幕間
綱目透は、後輩の如月愁と組んで捜査に当たっていた。
「と言ってもなぁー、十四年も前の事件だぞ。手掛かりなんてほとんど無いからなぁ」
「綱目さん、愚痴を吐く前に手を動かしてください。検死による報告ですと、右側頭部から前頭部にかけて、打撲によるものとみられる骨折の痕があるそうですよ」
「死因はそれか?」
「おそらく」
そう言って、如月は新しい資料に手をかけた。この一見偏屈な同僚は、普段がクールな分、捜査には熱が入るようだ。だが今回の事件については、いつにも増して気合が入っている事に、綱目は気づいていた。
「そんなに根詰めてりゃお前さん、倒れちまうぞ」
「お気になさらず」
ペラリ、カタカタ、ペラリ。
資料をまくる音と、キーボードが鳴る音のみが響く。
「えっと、犯行現場と思われる場所もあそこか。近くには廃小屋が一軒。錆びた作業道具がいくつかあったな」
「ええ。恐らく犯人はそこのスコップを使って埋めたのでしょう。でなければ、自分で持ってきた事になりますが」
「胴ほどの長さのあるスコップをわざわざ持ってくる奴はおらんだろうな」
「シャベルだと遺体を埋めるのにずいぶん時間がかかりますし」
「そんなもん持ってくる奴は計画犯だろうが、それならスコップによる打撲でもっと派手な骨の壊れ方するだろうよ」
「わざわざ手で殴るなんて事は無いでしょうね」
頭を抱えたくなる事実に、目を背けたくなる。
「となると、無計画な犯行となるわけだが」
「犯人を見つけるのが難しくなりますね」
そう言った如月の目からは、まだ熱は引いていなかった。
これは、徹夜続きの日々になりそうだ。