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「本日のニュースです」
朝起きて、テレビの電源を入れたとき目に入ったのは、例の桃の木の下で掘り当てた人骨事件であった。本日解決に至り、犯人が捕まった。
キャスターさんの話によると、犯人は小児性愛者で、十二歳の女の子であった被害者の風音桃花さんをナンパして、無視されたためカッとなって殴ったところ、当たり所が悪くて死んでしまったようだ。焦った犯人は、死体を道中見かけた廃小屋の中にあったスコップで、桃の木の下に埋めたらしい。
なんて理不尽なことだ。俺が被害者だったら、ナンパに失敗されたから殺されるなんてたまったものじゃない。
遺体発掘から一ヶ月後、俺は十一年間来れなかったあいつの墓参りへと、この田舎町に舞い戻ってきていた。目的地に向かう途中、あの連行された警察署の前を通ると、刑事のおっさんと如月さんを見かけた。向こうも俺だと気づいたようだ。二人して近寄ってくる。
「よう、須藤さん。久しぶりだな。もう知ってるか? お前さんが見つけた骨の犯人、逮捕したぞ」
「えぇ、今朝ニュースで見ました。良かったですね」
「おう、特にこいつが張り切ってな。犯人がすぐ見つかっちまった」
そう言って、おっさんが如月さんの肩を何度も叩く。
「やめ、てくださ、い、綱目さ、ん」
バシバシという効果音が聞こえてくる。かなり痛そうだ。
そして俺はこの時初めて、おっさんの苗字が綱目だということを知った。
その綱目さんが、俺の左手に目を向けた。
「それで、今日はどうしたんだ? 花なんか持って」
「幼馴染の墓参りに」
「そ、そうか。あーー、気をつけてな」
酷く沈んだ顔をしていたのだろうか。おっさんが気まずそうにしている。
俺もなんて返せばいいのか分からず、長く沈黙が支配していた。
そんな俺とおっさんを見かねてか、如月さんが俺の頭に手をやって、
「そんな顔をしないで。貴方が会いに行けば、その幼馴染の方もきっと喜ばれますよ」
と言って、撫でてくれた。
その手はとても温かく、優しかった。
――気を使わせてしまっただろうか。少し恥ずかしいので、早めにお暇させていただくことにする。
町のはずれの大きな川沿いを上へ、上へと行った先に墓地がある。
俺は二人と別れ、清見家の墓の前までやってきた。
花を供え、手を合わせる。
「悪い、遅くなった」
君に話していないことが、沢山あるんだ。最近でいえば、君が貸してくれた小説に載っていた、あの桃の木の下へ行ったのだけれど――