


「父の言いつけをまもり、水竜公を呼んできてくれたのだな。よくやった」

「はい」


 コンラートは嬉しそうに微笑んだ。

 それから、王太子は、あたしとサラを見る。


「水竜公。この方達は……」

「我の仲間であるからして、怪しくないのである」

「ですが、その大きな犬はルリ――」

「我の仲間であるからして?」

「な、なるほど、水竜公の。……そういうことなのですね。畏まりました」


 そして、王太子は水竜公に改めて頭を下げる。


「水竜公、お願いがあるのですが」

「わかっているのである。王を助けて欲しいのであろ?」

「そのとおりです」


 スイはちらりとあたしを見たので、ちょいちょいと手でこっちこいと招き寄せた。


「……なんであるか?」


 スイはあたしに近づいて、めちゃくちゃ小さい声で囁いた。

 あたしもスイの耳元で囁く。


「……おじさんが、じいちゃんを助けることにしよ」

「なるほど? 目立たないようにだな?」

「そうそう。おじさんとコンラートに馬に乗ってもらって――」

「ほうほうほう」


 あたしとスイの会議を、真剣な表情で王太子は見つめていた。


「おじさんは矢で狙われるから――」

「わかっている。おとりにするのであるな?」

「ちがう。スイちゃん、まもってあげて?」

「ルリアとサラは?」

「ダーウがいるからだいじょうぶだ。それにいざとなったら魔法を使う」


 打ち合わせを済ませると、スイが王太子に指示を出す。


「王太子、そなたが先頭に立つがよいのである!」

「なるほど、私が健在だと示すことで、旗幟を明らかにしておらぬ者をこちらにつかせるのですな?」

「そ、そう? そうなのである!」


 王太子が健在で、王の側に立っていることを示すことは大事だ。

 それに、王太子が活躍して王を救ったとなれば、美談だ。


 そのことばかり噂になり、狐仮面がいたことなど重要では無くなる。

 それに王家が一枚岩だと、近隣諸国と貴族達に示すこともできる。


 そう、あたしは考えたのだ。


「あ、呪術師たちはここに閉じ込めとこ。スイちゃんできる?」

「余裕であるからして! あ、まず縛っておくのだ」


 スイは魔法を使って、部屋の中に落ちていたロープを使って呪術師達を縛り上げる。

 それが済むと、スイは王太子に向かって言った。


「付いてくるのである!」


 あたしたちが部屋を出ると、スイは魔法をつかって扉に鍵をかけた。


「中に敵を閉じ込めておくのである!」


 瘴気をこもらせる為か、窓が一つもない部屋だったので、扉を封じればそれで充分だ。


 スイが走り出し、その後ろを王太子とコンラートが付いていく。

 あたしとサラはダーウの背に乗って、その後ろからついていく。


 ロア、キャロとコルコ、ミアもダーウに乗った。

 王太子宮から出ると、敵兵達は守護獣の鳥たちに痛みつけられてボロボロになっていた。


「ひい~助けて、助けて……」「鳥が……襲って。ひい」「……ママこわいよぉ」


 敵兵達は、爪とクチバシで痛めつけられて、服も鎧も脱がされて、ほとんど半裸だ。

 その辺りに転がっている金属製の鎧は、クチバシでつつかれて穴だらけである。


 兵たちは何度も爪で掴まれ持ち上げられて地面に落とされたらしく、全身傷だらけだ。


「みんな、ありがと!」

「ぴぃ~」「ほほぅ」

「スイちゃん、あいつとあいつ、顔だけ出して埋めといて」

「まかせるのである。あいつとあいつであるな」


 その二人は馬に乗っていた騎士だ。


「ちょいちょいっと、である。スイは水魔法以外も達人であるからして!」


 スイは土魔法を使って、一瞬で穴を掘ると、騎士二人を放り込み、穴を埋める。

 ちょうど、首から上だけを出した状態になる。


「土に魔法をかけとくのである!」


 スイの魔法のお陰で、敵兵が掘り返そうとしてもスコップが通らないだろう。


「王太子、馬に乗るのである」

「は、はい」


 騎士が乗っていた馬は無傷だ。鞍をつけたまま近くの草をのんびり食べていた。


「よし、行くのである」


 王太子とコンラートが一頭の馬に乗ったのを見て、スイは走り出す。


『こっちこっち~』『あ、そっちに敵が三人いるよー』


 精霊たちが先導しながら、周囲の状況を教えてくれる。


「王太子だ! 捕えろ!」

「どくのである!」


 兵士が走ってきても、スイが問答無用で吹き飛ばす。

 スイは王太子たちが乗る馬よりも速く走りつづけ、あっというまに王の住む宮に到着した。


 入り口では兵士と近衛騎士同士が言い争っている。


「王のご命令だ! 立ち去れ!」

「だまれ! 我らは近衛騎士だ! 陛下の側に参らねばならぬ! そこをどけ!」

「陛下はお前たちが謀反を起こそうとしているとお疑いだ!」

「なんという!」

「疑念を晴らしたければ、大人しく縛につけ!」


 王宮を占拠した敵に対して、近衛騎士が中に入れろと騒いでいる。

 だが、敵は王の命令だと言い張って、通さない。


 異常事態が起きていることはあきらかだが、王が捕えられた証拠はない。

 それゆえ、近衛騎士達も実力行使に出ることができないでいる。


「控えよ!」


 そこに王太子の大声が響き渡る。


「陛下は敵の手に落ちた! 王家に忠誠を誓う者は我に従い、王を救出せよ!」

「おお! 我ら、近衛騎士、殿下に従い、命を懸けて王をお救い申し上げます!」


 近衛騎士達が次々に声をあげる。

 王や近衛騎士団長の姿が見えず、近衛騎士達には何が真実かわからなかった。


 誰が敵なのかもわからない。

 王が本当に自分たちを疑っているのかもわからない。


 実際、王は疑い深い。自分たちを疑っていてもおかしくはない。

 そんな不安を近衛騎士達は抱いていた。


 それゆえ近衛騎士たちは王太子にすがるように賛同した。

 王太子の登場に近衛騎士たちが盛り上がっている近くで、あたしはスイに耳打ちする。


「……スイちゃんはおじさんといっしょに正面からたのむ。派手にな?」

「……ルリアは?」

「うらからじいちゃんをたすけだす」

「……わかったのである。スイたちは陽動であるな?」

「そうともいう」

「こっちは任せるのである。ダーウ、ルリアとサラを任せたのである」

「ぁぅ」


 次の瞬間、スイが大声を上げる。


「王太子。あやつらをなぎ払えば良いのであるな?」

「おお、水竜公、お願いいたします!」


 王太子とスイの会話で、近衛騎士達はスイの正体に気がついた。


「水竜公といえば、ヴァロア大公殿下と親交のあるという……」

「つまり、ヴァロア大公殿下も王を救おうと」


 水竜公の存在は一般には知られていない。

 だが、水竜公が入ってきても、止めなくていいと王から指示が出ている。

 それゆえ、王の護衛でもある近衛騎士達は水竜公を知っているのだ。


 王の息子が二人とも王を救おうとしている。つまり自分たちの仕える王家は一枚岩だ。

 その事実は、近衛騎士達を勇気づけた。


「お前たち。我は偉大なる竜、水竜公である。どくがよい」

「黙れ! 何が竜だ! 偉大な竜がお前のような弱そうな姿のわけがない!」

「偽物が! 何が竜だ!」


 兵士達がスイに向かって声を荒げるが、

「ふむ?」

 次の瞬間、大量の水が何もない空間から現われて、敵兵達を押し流した。

 あまりの魔法の威力に、味方の近衛騎士達も唖然とした。


「これでよかろう。王太子、行くのである」

「おお、さすが水竜公。お見事です」


 そして、王太子、コンラート、スイと近衛騎士達は王宮内へと入っていった。

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